現在二つの小説を掛け持ちしておりますアポロです。
今回はテニプリ、ワートリの次にどっぷりハマってしまったプリストの夢小説を書いていきます!
ちなみに小説沿いです!
キャラクターは名前の「伊織(いおり)」は変わらず、名字が「小原(こはら)」になります。
やはり男前、一人称「俺」でやはり巨乳。毒舌です。かっけぇ……。あとメガネっ子。
こんな駄作になりますが読んでやってください。
『想い』を伝えるのは難しいですか?
『想い』は伝わるものですか?
『想い』だけだと消えやすいから
言葉や体温、贈り物。
人は形に『想い』をこめて、ずっとつないで生きてきました。
これはみんなでつないだ大切な人との『想い』の形。
あなたを想う、私達の物語。
「奈々ー、起きや〜」
「ふかふか……。気持ちいい」
「おい、二度寝すんな! え、嘘やろ!? マジ二度寝!?」
私、桜井奈々は届いたばかりのベッドでごろん、と寝返りを打った。カーテンを透かして、暖かい春の日差しが降り注ぐ。それを背に私を揺らし、起こそうとするのは、遠い親戚の小原伊織ちゃん。
私はずっと北海道のおじいちゃんおばあちゃんと暮らしていた。雪が残ってない新学期って初めてだ。
同じく伊織ちゃんも関西の大阪から、方南のストライドに飛び込むため、上京してきた。
二人で上京してきて一週間。新しい部屋にも馴染んできた。古い木造住宅をキレイにリノベーションした、素敵な家。耕ちゃんは不便かもって心配してたけど、私達はすぐに気に入った。
耕ちゃんこと、耕一おじさんはお母さんのしたの弟で、今の私達の保護者。耕ちゃんのところに居候させてもらえることになったおかげで、ようやくおじいちゃんは方南への進学を認めてくれた。
耕ちゃんが居なかったら方南に通うのは無理だったと想う。
一階のお店からコーヒーの香りがのぼってきた。耕ちゃんの家はピリカって言うカフェだ。ピリカはアイヌの言葉でかわいいって意味。ぴったりの名前だ。
ふかふかのベッドにコーヒーの香りで目が覚めるなんてステキだなぁ。
何て思いはスマートフォンの画面を見た途端に吹き飛んだ。
「もうこんな時間!」
「やからさっきからゆーとるやろ!?」
伊織ちゃんの怒鳴り声をBGMにあわてて飛び起きる。やっちゃった……。
自己ベストのスピードで用意をして、だーっと、一階のお店に駆け下りる。
カウンターの中で耕ちゃんがコーヒーを入れていた。白シャツに黒いエプロンが今日もキマっている。
「おはよう、奈々、伊織」
耕ちゃんの笑顔は写真で見たお母さんにそっくりだ。
「おはよう!」
「はよっす」
制服姿の私達を見て耕ちゃんはばつの悪そうな顔をした。
「ゴメン、入学式って今日だった?」
「大丈夫。あ、部活見てくるからお昼過ぎるかも」
「心配しんでください」
「はいはい。じゃあこれ御弁当。急だから店のサンドイッチで悪いけど」
「「大好物です!」」
ピリカのポテサラサンドはとっても美味しい。
大喜びでサンドイッチの包みと、紅茶の入ったタンブラーを受け取る。
「行ってきます!」
「行ってきますわ〜」
私達はお店から勢いよく飛び出した。
「わっ」
そのとたん、私だけぽふっと何か柔らかいものにぶつかった。
.
私がぶつかったのは、ピリカのウェイトレス(?)のさくらちゃんだった。
そのあと、伊織ちゃんとさくらちゃんにハンカチ持った? と聞かれ、体をまさぐり、無いと答えれば、さくらちゃんからハンカチを貰った。入学祝いだって。
「それじゃ、二人とも。いってらっしゃい、マネージャー頑張ってね」
「奈々、時間や」
私達は学校へ向かう。青空のした、自然と私達は駆け出した。冷たい空気を吸い込んで、走る。
目に飛び込んでくる町並みも人も朝日を受けて輝いて見える。
今日から私達のストライドが始まるんだ!
ギリギリでバスに間に合った。っていうか、伊織ちゃん足が速い! 50mが……5秒だっけ? 身長も175cmあるし、イケメンだし。……は、関係無いか!
