これは笑顔でいるはずの少女が、狂愛に苛まれ、傷つけられ、愛され、愛され愛され愛されーーーー追い詰められる物語。
※残酷描写が多少ございます。
※誤字脱字は仕様です。
壱話
私は幸せだった。
私は今の生活が幸せだった。
お金が無くても、母親が居なくても、贅沢な暮らしが出来なくても……
幸せだった。
「ほらさっさと金を出せ」
「今日払うつったよな?」
「申し訳ありません……!ら、来月までには必ずご用意しますので……!」
何年もの間、毎月の様に、私はこの光景を見ていた。
父の苦しむ顔を見るのは、今日でいったい何回目だろう?
私は電柱の影からそっと彼達の様子を伺う。
「お父さん、大丈夫かな」
私の名前は、赤城佐凛(あかぎさりん)。
所謂キラキラネームというやつだが、私はこの名前を特に気にした事はない。
母は幼い頃に亡くなり、今は父と2人暮らし。
このボロアパートにはもう何年も住んでいるけれど、普通の人が思う程悪い生活では無い。
私が学校から帰ってくると時々この人達を見かける。
刺青を入れていたり、スカーフェイスだったり、チンピラとは一味違う、ヤクザだ。
毎月、必ず一度はやってきて、私の父を殴る蹴る。
父はこの事を、私に内緒にしているつもりらしい。
だけど、こんなにも堂々と暴行されて、気が付かないわけがない。
借金の事だけじゃない、闇金融からお金を借りている事だって、自営業の町工場が潰れた事だって、新しい職場でリストラされた事だって全部知っている。
でも父は私に心配をかけたくないのか、私には一切そんな事言わない。
「佐凛は心配しなくて良い、全て俺に任せてくれ」
父は作り笑いを浮かべながら、いつもそんな事ばかり言う。
けれど、父だけに重荷を背負わせる訳には行かない。
父は知らないかもしれないが、私だってバイトをして働いている。
部活に行く振りをして、居酒屋でバイトをしている。バイト先のオーナーは憐れみの気持ちで私を雇ってくれている。
とりあえず私は、バイト代を食費に当てたり、ちょくちょく家に届く身に覚えのない、恐らく父のであろう請求書を支払ったりした。