忘れない限りネタが思い付けたら更新します！(もし忘れてしまったら来れませんが、かけなさそうだと思ったときはしっかり報告します！)
感想などよろしくお願いします！
荒らしはやめてください。
文章がぐちゃぐちゃなところがあると思いますがあたたかいめで見てください！
あなたとの出会いに花束を〜シーン1〜池袋編
令和になって初めての新作舞台の打ち合わせのため、下北沢から池袋へ移動する。
演者から主宰・演出になり劇団を立ち上げてはや10年。
ようやく軌道に乗り出してきたところだ。
移動途中、連絡が逐一入るのを確かめながら、フラリと入ったガラス張りのカフェから忙しなく流れる街をぼんやり見ていた。
たくさんの車、たくさんの人が行き交い、街から息づかいが聞こえてくるような雑踏を眺める。
片側4車線の広い交差点、ふと向こうからこっちへと横断歩道を談笑して渡る派手で賑やかそうな集団が目についた。
二階のこのカフェから声は聞こえないが、とても楽しそうに歩いている。
男女年齢はバラバラのようだ、時折両手を広げたり、肩を叩きあったり、服装髪型も様々な格好だ。
やんちゃそうに見えるが、よく見ると演劇集団だな………ん？…いた！（笑）
その集団の中に一際背の高い男性が見えた、徐々に歩道を渡る姿が鮮明に見えてくる。
俺のパートナーの敦。
時折、長めの前髪を後ろに掻き上げる仕草や
笑うと見える目尻。
サングラス越しにも分かる。
ジャケットの肩の揺らし方。
細身のパンツにハイカットスニーカー。
広がって歩く仲間に駆け寄り、そっと肩を組む配慮。
そういうとこ好きなんだよね…さり気ないところ…
ダメだ、俺きっとニヤけてるぞ……なんて思いながらもその集団を眺めていた。
歩道を渡りきったところで敦が歩を緩め、俺のいる建物を見上げた。
目線が交わる。
敦が笑顔でサングラス越しに軽くこちらに、二指の敬礼をする。
俺も持っていた煙草をくわえると、微笑み同じく二指を立てて返事する。
ほんの一瞬のことだった。
すぐに敦は、また集団へと駆け寄っていった。
遠ざかるその仲間の後ろ姿を見ながら、俺の勘もまだまだ衰えてないな…なんて。
いや、あいつこそよく俺を見つけたな…お互い見つけて当然ということか。
とある昼下がり。
終
あなたとの出会いに花束を〜シーン2新宿編〜
東京は連日の酷暑日。
敦は、窓の外を眺めた。
日差しの眩しさを見ると、このあと出掛けるのすら躊躇してしまう。
今日は、ハーフパンツにサンダル…とはいかないな…
ぼさぼさの頭をなんとか整えて、パンツにジャケットを羽織り、キャップ…あ、やっぱりハットにしよう。
ストロー素材のジャケットに似合う中折れハット。
そう、
こないだ相方からプレゼントされたそのハットで。
降り立った目的地は、ぞろぞろと人が集まっている。
報道プレスの中に知り合いを見つけると、同じく関係者入り口へと足を進めた。
「今回の初公開映画さ、舞台関係者多いよね。」
知り合いもそんな雰囲気を感じているようだ。
舞台役者出身の初監督作品、映画撮影も初めての役者ばかり、たしか相方も映画は久しぶりだったよな。
身内…いや、相方が映画に出るのはなんだか緊張するね…
久々に見るスクリーンでの相方。
ストーリーのキーパーソンとして出ているからか、かなり台詞も多い。
撮影だった１年ちょっと前、まだこの時の相方は確か…本調子に戻っていなかったはず…
ひと月で体重が10キロ近く落ち、身体も思うように動かないと、ふらつく身体で現場に出ていたのに。
しかし、流石の役者だな…そんな身体の不安なんて1ミリも見せず見事だった。
上映後に始まった舞台挨拶。
役名と同時に壇上に現れる演者達、撮影衣装での登場は、客席から映画の余韻を思わせる良い演出だった。
相方が役名で呼ばれ、登場すると拍手が沸き起こる。
舞台で一礼すると顔をあげた瞬間、観客席にあのハット。
彼はニヤリと口端をあげた。
