どうもおはこんばんにちはぜんざいです。前も言ったようにもうスレは立てねぇ! と宣言していたのですが、【正味】の方がごっちゃになってきてしまったので新しく作りました。
あちらはいろいろ、こちらはトリップのみと分けさせていただくことにしました。勝手ですみません。
ジャンル無節操、とりあえず自己満足しか無いので「あ、嫌だこれ」と言う方はブラウザバック! ぜんざいが小説を書くスレなので他様の小説カキコはお止めください。人が来ていただけるかすら分かりませんが雑談駄目絶対。感想は泣いて喜びます。多分なつきます。
注意点ですが、ぜんざいは他サイト様でも「フレデリ・トリガー!」と言う小説を書かせていただいており、そこのキャラクターが出てきたりします。次から書こうとしているやつに早速出張って来ます。基本うちの子達の過去は暗い物や重い物が多い。アホの子も居ますが。
上記もですが、それ以外にもオリキャラ登場するかもしれません。
チートや最強、ハーレムや逆ハー等はオリキャラでは出来るだけ出しません。だって『主人公無双! そんでもって無敵! オマケにモテモテ!』とか面白くないじゃないですか。
イラストの画像投稿も多分しますね。イメージ壊したくないわ馬鹿野郎! と言う方は見ない方が良いかと思われます。
以上の点が「無理!」「やだ!」「好みじゃないなぁ」と言う方はお勧めできません。もう一度言いますここぜんざいの完全なる自己満足を書き散らす所です。
こんな自己満足すら大空のように包み込んでくださる寛大な方はどうぞよろしくお願いします。
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転生白雄。〜現在の服装とともに〜
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また新しいのです。ホント書きたいのがちょこちょこ変わって申し訳ない。上記のはお気に入りなのでまたきっと書きます。
練家、紅炎たち紅兄弟の長男の話。白雄より二つ上。またイメイラ上がります。オリジナルから原作に繋がってくよ。
設定。
練 紅影(こうえい)
練家で一番最初に産まれた男。白雄の二つ上なので紅炎の七つ上。
深紅の髪は短く切り揃えられており、左頬の横の髪が少し長いだけ。前髪は紅明の左右逆のような髪型。左目は前髪に完全に隠れており、右目の下には泣き黒子がある。襟足の髪はシルバーリングで首もとの所で括られている。右頬の切り傷の痕は戦場に出て付いたもの。紅炎たちが着ている煌の服を好まず、極東の島国の着物を好んで着る。
煌帝国一の変人。基本テンションが高い。ヘイヘイヘヘイイェイイェイフゥー↑な人。基本かっこいい笑顔。
剣の才能や体術、戦略などの才能に満ち溢れているが、某千の刃の男のように基本気合いで何とかできてしまう超人。「紅影さんなんか適当に右パーンチ!」で山に穴が開くとか。とりあえず粉砕はできる。
男らしいと言うか漢らしい。スーパーウルトラ兄貴肌。色男。紅炎や紅明が目にいれても痛くないほど可愛らしく、身分は違えど白雄、白蓮も可愛らしく思うただのブラシスコン。下からも慕われている。
とある事情により煌や兄弟、従兄弟たちを守るため皇位を退冠、ぶらり世界の一人旅に出る。
初代皇帝として、従兄弟の父として慕っていた白徳の死に弔おうと一度煌へ帰ってきたら白雄、白蓮の訃報が入ってきて唖然。煌の宿にて今後煌へ立ち寄ることをやめると決意。血涙するほど悩んだ。ジンを四つ所有。
してその実態は、通り魔に刺されて死に、転生した男子高校生だった。剣道部の帰りに友達を庇って亡くなった。楽天家なところは有れども頭も運動神経も非常に優れ、また生命力も強かったため、通り魔にめった刺しにされたあとにも意識を取り戻し一発ぶん殴ってから逝った。それには満足してた様子。
生まれ変わってからも正義感が強く、一夫多妻制でありながら妻は一人しか要らない妾も要らないの一点張りの誠実な男になった。玉艶に不信感を抱きつつも白雄や白蓮、紅炎や紅明、白瑛、紅覇紅玉、白龍にめろっめろのめろめろの骨抜きになってしまった。前世で一人っ子だった。