方南学園高等学校まではバス一本。だけど、飛び乗った車内には方南の制服が一人もいない。もしかして遅刻かも……。
なんだか心配になってきた……。伊織ちゃんは堂々としてるけど。
だから次の停留所で方南の制服の男の子が走ってくるのを見つけたときは嬉しかった。
でも、その子は運転手さんに乗りませんって感じで手を振ると、そのまま走っていってしまった。隣の伊織ちゃんが「俺も走りゃ良かったな」と聞こえてきたのは幻聴としておこう。
「急げよ新入生!」
角刈りの怖そうな先生の声に追いたてられてなんとか私達は校内に滑り込んだ。後ろからがらがらと音をたてて校門のゲートが閉められていく。
ほっと息をついたその時、閉まりかけた校門のゲートの向こうから、男の子が走って来るのが見えた。
「危ない!」
「あぶなっ」
もう、校門のゲートに男の子が通り抜けられる隙間はない。なのに、男の子は構わずに走ってくる。
男の子が飛んだ。
「えぇ〜っ!?」
「うおおっ!」
校門脇のフェンスと、植え込みから伸びた桜の木を交互に足かがみにして、背の高さぐらいのゲートをひらりと飛び越えた。信じられない。
伊織ちゃんがその男の子が着地したときに転けると踏んだのか、その男の子を横抱きにキャッチした。
「「セーフ!」」
その男の子は横抱きにされたことに気付いてないのか、両手を空につき出して伊織ちゃんと共に叫んでる。
絶対アウトだと思う、それ!
男の子は横抱きにされてることに気づくとわああ! と叫んで下ろしてもらっていた。
私もそこに駆け寄る。
「だ、大丈夫? あ、血が出てる」
男の子は葉っぱかなにかで手の甲を切っていた。
.
男の子はそれに気づくと。
「平気。すぐ治るし」
「でも、ちゃんと止血しないと……」
「少年、人の厚意は受け取っとくもんやで」
いおりちゃんが横からそういってくれたので、私がポケットからハンカチを取って差し出した。ふわりとさくらちゃんの香水の良い匂いがする。さくらちゃんからのプレゼントだけど、怪我してるんだから止血が先!
「君達、やさしー!」
ハンカチを受け取った男の子の顔がパッと輝いた。
「サンキューです! コレ、借りるね」
人懐っこい笑顔。子供みたいな目で真っ直ぐに見つめられる。ちょっとびっくりしていると、さっきの怖そうな先生が近付いてきた。
「猿かお前は! 眼鏡も怪力か! さっさと掲示板を見てクラスへ移動!」
また先生に追い立てられて、私達はクラス分けの掲示板に向かった。
見上げるとすぐに自分の名前が目に飛び込んできた。C組だ。よかった、いおりちゃんも同じ!
「君達、なん組だった?」
男の子が振り返ってそういった。
「え、えっと、C組みたい」
「俺もC組やったで」
「一緒だ! おれ、八神陸です。よろしくお願いします!」
男の子が急に敬語になったので笑ってしまった。
「桜井奈々です」
「小原伊織や。気軽にいおりて呼んでくれて構わへん」
私達が名乗ると八神君はニッと笑ってくれた。
いおりちゃん以外知り合いが居なかった方南で、初めて話せそうな人ができた。
「なら行こや、急ご」
いおりちゃんの一声で、私達は校舎へと駆け込んだ。
**
「担任の壇だ。現代国語を担当する。一年間よろしく」
壇先生は簡潔に自己紹介を終えた。
私達の担任は物静かで、落ち着いた雰囲気の先生だった。さっきの角刈りの怖そうな先生が担任じゃなくてよかったな。
でもなんで壇先生はジャージに着替えてるんだろう……? 入学式の最中は確かにスーツだったのに。ポリシーなのか、ものぐさなのか知らないけど、なんだかただ者じゃない気がする。
「八神陸です! 好きな焼きそばは焼きそばパンです!」
八神君の自己紹介はいきなり飛ばしていた。なんじゃそりゃーと言う声と共に笑いが巻き起こる。八神君って、友達すごく多そう。
「あと、スポーツ全般大好きなんで、早く体育祭とか来ると良いなーって思います! よろしく!」
笑顔のクラスメイトの中で、一人だけ八神君に険しい視線を向けている眼鏡の男の子がいた。
なんだろう? 知り合いなのかな?
そう思って見つめていると、目と目が合ってしまった。射抜く様な強い眼差しに目が離せなくなる。
ひゃー、ど、どうしよう……。
しかも、いきなりその人が立ち上がった。
びっくりしたけど、自己紹介の順番が来ただけだったみたい。
.
「藤原尊です。よろしく」
それだけ言って、着席してしまった。すごく堂々としてる。なんだか変わった人だなぁ。
それから、順にみんなが挨拶していって、いおりちゃんの番になった。
「小原伊織です。関西から来ました。たこ焼きとか、お好み焼きとか作れるんで任してください。
あと、甘いもの、特に善哉が好きですわ。運動も好き。
よろしゅーしたってください」
いおりちゃんが言い終えると女の子達が「かっこいー」「イケメン!」と騒ぎ出す。
次はいおりちゃんの後ろの席に座る私の番だ。
「桜井奈々です。北海道から来ました。東京は暖かくて嬉しいです」
ウケをとるつもりは無かったけど、なんだか笑いが起きた。
「東京の事はよく分からないのでいろいろ教えてください」
ぺこり、とお辞儀をする。八神君が大きな拍手をしてくれたのが、嬉しかった。
**
「桜井さん、小原さん。入る部活は決めた?」
入学式後のHRが終わり、下校の時間になると、後ろの席の子が話しかけてきた。
もう私といおりちゃんの名前を覚えてくれたんだ。なんだか、くすぐったい。
「あたし、河原崎莉子。よろしくね。新聞部に入るつもりなんだ」
新聞部かぁ。人の名前を覚えるのも、新聞を作るのに大切な技術なのかも。
「ね、あなたたちもどう? 小原さん、絵すっごく上手いでしょ?
