どうも皆さんごきげんよう。アポロです。
【テニプリ】神様のゲームを現在進行形で更新しております。
題名通りここでは黒子のバスケのホラーを書いていこうと思います。
ヒロインちゃんはお馴染みの御名前です。
アテンショオォォォォオンっ!
・荒らし、中傷は無しで
・暴言やめまっしょい
・ここは私一人で更新していく場なのでリレーではありません。
赤坂 いおり:女
・18歳
・高校三年生
・黒バストリップ
・クール巨乳
・関西弁(一人称・こっち)
・身体能力パねぇ
・常に無表情
・男ま……女前
・怖いの駄目……マジ駄目
イラスト
https://ha10.net/up/data/img/7034.jpg
時期はWC直後。木吉の足は大丈夫設定。赤司は俺司で前髪長い。灰崎帝光時代の髪型。
ぴちゃん
……ん。
『……どこや、ここ』
上から何か水滴が落ちてきて、その冷たさに目を覚ました。目線だけ動かしてみると、辺りは暗い。
そして上を見上げると……
『……誰やねん』
全身がぐっしょり濡れている黒髪つり目のイケメンが居ました。イケメンはこっちが起きたことに目を見開いて「起きた!」と声をあげる。え、えぇ……この声とこの顔は……。
『……高尾、和成……?』
かの有名なバスケ漫画(完結済み)、黒子のバスケの主人公の大勢のライバルの一人、秀徳高校一年生高尾和成だった。
高尾は「えぇっ!? なんで俺のこと知ってんの!?」と驚愕の声をあげる。こっちはなんでここにキャラクターが居るんか聞きたいわ。
とりあえず、高尾の質問に答えておく。
『……やって……、君……漫画の登場人物やし……』
「えええええ!?」
んな大袈裟な。高尾は目を再び見開いて吃驚するくらい大きな声をあげる。だが、「そっかー、俺漫画の登場人物なのかー。なら名前知ってんのも納得!」とかるーく受け流した。えぇ……。
『……君さ、疑ったりせぇへんの……? 嘘言うとんのやない、とか』
「えー、だって君の顔見ると「え、嘘だろなんでこんなところに」的な顔してっから!」
『えぇ……』
高尾のコミュ力には驚かされる。とりあえずけらけら笑う高尾を放り、辺りを見回す。
薄暗く廊下に座り込むこっちら、肩から掛かるこっちのエナメルバッグ。びしょ濡れの高尾。横を見れば教室が並んでおり、ここはどうやら廃校のようだ。うーん、こえぇ。
すると高尾が「赤司ー! 倒れてた女の子が目を覚ましたぜー!」と声を張り上げた。え、うっそ……赤司おるん? とか考えているうちに、「そうか」と曲がり角の奥から赤司が出てきた。あ、前髪長いしオッドアイじゃないから俺司だ。
『……赤司征十郎やん……』
「やっぱり知ってんのか!」
『……知っとるも、何も……赤司は成績優秀容姿端麗運動神経抜群、産まれてから一度も負けたことがない天才。赤司財閥御曹司で、帝光中学バスケットボール部キセキの世代キャプテン、現在洛山高校一年生でバスケットボール部キャプテン……やったかな』
「すっげぇ! 当たってる!」
こっちがすらすら赤司の事を告げると、赤司の眉間に皺がより、高尾がゲラゲラ笑い出す。高尾、笑いの沸点低すぎや。
「……なんでそんなに俺達の事を知っているんだ」
赤司が鋭い目付きで睨まれるが、理由が無いので飄々と答えてあげた。
『……やって君ら、漫画の登場人物やし』
「証拠が無いな。お前がここに連れてきたんじゃないのか?」
『いや、ちゃうし。こっちかてここがどこか知らんし。
それに、証拠なら有るで』
そう言ってこっちはエナメルバッグを漁った。あ、あった。キャラブック!