暖かな陽射しが降り注ぐ禁城にて、不意に「あにうえ! 紅影あにうえ!」と呼ぶ声がしてふっと振り向く。
『おぉ、紅炎紅明! おはよう』
「おはようございます、紅影あにうえ!」
「……おはようございます、あにうえ」
ぱたぱたと駆け寄ってきた弟の紅炎、紅明。紅炎は7歳になったばかりで、紅明もまだ5歳と二人とも幼い。現在14の俺、練紅影は二人の可愛い弟にめろめろです。俺の弟達が可愛過ぎてつらいんだが。
まだ眠そうな紅明を見るに、紅炎が叩き起こして引きずってきたのだろう。朝から元気なことだ。紅明よ、衣服が乱れまくりだぞこの毛玉め。
さっと紅明の服を直してから紅炎の頭を撫でて、肩に座らせるように抱っこして、紅明はまだ眠いだの紅炎は起きろ紅明だの、耳元で騒がしくされでも怒る気は毛頭なくむしろ子供特有だよなあと和む和む。超和む。
紅炎を勉学用の部屋に、紅明を鍛練場に連れていこうとのらりくらり遠回りして気付かれないように進んでいたのだが、突如として背後で「わっ!」と明らかに驚かそうとする声が聞こえた。
『うおっ、とっとっとっ、とととぉ!? あ、白蓮皇子ですね!? やられました!』
「へへへ、大成功!」
『ははは! あっ紅炎紅明前見えない! 手、手! 手ぇ退けて! お兄ちゃん目が痛え! とても痛え!』
白蓮皇子の背後からのドッキリに驚いた二人が俺の頭にしがみついてきてもうまったく前が見えない。ふらふらしてるから余計にか。
おまけに白蓮皇子までドンッと腹に飛び付いてくるからもうそろそろ本格的にヤバイかもしれない。そんなとき。
「! 大丈夫か紅影」
『白雄殿下!』
後ろからぱっと背を支えてくれたのは、この煌帝国第一皇子、我らが練白雄。
二人が出揃ってしまったので弟をしたに下ろし、膝をついて挨拶をする。かしこまらなくていいと言ったのは殿下の方だった。殿下とは言えまだ12か……。いや、もう12と言った方がいいのか。もう立派な年だ。
「うちの白蓮がすまない、紅影」
『いえ、構いません。年の近いのが私どもしかおりませんので。身分の差はあれども、紅炎や紅明も楽しいのでしょう』
「……そうか」
嬉しそうに微笑んだ白雄殿下を見て、あぁやっぱりまだ12なのだと思い知らされる。前世のこの年の俺は何してたっけ、確か外でかけずりまわって遊んでいたはずだ。上にも上の苦労があるらしい。
『……平和ですね』
「……ああ、平和だなぁ」
愛しい弟や従兄弟を見て俺は目を細めた。
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捏造有り。
俺はそのあと、自分がまだ6.7歳だった時に前世の知識をフル活用して作り上げたビデオカメラや普通のカメラを取りだし、笑顔の彼らにそれを向けてその笑顔を納める。ビデオカメラはてててと弟たちの方に駆けていく白雄殿下を始め、弟の紅明を問答無用で連れ回す紅炎や、紅炎を肩車しながら走りまくる白蓮様、他にも鬼ごっこをやりたいと言い出した白蓮皇子に御命令とあらばと嫌がる紅明を引き連れ従う紅炎、「久々に混ざらせてもらおう」と珍しくノリ気な白雄殿下。なんてほほえましい。
「ほら、紅影。お前も来い」
「紅影! お前が年長なんだからお前が鬼だぞ!」
「俺はたとえ兄上だろうと逃げ切ります」
「たすけてください紅影あにうえ……」
『っ、ふははっ!』
紅明お前も今日は付き合え。昨日もやらされましたよ。我が儘言うな紅明。紅炎の言う通りだな。
俺はそんな会話をしながら四人へと嬉々として駆け寄った。
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あの平和な年から数年、俺は18歳になった。紅炎は11、紅明は9、白雄殿下が16、白蓮皇子が14、そして白瑛皇女が5歳、紅覇、紅玉が3つ、白龍皇子が1つになった。俺はどうやら煌帝国1の変人らしく、なにやら『生ける伝説』と言われているようだ。由来は知らん。理由として心当たりがあるのは、俺が戦でただの気合いパンチを見舞うと山が貫通したり科学者として機械を発明したからだろうか。
それはそうと、玉艶王妃の連れてきた黒い連中とジュダルからは黒く陰った気配がするのだが、気のせいか?
