突発的に思いついた小説です。
全体的に真っ黒い作品になる予定です。
ご注意下さい。
【Case1 天崎渚(アマサキ・ナギサ)】
この世には2種類の人間しか居ないと知ったのは、小学校に通い出してからだ。
いじめられる側といじめる側。
1対39の殴り合い。
それが、【学校】という場所で、私が学んだことだった。
今日も私の教室は騒がしかった。
私の教室だけど、私なんて居なくていい教室は今日も騒がしかった。
とあるグループの女子が私を指差していた。
その周りで、むき出しの白い歯が3人。笑っていた。
また、どこかの女子が私を指差した。
その周りで絶対にこっちを向かない顔が5人、口を釣り上げて笑っていた。
39の口が私の名を吐いて笑う、
39の指が私を笑う、
39の目が私を笑う。
笑う。笑う。
……嗤(わら)う。
私にとって、それが【学校】の全てだった。
授業の内容なんて、吐き気で覚えていない。
成績は伸びない。
今日も塾で笑われる。
私はそう思いながら今日も一人、家へと帰る。
途中、踏み切りに差し掛かかった。
ちょうど、私の家と学校との間にある踏み切りだ。
右へ、左へ。
揺れる赤色灯(せきしょくとう)に誘われて、
私はゆらゆらと線路へ歩き出す。
「このまま歩いていたら、消えれるのかな」
そうつぶやいた時、後ろから無駄に元気な声が聞こえてきた。
「天崎さん! こんにちは!!」
小学生にでも声をかけられたんだろうかと振り返ると、
そこにはチサトさんが居た。
チサトさん。
名前はそれだけしか知らない。
この子も毎日、殴る蹴るのいじめを受けているらしい。
でも、誰に聞いても笑顔しか見たことがないという。
そういうちょっと、線の切れた子で、そして私のトモダチだった。
「何してるの? 危ないよ?」
相変わらず元気な声で私の手を引くチサトさん。
誰にでも一切警戒心が無いという噂は本当らしい。
ぐい、ぐいと、私の手を引っ張ると、元の場所まで戻してしまった。
そのまま、夕日で橙色に染まった踏み切りに2人で立つ。
私から会話をする気にはならず、ただ立ち尽くしていると
チサトさんがこんなことを言い出した。
「天崎さん。水に流せるテッシュの話、知ってる?」
「……水に流せるティッシュ? トイレとかで使える、あのテッシュ?」
突拍子もないコトバに、思わず口を開く私。
「ううん、違うの。あのねー?」
チサトさんはたまにこういう意味不明なことを口走るけど、
どうやら今日は冗談でもないらしく、興奮した様子で続ける。
「消したいものを書いてトイレに流すと、消してくれるとっても便利なティッシュなの! 今、大流行の都市伝説なんだよ!」
「……ナニそれ」
意味不明なことに変わりはなかった。
というかそんな子供だましの都市伝説が私の中学校で流行ってるのか。
時間の無駄だった。
そう思いながら、私はやっと電車が通り過ぎた踏み切りを渡った。