ぱゆむです。
※基本自分用
※多分不定期に更新
※感想等くださればレスします
三人目
8/8
姪から手作りの手帳カバーを貰った。
幼稚園で作ったらしい。
姉からも「手帳あるんでしょ、使ってあげたら?」と言われた。
この手帳は昔から使ってるしボロボロだから、新しいのに買い替えたらカバーを付けようと思う。
とはいえやけにメモページが多いのと、結構高かったからそのまま捨てるのももったいない。
そこでここに俺の昔の話を少しずつ思い出しながら書いてから捨てようと思う。
別に誰かに見せる予定もあるわけじゃないが、何となく書いておかなきゃいけない気がした。
8/9
俺は昔森の中で一人暮らしをしていた。
というのも、絶景を眺めたり旅をして神秘的な体験をしたりすることが好きだった。
海外に友達と行ったことがあり、アフリカの民族がスマホを弄ってるのを見て驚いたのは今でも覚えてる。
それから大学生活が終わって就職し、今度は森に住んで自然を楽しみたいと思うようになった。
森から町は離れていて車での移動は欠かせなかった。
でもざわざわとした都会の空気より居心地が良かったからそれは苦ではなかった。
8/10
住み始めた年の秋くらいに手紙が来た。
「お久しぶりです、高田さん」
便箋にこの一行だけ書いてあった。
そもそも自分は高田ではないし(城崎)、自分がいる森がどこか友人には話したことがない。
「何かの間違いか?」と思ったが、この森には自分しか住んでいなかったため前の家の持ち主宛だと分かった。
でも前の家主は俺が来る前にとっくに引っ越していたから連絡をすることができず、手紙は捨てるだけになった。
まあ内心「めんどくさい」とも思っていたけど。
8/11
ここから書く手紙の内容はうろ覚えだ。
次に来た手紙には確か
「高田さん、ではありませんね、田さんでしたね。間違えてしまってすみません。私は奏です、覚えてますか?このスタンプを見たら私からの手紙だと思っていてください」
こんなことが書かれていた気がする。
その手紙の右下には犬のスタンプが押してあった。
多分送り主は家主が代わったことを知らないんだろう。
俺はその手紙に返事を書くこともなく捨てた。
8/12
次は確か前の家主が飼ってたペットについて書かれてた気がする。
「田さん、お手紙読んでくれたんですね。嬉しいです。ココアちゃんとバニラちゃんと...マロンちゃんでしたね。元気にしていますか?」
もふもふしてて触ると気持ちよかったとか、いつも自分が来たらしっぽ振ってお出迎えしてくれたとか、そんな感じの内容だった。
右下にスタンプがあったからあの「奏」とかいう人からだとは一目で分かった。
書いてて気づいたけど、ペット三匹なんて同時に世話できるもんなのか?
俺は実際ペットは飼ったことないが、友人によれば散歩が面倒らしい。
子供が三人増えるようなもんだし、前の家主は相当な金持ちだったと思える。
8/13
ペットの次は趣味に関しての内容だった。
「クッキー美味しかったです」とか、「またケーキを一緒に作りたいです」とか。
手紙は1日に1枚、休日だろうが何だろうが例外なく来た。
ストーカー染みた内容じゃなかったのが唯一の救いだ。
それにしても何でこんなに手紙の内容を覚えてるんだろう...?
8/14
「クッキー作りました」とか「チョコレート菓子って意外と難しいんですね」とか報告?も来たな。
食べ物が置いてなかっただけマシだ。
もし来たとしても森だから腐りはしないだろうけど、中に何が入ってるか分からないものは意地でも食べたくはない。
前の主人とは友人の関係だったんだろうか?
今でもよく分からない。
8/15
とにかく文面が子供染みていた。
字が丸くてところどころ漢字が違っていたり、修正もせずペンでぐちゃぐちゃにした上に新しい字が書かれていることが多かった。
送り主が子供だとしたら尚更不思議なんだが。
子供がわざわざ手紙を出すだけのために森に来るものなのか?
親か召し使いだったとしても車じゃなきゃ来れないようなところだし。
車の音なんて聞こえたことなかったけど。