まだ幼い紅覇にでれでれしつつ紅炎、紅明の頭を撫でた。紅玉にも会いたいな……。
その数日後、俺は組織側から兄弟を狙われたくなければ皇位を退冠しろと言われ、絶対に手を出すなよと睨みを利かせて退冠した。
「兄上……どうして兄上が」
「……兄上」
『……くそ、悔しいな』
……まあ、いつかまた会えるさ。俺は二人にいつか俺と紅炎、紅明で撮った写真を渡して手を振った。
その後、追い出されるように禁城を後にする。その悔しさといったら舌を噛んで死んだ方がマシだと思えるほどだった。
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唐突に始まるあれ。上記のはまた今度。
練紅明inMHA記憶なし転生。全く関係のない炎瑛。年齢操作あり。
練紅明。雄英のヒーロー科三年に兄がいる雄英一年生。A組。
長兄、紅炎に「お前はもっと何かしらにやる気を出せ!」と怒鳴られ挙げ句何故か雄英ヒーロー科を受験。倍率300ぐらいだし自分なんて記念受験だよ記念受験と浮かれていたが合格通知が来たときは目の前が真っ白になった。
軍事書が好き。中学までの勉強を小学二年で終了させて子供らしくない趣味に没頭した変な子。学校はちゃんと通ってたけど寝てばっか。寝不足。つまり頭がいい。
吹き出物じゃなくてそばかす。濃い紅っぽい色の髪。耳には原作通りの耳飾り。
中学まではもっさもさの腰までの髪をポニーテールにしてたが紅炎に「見ていて鬱陶しいから切れ」と七つ下の紅覇と紅玉に受け渡された。するとアラびっくり(原作30巻以降と同じ)すっきりした短髪に。耳飾りはそのまま。
家は裕福でわりと広く、何故か書庫がある。基本紅明はそこで籠っている。紅炎も時々来る。
紅徳一家は原作なら紅玉の上に七人姉が居たけどここはいない設定。
お向かいの家には従兄弟の白徳一家が在住。白瑛は紅明の一個上っていう年齢操作。ちなみに炎瑛。紅明的によくあの白兄弟の男連中を押し退けたなと感心している。紅炎からして五つ上の白雄と二つ上の白蓮は白瑛に彼氏が出来たことに対し当初「はあ? 彼氏絶対ブッコロす」的なあれだったが紅炎と分かると一気に「紅炎、白瑛を任せたからな」な手のひら返し。信頼パないですね。白徳と白龍は今でもちょっと拒否ってる。まだ拒否ってんですか。
白徳と紅徳はただのいい人。ここ仲の良い兄弟。玉艶さんもただの優しいお母さん。紅明たちの母は病死。コイツらわりと重たいぞ。
白瑛が義理の姉になるのはちょっと楽しみ。尊敬する白雄白蓮、自分はちゃんと慕ってくれてる白龍と義兄弟になるのも。
隠れブラシスコン。多分紅玉がいつか嫁に行くってなるときに一番静かに最後まで拒否る心づもり。いくらそれがアラジンだとしてもだ。愛が重たい。コイツらわりと重たい。
個性:ダンタリオン。ただの転送系個性。ゲートが星座っぽい。魔装はしない。どこでも繋げられる。いくらでもゲート出せる。ちなみに切断可。
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流石に。雄英からの合格通知が来たときは目の前が真っ白になった。なんでこんなことになってるんですか訳がわからない。
あれか、貴重なワープ個性だったからか世の中個性で決まるんですか辛い。合格通知を握りしめてソファーで項垂れていると二つ上の長兄、紅炎兄さんが現れた。うっ、なんか目線いたい。
「髪が鬱陶しい」
『エッ』
「記念だ。ばっさり切ってこい」
『エッ』
ずるずると廊下を引き摺られて放り込まれたのは七つも下の弟妹、紅覇と紅玉の部屋だった。事前に話が進めてあったようで、「任せたぞ」「お、お兄さま! ホントによろしいのぉ……?」「炎兄良いって言ってたじゃーん! はやくやろーよぉ!」と目の前で行われるやり取りに目を白黒させる。
「明兄はここ座ってね! 動かないでよぉ? 怪我しちゃうしぃ」
「紅覇お兄さま、髪切りバサミはどこ……?」
「ああ、それならあそこ! 取りに行こ紅玉!」
『え、はあ。……エッ、お前たちが切るんですか!?』
「だ、ダメかしらぁ……?」
「明兄ダメ〜?」