ごそごそとエナメルバッグから取り出し、「ん、証拠や」と赤司に差し出した。エナメルバッグには漫画全巻入ってますよ。
それを見た赤司は目を見開いた。
「なんだ、これは……」
『藤巻先生の漫画や。週刊少年ジャンプで連載しとった大人気作品。
グッズやアニメもあって、舞台化もする。
漫画も全巻あんで』
こっちはエナメルバッグについていたキャラクターラバーストラップを赤司に見せた。
「……どうやら本物らしいな」
『確信的証拠、信じてくれたらエエわ。っちゅーか、ここ、どこ』
こっちが辺りを見回しながら告げると、「どうやら中学校の様だ」と告げられる。ふーんと相槌を打つと、高尾が口を開く。
「っていうかさ、俺達君の名前知んないんだけど」
……名前を教えてなかったことに今気がついた。
『こっちの名前は赤坂いおりや』
短く告げると、「歳は?」と高尾に聞かれ、「高3」と答える。ちなみに身長は176cmである。赤司より4cm高し。
「……赤坂さん、みんな体育館で集まっています、行きましょう。ここは危ない。
あと。偉そうにしてすいませんでした」
『気にすんなや……。
……? 赤司。危ないて、なん?』
「……出るんですよ、化けも『さぁ行こか。うん、ちゃっちゃと逝こ! なあたきゃおきゅん』
「ぶふぉっ、逝くって……漢字ちげぇっすよ! あとたきゃおって……ファーーーー!」
『うるっせぇな。……バケモンとか、あかんって。死ぬって。こっちが精神的に』
「そっちっすか!」
ぎゃいぎゃい言いながら三人で歩き出す。っていうか。
『高尾、お前なんでそないにびっしょぬれなん』
「えーっと、さっきなんかに襲われて……走って逃げてたらロッカーにぶつかって上にあったバケツの水被りました!」
『……』
「いやいおりさん哀れんだ目で距離取んのやめてくださいよ! これただの水ですから! とってもきれーな水ですから!」
『……』
「あ」
赤司がぴたりと立ち止まった。半泣き状態の高尾と共にそろりとそちらを見ると、ミイラ男がいました。
と言っても絵本で出てくる可愛い物ではなくて、所々見える肉体は腐り、ぼろぼろである。目玉は飛び出し掛け、歯は不揃い。
なんと言うか、気持ちが悪い。
あ、やっべ。足動かねぇわ。
「小原さん!」
「いおりさん!?」
『……あ、ははっ、はははっあかんって、マジあかんって。え、なんでこっちこないな所つれてこられたん? え、神様はこっちに死ね言うんか?
往生しまっせ』
「往生しないでください」
「いおりさああああん! ミイラ走ってきてるから! 早く!」
遥か後方、駆け出した高尾少年と赤司少年に叫ばれるが、こちとら動けへんですわ。あ、こっちもう死ぬん? あぁエエかも。
そしてミイラがとびかかって襲ってきたところで焦点が合う。あ、なにコイツキモッ!
こっちは瞬時に飛び起きて……
『ぎゃあああああああ!』
回し蹴りをお見舞いしておいた。
なにあれ。
絶望的にキモいキモいキモいキモい絶望的に汚い汚い汚い汚い汚い絶望的に臭い臭い臭い臭い臭い臭い!
3Zの3コンボだよ! ひとつ違うけど! ダンロンの江ノ島ちゃんじゃないけど3Zだよ! むくろちゃんじゃなくて、コイツを退場させてよ! 「ご期待に添えるように」!
一目散に駆け出すこっちは先を全力疾走する二人を追い抜いた。二人は目を見開く。
「ちょ、いおりさああああん! 速い速い!」
「……」
高尾が叫び、赤司が「負けない」と目に闘志を灯した所で二人のところまで逆戻りし、二人を両脇に抱え、ダッシュダッシュダーーーーッシュ!
「いおりさん力持ち! すげー! はえー!」
「俺達の体重は悠に100kgを越えた。小原さんはそれを……小原さん……」
たきゃおからは爛々とした目で見られ、赤司からは「どうなっているんだ」的な目で見られた。
そんなことは知らず、こっちが曲がり角を曲がると、人に出会った。
……あれは。
「日向さんと伊月さんじゃないっすかー!」
「どうも」
『クラッチタイムとイーグルアイ』
日向主将と伊月が居た。加速を停止して二人を降ろす。
「よ、よぉ……赤司、高尾」
「……お前ら、女の子に脇に抱えられて走られてたのか?」
「いやー、倒れてたので知り合いになって、そのあとミイラ男に追い掛けられてたら、いきなり脇に抱えられました」
「高尾に同じです」
『……夢中やったもんで。いやホンマあれはない。ないな。ないない。ミイラ男の体腐っとったがな。きっしょくわるい。
絶望的にキモい絶望的に汚い絶望的に臭い。3Z揃ってもーとったやん。あかんって。ははっはははっ』
「ぶふぉっ、いおりさん気をしっかり持って!」
なんか、高尾に肩を叩かれた。
.