簡単な自己紹介のあとは、撮影エピソードや裏話トークなどで会場に笑いが沸き起こる。
写真撮影が終わると、締めくくりの挨拶を相方が行った。
「本日は〜」
敦は、挨拶をする相方を見ていると、懐かしい記憶が甦ることがある。
昔、劇団の主役をしていた頃の彼。
いつも冷静で、その挨拶を舞台の後ろから見て、憧れていたあの頃の自分。
あれから40年経っているんだ。
ずっと一緒に…ずっとそばに…
長いな…相変わらずだな…
相方！いや、カッチャン！帰ったらお祝いしなきゃね。
終
あなたとの出会いに花束を〜シーン横浜編〜
ちょっと寄り道
何十年振りに地元の高校の同級生達との楽しい時間も過ぎ、酔い冷ましに少し夜風にあたって帰ることにした。
まだ桜の見頃も少し過ぎたかな…
街灯の下の桜の花弁が風に散る。
横浜は少し暖かいのかもしれないな。
ジャケットを手に持ったまま、駅へと歩く。
学生の頃から見慣れた遊歩道の桜並木は、ライトアップが続いている。
生まれ育ったこの街はいつもあたたかく俺に優しい。
いや、俺がこの街を好きなんだな。
桜並木から川面までその辺り一帯がほんのり照らされている。
漆黒の闇に浮かび上がる桜の淡さを立ち止まって、しばらくぼんやり眺めていた。
桜の幹にそっと手を充ててみる。
ほんのり木の温もりと、生命の力を感じる。
今年も見事な花を咲かせているのを見ているとうれしくなる。
「敦、なにしてるの？」
不意に遠くからそんな声が微かに聞こえた。
声の方を振り向くと、相方が1人歩いてくる。
「よっ、ここの桜は綺麗だよね」
そう、この辺りは相方が住んでいる。
まさか、俺の地元に住んでる人が相方なんてね。
並んで二人で桜を眺める
「桜があんまり綺麗だったから眺めてたんだ」
「ここの桜並木は、毎年見事だよな」
「そう、ずっと変わらない。俺さ学生の頃この桜並木で彼女に振られちゃったことあったんだ。でも、桜がハラハラ散ってきて慰めてくれたんだよね。」
嫌な気持ちが桜吹雪が消してくれた…
「あのときの桜吹雪が綺麗でね、俺ますますここが好きになったんだ」
桜を見たまま相方が黙って聞いている。
「俺もあるよ、思い出」
ふわりと舞い散る桜の花弁を手に乗せ、相方がぽつり。
「へぇ〜どんな？カッチャンの話も聞きたい」
俺は川面の花筏を眺めながら静かに問う。
「上京してきた時、ちょうど東京は桜が満開だったのさ。四国はもう散ってたからね。桜を見ると新しい始まりにワクワクするんだ。」
相方は、手のひらの花弁を摘むと俺に差し出した。
「ハハハッ、カッチャンらしい！」
「そうか？フフッ」
相方が俺の肩を組み、二人が笑って顔を見合わせる
俺は花弁にふぅと息を吹きかける。
同時に、一帯にやさしい風が起こり、桜がまた一斉に散りだす。
「「あ、桜吹雪」」
二人同時に発した。
「帰ろ、カッチャン」
俺は、駅とは反対へ歩き出した。
相方は微笑んでつぶやいた
「…おいおい（笑）」
俺は軽くウインクして先を走り出したら、慌てて相方が駆け寄ってきた。
二人並んで遊歩道を歩く。
終
あなたとの出会いに花束を〜バーにて（敦ver）〜
何をしても悲しみが拭えない時、
君ならどうしてる？
オイラにもそんな時、あるんだよ
明るく振る舞うことができなくなるくらい、人生のどん底を突きつけられ、落ち込んでた夜…
惨めな姿の自分が鏡に映る
こんな姿、役者仲間にも見せたくないし、友達にも見られたくない
もちろん、相方になんて見せたくないよ
絶対にイヤだ絶対に
はぁ…
なのに、
あと数時間すれば稽古が始まる…
きっと、明るく装ってオイラは芝居をするだろう
それが役者だから
でも、それが辛い…辛いんだよ…
この苦しさとの差が大きくなるにつれて心のバランスが崩れそうさ
つい酒に逃げてしまった
なんの解決にもなんないのに
今夜も行きつけのバーに来て、どんよりした気分で一人暗いオーラで飲んでいた
「このまま帰って寝るか」