桜井さん字とか綺麗でしょ?」
河原崎さんのしゃべり方はストレートで、なんだか仲良くなれそうだ。
「ゴメンね」
「俺ら、実はもう決めとんねん。すまん」
だから思い切って言って見ることにした。
「私、ストライド部に入る」
「俺も」
「ストライドって、あの街中で走るやつ?」
「おん!」
「私もいおりちゃんも、どうしてもこの学校でストライドやりたくて」
おじいちゃんや耕ちゃん、さくらちゃん以外に、自分達の決意を口に言うのは初めてだ。熱く語るのは、なんだか恥ずかしい。
「だからマネージャー頑張るつもり」
「俺もや。大阪ではランナーとして走っとった」
でも、河原崎さんの反応は私達が全く予想しないものだった。
「うち、ストライド部無いよ」
「「え?」」
一瞬目の前が真っ暗になった。
「あ、ゴメン。全然ストライドの話とか聞かないから。今も方南にストライド部ってあるの?」
「あるで、絶対。二年前はEOSの準決勝まで行ったんやからな」
EOSはEND OF SUMMER、そのなのとおり、夏の終わりの大きな東日本高校ストライド大会の事。
あの動画でも、EOSの試合だった。
「でも、マネジするならサッカー部の方が良いんじゃない?
長良中から宮田くん来てるし」
「「だれ?」」
「中学エースでイケメンの……って、知らない?」
「うん」
「全く知らん」
生返事をしながら私の頭の中はぐるぐるしていた。よく考えたら、ストライドってすごい、方南行かなきゃ!
って二人でなってから、それだけで、一生懸命で……方南にいけば、あのストライドに近づけるって、それしか考えてなかった。
「それかー、彼氏にするなら男バスの方が、カッコいい子いるよ? 小原さんと桜井さんなら男が寄ってくるんじゃない?」
「か、彼氏!?」
「……お前、なに言うとん?」
河原崎さんはなんだか勘違いしているみたいだ。
「そういうんとちゃうで?」
「そっ、そうだよ! 私はストライドが良いの」
私達が真剣に言うと、河原崎さんが一瞬意外そうな表情を見せてから、満足げな顔をした。
「なるほどね! 桜井さんと小原さんはストライドが好きな子なんだ。マネジやって彼氏ゲット! みたいな話じゃないんだね」
「最初っからそー言うとんに」
口を二人揃って尖らせる。
「あはは、ゴメンね。でも、二人はこっち側か。仲良くなれそ」
河原崎さんがウインクして右手を差し出した。
「奈々で良いよ」
「いおりでエエ」
私達は手を握る。活発な物言いの河原崎さんの手は暖かかった。クールないおりちゃんは低体温らしく、冷たかったけど。
「じゃあ、こっちも莉子で」
固い握手を交わしたあと、私達はクラブハウス棟へ向かった。早く、方南ストライド部がどうなっているのか知りたかった。
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伊織ちゃんの一人称、『俺』から『こっち』に変更します。
オリエンテーションの資料を片手に、一人でクラブハウス棟をうろうろしていると、後ろから声を掛けられた。
「桜井奈々、小原」
いきなりフルネームで呼び捨てにされた。私は驚いて振り返り、伊織ちゃんはゆっくり振り向いた。でも、なんで伊織ちゃんだけ、小原?
この眼鏡の男の子は、同じクラスの……。
「えーと……」
「藤原やん、久しぶり」
「あぁ、久しぶりだな。小原」
二人とも知り合いなのかな? 私が高い位置にある藤原君の顔と伊織ちゃんの顔とを見上げながら困惑していると、伊織ちゃんが言った。
「こっちと藤原、何回かストライドのランナーで走ったことが有るんや。な、藤原」
「ああ」
なぁんだ。そんな繋がりがあったんだ。と感心していると、藤原が続けた。
「ストライド部に行くのか」
「え? あ、うん……」
莉子と喋ってたのを聞かれたのかも。だったらちょっと恥ずかしいなぁ。
「いくぞ、お前ら」
表情を変えずに、藤原君は歩き出した。案内がしてくれるらしい。クラブハウス棟はお世辞にもキレイとは言えないけど、人のはなし声や笑い声、楽器の音。いろんな部活の熱気が伝わってくる。都会の高校って、やっぱりすごくにぎやかだ。
「ここだ」
ストライド部の部室は、クラブハウス棟の二階の奥まったところにあった。
さっきまでの熱気はどこへやら、周りには人影もなく、なんだかシーンとしている。
「よかった。ストライド部、やっぱりあったんだ!」
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