多分、本来ならちゃんとした店にいった方が良いんでしょうが、この子たち異様に美容には気を使っているし、まぁ大丈夫だろう。てな感じで二人に任せた訳ですが。
「……えらくさっぱりしたな」
『自分でも思います。前がもさもさし過ぎたんでしょうかね……』
「似合うよ明兄〜!」
「紅明お兄さまのお顔がちゃんと見れてかっこいいわぁ」
驚くほどマトモだった。顔の横の髪は少なくもかなり長いが全体的に短くなった。顔の半分を覆っていた前髪は綺麗さっぱり切られ、ずいぶんと視界が開けている。首回りも涼しくなった。こればっかりは切ってよかったと思いますよ。
昔は軍事書を朝から晩まで読み漁り、3日部屋から出てこないこともあって、子供は小柄なこともありほぼ毛玉になったりしましたからね。何度兄さんに無理矢理(物理的に)風呂に放り込まれたか。
『……高校、雄英ですよ紅炎兄さん……』
「受かって当然だ」
『もう私辞退して書庫に籠りたいです』
「同じ学校だからな、担いででも連れていく」
『それが目的でしたかちくしょうっ!』
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1-Aと表示されたやたらとデカイ扉を躊躇なく開けて、まだまばらにしか集まっていない教室へと足を踏み入れる。今年のA組の定員は21、私の出席番号的に最後列のうちひとつ飛び出た席が私の自席だった。寝れるところである。私超運良い。
カバンを置いてから中身を漁り、目当ての物を見つけて取り出す。兄さんにこれが面白かったと渡された私は未読の歴史書である。この中の政治の内容が面白かったとのこと。しかし、全文英語とは。読めなくもないが、なんかめんどくさい。ぱらぱらとページを捲っていくとわりと興味をそそる内容だったので集中し始めたとき、バンと机を叩かれた。
『うぇっ!?』
「ったく……とっととこれに着替えろ。周りはもうとっくに更衣室に向かったぞ」
『え、はあ。すみません』
目の前に居たのは担任らしく相澤先生だという。慌てて分厚い本に栞を挟み、手渡された体操服を持って更衣室へと駆け出した。
**
案内されたグラウンドにて告げられたのは今から『個性把握テスト』を行うと言うウマだった。女子一名が「入学式は!? ガイダンスは!?」と先生に問い掛けて居たが、ヒーローになるにはそんな余裕ないらしい。私はとっとと教室に戻って続きが読みたい。ここ雄英は『自由』な校風が売り文句で、それは先生側も変わらないようだ。
個性把握テストとは、中学まで行っていた個性禁止の体力テストを指すらしい。ほう、練家スポーツテストの結果が散々な私に体力テストですか。帰りたい。しかし、どうやらコレは個性解禁らしい。デモンストレーションとして爆豪さんが個性を使ってハンドボールを投げた。球威に爆風がのせられたボールは勢いよく彼の手から飛び出し、七百メートル越えを叩き出す。先生的に自分の最大限を知らねばならないようだ。
「なんだこれ! すげー『面白そう』!」
「個性思いっきり使えんだ! 流石ヒーロー科!」
でも、面白そう、は流石にいけないのではなかろうか。コレはあくまでヒーローになる素地を形成する合理的手段。遊びではないのだ。案の定相澤先生の琴線に触れたようで。
「トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分とする」
んなまためちゃくちゃな。
「生徒の如何は先生の自由。ようこそこれが、雄英高校ヒーロー科だ」
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第一種目、50m走。
『よいしょ』
「1秒12!」
スタート地点にゲートを開き、ゴール地点へとワープ。跨ぐだけ。なんだこれ超楽。実際一歩踏み出して終わりですからね。
第二種目、握力。これは私を殺しに来ている。実際バカにしに来ている。
『んんっ!』
力を込めて記録を見てみればそこには25の数値。おもむろに思いきりがしゃんと計測器を地面に叩きつけた。周囲からの視線は痛いがそれどころではない。最早女子以下。これで壊れないのだから身の程の腕力すら知れている。女子以下とはなるほど泣きたい。そうですよ……! 白瑛さんでも30は越えてますよ……! くっ!