『こっちの名前は赤坂いおり。高3や。よろしゅう』
「ああ、よろしく。俺は」
『日向順平、やろ』
「……高尾、赤司。赤坂さんに俺の名前教えた?」
「いえ」
首を振って赤司が否定する。高尾は「やっぱしってんのかー」と感慨深いような顔をして頭の後ろで手を組んだ。
赤司に事情を説明しても良いかと目配せされ、『好きなように』と手をひらひら振った。赤司は日向と伊月に向き直って告げる。
「赤坂さんは俺達とは違う世界の人です」
「あ¨ぁ!?」
「ええっ!?」
二人してバッとこっちを見つめた。何でもないような顔をしていると、「マジで?」と日向が向き直って聞く。
「マジです。俺達の事を知っていた理由は、赤坂さんの世界では俺達は漫画のキャラクターだそうだからです」
『せや』
「些か信じられないな……」
『ん』
信じられないなと言った伊月にコミックス一巻とキャラブックを渡す。それを見るなりキャラブックを見て高2が驚き、漫画のタイトルを見て全員が目を見開く。
「……黒子のバスケ?」
「え、黒子が主人公なのかよ!?」
「影が薄い主人公か……ハッ!!
黒子(ほくろ)の黒子!」
「伊月ホントてめぇ一生黙ってろ」
「やっべぇ黒子とかサイコー!!」
これは信じるしかねぇな、と日向が苦笑いをしたところで、こっちの顔は強ばる。なんだ、この嫌な雰囲気は。
ばくばくと激しく高鳴る鼓動とだんだんと加速する呼吸。ぜっはっ、と目を見開き、冷や汗が地面にぽたりと落ちた。胸焼けのような感覚に胸の中心を服の上からぐしゃ、と握る。立っていられないぐらいの不快感に襲われ、膝をついた。何かが来る。勘だがそう感じとった。
そこでみんながこっちの異常を感じとり、屈み込み赤司がこっちの背中に手を置く。
「どうしたんですか赤坂さん!」
『赤司、わる、やべ……気っ持ちわり、なんか……来る』
来る。の瞬間、不快感や体の異常が吹き飛んだ。みんなは背を向けているから分からないだろうが、目が、合った。
そしてソレは、確かに口を動かした。
ミ イ ツ ケ タ
自分の呼吸がひゅっと短くなったのを感じる。身の毛がよだつ。ソレは裂けた口で笑って、余計に裂けさせる。瞳孔が開いたのが分かる。ぶわりと鳥肌と冷や汗が溢れ出た。血の気が引く。
『う、あ……わあああああああ!』
立ち上がって叫んだ瞬間赤司達が視線の先を見て、顔を青ざめる。そして、
「走れええぇぇぇぇええ!」
日向の叫びでみんな超真剣な顔で全力疾走だ。逃げろ。
あの、口の裂けたゾンビから。
.
「ぅ あ¨あ¨あ¨あ¨あ¨あ¨!」
『……っ……っ……っ……!!』
「ぶっふぉあっ! いおりさん何も言わずに叫んでる!」
「それ、叫んでるって言えんのかよ」
五人必死で足を動かす。そして目についた教室に入った。扉を開いて全員が入ったことを確認して勢いよく扉を閉めた。磨りガラスから滲むが、観察していると、この部屋に気づいていないかのように行ってしまった。
ぺたんと力を抜いて座り込む。
『一安心やな……』
「怖かった……」
「……はっ、怖くて体が“こわ”ばった!」
「伊月マジ死ね今マジ要らねぇから」
「日向ぁ!」
そう漫才をしている誠凛二人と爆笑する高尾を置いて、赤司と共にこの部屋を見回す。
「ここは……」
『職員室、みたいやな……』
「何かあるかもしれません、探しましょう」
『せやな』
同時に部屋の探索を始める。嬉しいことに職員室は引き出しやロッカー等がたくさんある。探せば武器になりそうなものも有るかもしれない。
ロッカーをがこがこ開けていくうちに、良いものを見つけた。赤司も何かを見つけたようで、こっちに視線を寄越した。こくりと頷き、赤司が何かダンボールを持ってやって来る。こっちもロッカーからそれを掴んで赤司に見せる。
『こっちが見つけたんは赤色メタリックの日本刀や』
「俺のところは……」
そういいながら赤司がダンボールを開いた。そこには。
『……銃?』
「見てください、銃に紙が挟まってます」
赤司が銃を一挺手に取り、紙を抜き取る。紙を見れば、『バレッタ』とだけ書いてあった。
『多分名前やな。それにしても拳銃か。本物やん』
「銃は俺達が使います。赤坂さんはその日本刀を」
『了解』
そうして三人にも事情を話し、拳銃を渡した。説明書も入って居たのだが弾は無くならないそうだ。これじゃあ倒してくれと言ってるのと同じだ。
これからどうするかを決めあぐねていると、外からばたばたと足音が響いてきた。
ゾンビか? ミイラか?
