梨花の短編小説集

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1:梨花◆.k:2018/11/30(金) 21:00

こんにちは!
梨花です。本編も出す予定ですが、まずは短編小説も復活です。
よろしくお願いします。

2:梨花◆.k:2018/12/04(火) 21:46

『あの夢の始まりは
     あの恋の終わりだった
        〜莉乃の未来図〜』

登場人物

紅城 莉乃
私立根野川学園中等部一年生。
人一倍責任感が強く、おおらか。
紅城医療総合病院を両親が経営しており、将来は継ぐことになっている。

紅城 優莉
莉乃の母で、紅城医療総合病院の社長夫人であり、社長の相棒的存在であり、外科医である。

紅城 賢治
莉乃の父で、紅城医療総合病院の社長であり、外科医である。

浜名 大輝
私立根野川学園中等部二年生。
莉乃の隣の家の幼なじみ。
小さい頃からずっと莉乃のことが好き。

3:梨花◆.k:2018/12/04(火) 22:17

「おやすみなさい」

なんて言っても誰の言葉も返ってこないんだけど…。
わたし、紅城莉乃は家でひとり。
ママもパパもまだバリバリ仕事中。
ふたりとも医者で、当直や夜勤で帰ってこないことも少なくない。
あくびをしながらそんなことを考えながらベッドに腰かける。
もう寝ないと。
紅城医療総合病院を両親で営んでいるので、継ぐのはひとり娘のわたし。
今からでも医療の勉強をしてる。
寝る時間も細かく決められてるし。
ベッドに寝転び、目を閉じると今日はとてもよく眠れそうだ…。


「莉乃起きなさい。ビシッとして!今日から社長なんだから!」

え…?
びっくりしていると、なぜかあっという間に病院に着いている。
意味が分からない。
医療知識もままならないわたしが…なんで?

「あなたは外科医よ。手術もしなきゃならない」

ママがそう語りかける。
現役外科医でしょ!?
意味がまだ理解できないわたしに、看護士さんが声をかけてくる。

「搬送されてきた患者さんの手術、紅城先生お願いします」

「え、あの…」

「心タンポナーデです。しんのうせんし、お願いしますね」

心タンポナーデは勉強したことがあるからよく知っている。
心臓と、心臓を覆っている膜の間、心膜腔に心のう液が急に貯まってしまうもの。
そう状態では心臓が圧迫されてしまい、しっかりと血液が送り出せなくて死んでしまう。
そのため、心のう液をしんのうせんしという手術方法で取り除き、心臓が圧迫されているのを処置する必要がある。

「わたし、できませんよ…」

「この間やってらしたじゃないですか。…できないのであれば、他の先生にお願いします。では、紅城先生は大動脈損傷の患者さんお願いします」

「大動脈損傷…!何するんですか?」

「紅城先生大丈夫ですか?カンファレンスで言ってたじゃないですか。大動脈を遮断してチューブを繋いで、別のところも遮断して止血するって…」

どういうこと?
大動脈損傷とかもう治らないって!
しかも、血管二回も遮断するわけ!?

「そんなことしても意味ないですよ。大動脈損傷って…。死亡確認は…」

「紅城先生が言ったんですよ?…他の先生に大動脈損傷の方やってもらいますね。では…心破裂…」

「無理です!」

心破裂なんて無理に決まってる。
死亡確認すればいいのに…。

「では何ができるんですか?他に、胃ガンの患者さんの処置、ごえん処置、子供の開胸手術の中から選んでください!」

「何も…できません…」

「そうですか。もう紅城先生には用はありません。…失礼しました」


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