そう決めてのろりと席を立とうとしたとき、入り口のドアが開いて一人の客が入ってきた
そのシルエットと声を聞いた途端、オイラは一番会いたくない人だと…
オイラはハットを目深に被り直し、バレないようにマスターに精算を伝えようとした…
「一杯だけ付き合ってくんない？」
その客はオイラの肩をポンと叩き、隣に座る
優しい声…温かい手…オイラの背中をそっと擦ると身体からシコリが取れていくようだ…
もうなんだよ、なんでいつも優しいんだよ…
涙が知らずに溢れ出た…
店じゃなきゃ、抱きついて大声を出して泣いていたかもしれない…
でもオイラもいい年のオッサンだ
グッと堪えてその客…相方に言葉が出なかった
「おい、もう泣くな」
オイラの顔を覗き込むとニッコリして、そっと温かい手でオイラの頬に指を添えて涙を拭ってくれる
笑うとタレ目に拍車がかかるのも、何気にオイラを気遣うところも劇団にいた頃と変わらない
「…うん」
それだけ言うのがやっとだった
おいらに涙の理由すら聞かない、相方の気遣いにまた泣いた
相方が酒をオーダーする
「マスター、『サイド・カー』を俺とコイツに」
注文しながら、オイラのハットをひょいと取ると自分の頭にポンと乗せて、マスターと談笑をはじめた。
潮がひくように、波は穏やかにオイラの悲しみが泡のように消えてゆく
相方の肩にコツンと頭を当てる
何も言わずその掌で頭を撫でられた
胸がほわんとほんのり温かく、緊張もほぐれる感覚
相方の鼓動がトクンと聞こえるようで、随分周りを突っぱねていた自分が馬鹿らしかった
「敦、これを二人で飲みたい気分なのよ」
取り出した煙草をいつもの仕草で
見慣れた横顔
いつもウイスキーなのに、なぜかブランデーを選んだ理由
「え…どうしてさ？」
その質問に答えず、相方は微笑んで煙草を燻らす
マスターが軽くウインクする
(サイド・カー…訳:どんな時もいつも共に)
終
あなたとの出会いに花束を〜バッタリ！編〜
（なんだか懐かしい夢を見た。
敦と２人で、必死に踊る夢を。
ダンスシューズの紐を結び直そうと下を向くだけで、汗が滴り落ちる。
息を切らした相方の呼吸の乱れから、このシーンのダンスがハードさを物語る。
まだまだ俺達こんなもんじゃない。）
敦>
朝から次回作の稽古のあと、舞台となるシアタートップスでのスチールを終え、外へ出ると辺りはもう暗かった。
衣装合わせも終わり、いよいよ明後日からは通し稽古もはじまる。
「はぁ〜なんか、スタミナつくもんでも食べよっかなぁ…」
ここからだと、行きつけのごはん屋も近いし、軽く飲むのも良い。
「んー、どうしよっか…」
とにかく劇場を出ようと歩き出したところで、上映の看板が目に留まった。
『坂本洋一』
たしか、先週から始まった映画。
ちょうどこれから開演らしい。
「お世話になった先輩俳優のドキュメンタリーとなれば見ない訳にはいかないな。」
敦は歩みを進めた。
長戸>
来週から稽古が始まるが、未だ脚本が仕上がらない。
脚本を書く手が行き詰まる…何か打開策が…
煙草を燻らせパソコンを睨みながらため息…
ちょうどそこへ長戸を呼ぶ声がする。
「長戸さーん、います？」
「おう！いるよー！どしたの？」
他の芝居を終えた、日向がやってきた。
「これどうぞ。」
日向が長戸に差し出したのは、映画のチケット。
そこに書かれているのは、坂本洋一映画
「…あ！これどしたの？」
長戸は日向を見て言った。
「取材に来られてたカンフェティさんに頂いたんすよ。だって、坂本さんといえば長戸さんでしょ。」
日向は、ニンマリして指をさした。
「俺に？！ありがとう。わざわざ持ってきてくれたんだ！」
「それに…ホラここ。」
「？」
日向が指をさしたのは、上映招待券に書かれた日付。
「えっ？！今日じゃん！あれ？今何時？」
「新宿だから、こっからタクシー飛ばしても10分かからないっスよ。」
日向はそのつもりで、チケットを持って現れたらしい。