迷っていればドアが横にスライドされるが、鍵を掛けているので開かない。そして聞こえてきたのは。
「やべぇっす!」
「くそっ、空かねぇ!」
「どうすんだ?」
「うるせぇよ黙ってろ黄瀬と火神!」
「ちょっと大ちゃん! 来てる来てる!」
「落ち着いてください桃井さん」
「そうだぞー? 落ち着け落ち着けー。はっはっは」
「逆になんでテツくんと木吉さんはそんなに落ち着いてるの!?」
「些か疑問なのだよ!」
職員室の外でぎゃいぎゃい騒ぐ人達の声に聞き覚えがあり、鍵を開けて扉を開ける。
雪崩れ込むカラフルなそいつら。そして扉を閉めて鍵をする。
「真ちゃん! 宮地さん!」
「黒子! 火神!」
「桐皇の青峰に桃井さん、海常の黄瀬!」
「お前たちも巻き込まれていたのか」
『あったまカラフルやなー』
「赤坂さんもですよ」
『せやった』
そうして新たに仲間が8人となった。っていうか、これで13人。13人とは、なんとも歯切れが悪いなぁ……。
.
雪崩れ込んできたうちの一人に、こっちはなぜか見覚えがあった。
『……宮地ちゃん……?』
「はぁっ!? ……っていおり!?」
中学の頃、ゴールデンウィークの間だけ出会い、知り合いとなった宮地清志が居た。以前よりイケメンとなっている。その時は同姓同名の空似かと思っていたのだが。
『……おまっ、黒バスのキャラやったん!?』
「黒バスってなんだよ! ってかなんでお前がここに……」
『知らんわ! っちゅーかお前、中学の頃ゴールデンウィークに出会った時トリップしとったんかい!』
「そうだぜ!? いきなり目が覚めたら関西にいて、ビビったわ! 学校検索しても出ねぇし!」
『宮地ちゃんイケメンなったな!』
「お前相変わらずでけぇな! 胸!」
『死ね!』
二人でぎゃいぎゃい言っていると、説明を求められた。とりあえず、全員自己紹介を済ませ、黒バスの話もした。みんなびっくりしたが、証拠を見せればみんな納得。黒子ちゃんが「……僕が主人公ですか……」と心なしか嬉しそうだった。
「……見てください。プリントがいつの間にか机に乗っています」
そう赤司ちゃんが教頭の机に近付きながら紙を手に取った。どうやら手書きらしい。
「……読むぞ。
『選ばれた15名の諸君、ようこそ脱出ゾンビゲームへ。
君達には45体のゾンビを全て倒してもらう。全て倒せればこの中学廃校舎から出られる。
君達の前に3回ゲームへと才能のある人間をつれてきたが、全滅し、ゾンビへと変貌した。
君達にはクリアしてもらいたい。武器等はいろんな所に隠してあるので探してゾンビを殲滅してくれ。
尚、扉の鍵を閉めなくても大丈夫なセーフティゾーンは “職員室” “校長室” “家庭科室”。
他の教室は鍵を閉めれば、ある程度ゾンビ達はドアを叩くが、いずれ去る。だが、気を付けてほしい。教室内にもゾンビが存在する可能性があるからだ。
それでは、健闘を祈る』……」
命をなんだと思っているんだ。と思いたくなるような文面だった。
プリント
https://ha10.net/up/data/img/7299.jpg
出なかったら言ってください。
赤司ちゃんの話を聞いて、桃井ちゃんがぺたんと座り込んだ。
「……やだ、怖いよ……」
これは恐怖で気が滅入っとる奴や。そう思い駆け寄って「桃井ちゃん、大丈夫やでー」と抱き締めて背中をさする。とうとう泣き出した桃井ちゃんが泣き止むまでその態勢で居た。
**
「っぐずっ、いおりさん、ありがとうございましたぁ……」
『もう大丈夫か?』
「はいっ!」
『そか』
そういって立ち上がれば、「……イケメンっす」と黄瀬に言われた。誰がや。
とりあえず、探索の際、桃井ちゃんはこの安全区域にて待機してもらことにした。だが一人じゃもし襲ってきたとき対処出来ないし、心細いだろうから、紫ちゃんと黒子ちゃんに残ってもらうことになった。
とりあえず2チームに別れて武器探索、閑散、ゾンビ撃破へと向かう。
「__で、Aチームの一人は赤坂さんと決まっているが……早く決めてくれ」
『俺様もしかして取り合いなっとん?』
「……」
こっちか冗談で言うただけやのにキッと睨まれた。赤司ちゃん怖い。
まず、空間把握能力のある鷹の目、鷲の目を持つ伊月ちゃんと高尾ちゃんには別れてもらわなければならない。どこからゾンビが来るか分かるから。
そしてやっとの事で決まったのは、Aチーム、こっち、宮地ちゃん、伊月ちゃん、青峰ちゃん、日向ちゃん。
Bチームが赤司ちゃん、高尾ちゃん、緑間ちゃん、木吉ちゃんだ。
人数を見るに残りの仲間は二人だし、急いで探して保護しないと。誰かは知らないが危ない。
こっち以外は銃のみの装備で、こっちは日本刀と銃一挺。充分な武器だ。
手榴弾とロケットランチャー等は数に限りが有るため終盤まで取っておく。
まず、Aチームから先に職員室を出た。
『やーば、こーわ』
「お前ビビりかよ」
『いおりサンや、青峰ちゃん』
「ちゃん付けやめろ!」
『ならサン付けしろや』
「っち」
外に出て早々、青峰ちゃんが声を掛けてきたので返事をすれば生意気ばかり。だから逆に追い込んでやったわ! ふはは!