「…よし…じゃ、ちょっと行ってくるわ！」
長戸は稽古場をあとにした。
───────────────────
一方、敦が席に着くと場内はかなりの人で混雑していた。
「最終日だし、立地も浅草が近いとなればやはりファン層も厚いよね」
その頃、長戸は既に開演してから到着となった。
週末ということもあり道は渋滞。
結局普段なら10分で着くところが30分もかかり長戸は焦る。
（大将の映画なのに遅刻とは…いやいや俺としたことが…嗚呼もう！）
すっかり照明の落とされた客席にそっと音を立てずに向かう。
この暗がりのせいで周りは、長戸の顔までは分からない。
ただ、長身の男が上映始まっているのにやってきたという、少々厄介な客だと思ったに違いない。
なるべく屈んで、他の客の迷惑にならぬようにしているつもりだが、やはり長身は目立ってしまうのか…
後の客に、頭を下げて座るとこにする。
（真後ろの人、帽子被って…顔は見えないや…遅れて来てすみません…）
仕方ないが、席はここしか空いていない。
長戸は静かに着席する。
敦の座る席の前に長戸が座った。
（始まって5分経ってから来る人いるのね…俺の前に…この人デカイな…）
少し、怪訝になった敦だったが、スクリーンへと気持ちを集中させた。
駆け出し時代に、あらゆるオーディションを受けるように、坂本に勧められ長戸と敦は、芸能オーディションをいくつか受けた。
残念ながら落ちたがその後、坂本洋一自ら連絡があり、何故か二人とも番組に出演が決まった経緯があった。
劇団とテレビ番組の二足のわらじで忙しい日々を送れたのも、この大将・坂本洋一のお陰なのだ。
昭和の演劇時代を築いた人のドキュメンタリー映画は、見応えのある懐かしい映像の数々だった。
エンドロールが流れ、ぽつぽつと人が退席する。
敦も長戸も席を立てずに余韻に浸っていた。
薄暗い明かりの中、観客席に残るのは長戸と敦とあと数名だけ。
ようやく場内が明るくなり、客席の全貌が明らかになった。
その途端、同時に声を発した。
「…えっ！」
終
あなたとの出会いに花束を〜今夜のご予定は〜
ゆっくりと街のイルミネーションを眺めながら、師走の大通りを独り歩く。
にぎやかで慌ただしい季節も少しづつ終わりに近づいているんだなぁと、どこか呑気につぶやきながら
メッセージの着信音がポケットから時折響くのも、今はスマホを見る気分でもない
（カフェでコーヒーでも…）
そう思い、行きつけのカフェへと足を向けた
この辺りにはチェーン店のコーヒーショップも多い
（そういやカッチャンの行きつけは…なんて言ったっけ）
相方のブログに出てくる行きつけのコーヒー店の名前が出てこない
（駅前の…商店街の…えっと…）
年なのか、単なるど忘れなのか、全然名前が出てこず苦笑い
（笑…ま、いっか）
行きつけのカフェに到着
マスターが顔を見るなり、いつものだねなんて笑顔で声をかけた
アンティークなカウンターとテーブルが少しだけの店内
テラスに近い席がいつもの定位置
少し硬めの椅子に腰掛けてひと息つく
ちょうど同じ目線の先に同じように越しかける男の背中を見た
（…ん？…！）
見覚えある…じゃない
あるどころか！
（…家から遠くないか？なんで？）
マスターがニヤリとこちらを向いた
（知ってたんだ…笑）
独りになりたくて来てるかも…と思うと
声はかけないほうがいいな
ひと口啜ってぼんやり外を眺める
そうそう、さっきから着信があったメッセージを読んでおこう
スマホを取り出し画面をあけると
長「マスターが、ミズが来るだろうからって。で、待ってた。ドウダッ！！笑」
（！）
俺はこういうのに…弱い
おまけに往年のJAJAネタまで…
水「言わねーよ！」
そう返信すると肩を震わせる相方さん
カッチャン。
あんたがホントに俺は好きだぜ
通話ボタンを押した
背中の男が電話の着信に気づき、スマホを耳に寄せた
これから、デートでもどう？
fin.