ここまで来て、言っちゃなんだがあたしは信用はされてはいない。自分達の安全の為にあたしを利用しているだけだ。宮地ちゃんは信用はしてくれてはいるだろうか。だったら少し嬉しいかな。
今だって宮地ちゃん以外から警戒の視線を背中に貰っている。精神的にクる物があるなぁ、これ。
まぁ、別に構わない。あたし一人の犠牲でみんなが無事に脱出できるならそれでも。
あたしはこそっと隣で壁に張り付き周囲を警戒する宮地ちゃんに耳打ちする。
『……別にお前等がピンチになったらあたしを囮にして逃げても構わんからな』
「っ! は」
『来たで!』
宮地ちゃんが問いただそうとしたところでタイミング良くゾンビが二体。一体はあたしでも片付けれる。
今、あたしが持っている自分の髪と同じ色の鞘に収まる剣は柄が結構錆びて鞘から抜き出せない。それでも、木刀並の威力は有るだろう。
『行くで。みんな各々銃、構えろ。撃つなよ、あたしが行く。殺り漏らしたら躊躇なく撃て。あたしに当たっても文句は言わん』
「〜っ! お前な! さっきから自分で」
『黙ってろ宮地』
あたしの周囲の空気が自分でも冷たくなったのが分かった。いつもよりワントーン低い声で宮地を制す。心配してくれるのは有難いが、過保護と心配は違う。
万が一、バスケをプレイする君達が怪我をしたらどうするつもりだ。
『安心し。それは失敗した時の最悪の場合や。最も、あたしが失敗するなんて有り得ん。なんなら命かけてもエェわ』
「おら、そんな簡単に命賭けんな。轢くぞ」
『うぇーい』
俺様行くわ、あと頼んだ。
そういってあたしは宮地ちゃんの制止も聞かず剣(抜けない)で問答無用で一番近くにいたゾンビの頭をフルスイングした。
刀をバットみたいにはフルスイングして、ゾンビの頭を吹き飛ばす。どうやら頭を攻撃すれば消えるようだ。
事実、頭を飛ばせば滴っていた血液ごと消えていた。
その要領で次も……! と振り向けば、もう一体のゾンビが四人に迫っていた。
みんなどう対応すれば良いのか迷っているようで、仕方ないと駆け出す。
雄叫びながらあたしがゾンビの横腹に飛び蹴りをかまし、頭を落とす。ふうと息を付けばそのグロテスクさに吐き気を催した。うっ、げぇと声が出そうになるが耐える。
『大丈夫かお前ら』
あたしが声を掛ければみんなこくこくと頷く。あんなことしたあたしにみんな唖然としているようだ。
すると、後ろから頭をワシ掴まれて『宮地ちゃん』と声を掛ける。
痛いです。
「ったくてめぇは! 一人で駆け込んでいきやがって! 挙げ句なんだ!
最悪あたしを囮にして逃げりゃいいって!」
『いやいや、お前らバスケ選手やろ。足とか手ぇとか怪我したらどないすんねん!』
そう言い合いをしていると、日向がちょっと待てと割り込んできた。
「いおりサン、囮にして逃げりゃいいってどういうことすか」
『まんまの意味や?』
「っあー! もう! いおりサンの事疑ってた俺らがバカみてぇじゃねぇかよ!」
『事実お前らあたしの事信用してへん阿保やんけ』
あたしの一言にうっと言い淀む日向に冗談やってと笑い返した。
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