次の立ち幅跳びはゲートを開き、立ち幅跳びの要領で飛び込んで、立ち幅跳びの砂場のなくなるギリギリまで飛んだ。着地地点で前のめりに転けるとは日頃の運動不足が祟っている。これはヤバい。
第四種目、反復横跳び。これは体力を削りにかかっている。ダンタリオンを使おうと思えば使えますけど、複雑になるしめんどくさいし結局は足をゲートから出して着地点を変更しなければならないからやめた。その結果ぜえはあ息切れが激しすぎて倒れそう。体力が無さすぎる。爆豪さんにぜーはーいってるところを見られなんだコイツみたいな顔をされた。
第五種目、緑谷さんだかなんだか知らないがちょっと休ませてください。っていうかこのあとは多分前屈と持久走だけでしたっけなんだ超楽じゃないか。膝に手をついてうつむきながら未だにぜーはー言ってると金髪の上鳴さんに「お、おい大丈夫か」と問い掛けられ、赤髪の切島さんに背中をさすられた。いい人すぎる。
『すみませ、ちょっと、息切れ、が』
「お、おう。なんかヤバそうだな?」
『は、反復、横跳びは、私を殺しにかかって、きてますよ……』
「私!? わりと男らしそうな見た目で私で敬語!?」
「お前反復横跳びでこんなになってんの!? マジかよヤバくね大丈夫か!?」
『だ、大丈夫です。落ち着いてきました……』
次の瞬間、緑谷さんがえらく勢いよくボールを投げた。めっちゃ飛んできますね。……爆豪さんの顔がめちゃくちゃ驚愕してえらいことになってますが顔芸すごいですね。
ああ。もう私の番……。
『えい』
「約2km」
「「「やべー!?」」」
ゲートに向かってペッと投げると、歓声が上がる。ちなみに、「どこに転送した?」と相澤先生に問われたので「私の自室に」と返答した。
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第六種目の前屈は壊滅的でしたが、第七種目の持久走はトップでしたよ。だってスタート地点とその先をずっとワープし続ければ良いんですから。ようは白線跨ぎゃこっちのもんですよ。
その後、除籍は先生が生徒を鼓舞する嘘と明かされ、麗日さんや飯田さん、緑谷さんはずいぶんと驚き、八百万さんは「あんなの嘘に決まってるじゃない……少し考えればわかりますわ」と言っていたが、多分本気でしたよねあれ。何かしらに期待をしてあとから嘘と言い換えましたよね。うちの兄さんと真反対のことしてるじゃないですかやだー。
初日の下校時間、門まで歩いていると、緑谷さんたちご一行を発見した。あちらも私を見つけたようで、「君は、転送男子!」と飯田さんに声を張り上げられた。ちょっと周りを見てください。
なぜかわざわざ私のところに駆け寄ってきた三人は私の名前を聞きに来たようで、どうもこんにちはと告げたあと「練紅明です」と言うと「こうめい……孔明かな?」と緑谷さんに漢字を問われた。
『紅に明るい、ですよ』
「ヘェ! 明るい……」
『私自身なんで『明』が名に入ってるかよくわかってませんけど。私どちらかと言うと『暗』の方です』
「いやしかし名は体を表すと言うだろう!」
「そのうち明るくなるよ!」
『えぇ……そのうちとはまた不明確的な……』
駅まで一緒に行かないかと誘われるも、『すみません、車が待ってますので』と黒塗りのベンツを指差すと「「「ベンツ!」」」と声をあげられた。……ベンツおかしいですかね?
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ようやく帰宅。ベンツの中には紅炎兄さんと白瑛さんが既に待機していましたよ。
リビングにて制服もそのままにべしゃっとソファーに倒れ込むと駆け寄ってきた紅覇が背に飛び乗り、『ぐぇっ』と蛙の潰れたような声が出た。どうやら紅玉も乗っているようである。
「明兄おかえりぃ!」
「お、おかえりなさい紅明お兄さま……!」
『はい、ただいま帰りましたよ……』
そのまま横になっていると着替えたらしい兄さんがリビングに入ってきて二人はいっせいにそちらへ向かっていった。悲しきかな、天使は私より紅炎兄さんの方が好きらしい。……悲しきかな。
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翌日の通常登校、午前中は普通のカリキュラム。なんと言うか、普通過ぎて眠気が凄かったです。あれですかね、昨夜も軍事書を読み耽っていたからですかね?
いやしかし、流石にプレゼント・マイクの英語は喧しくてうつらうつらとも出来ませんでしたよハァ……。まぁうつらうつらしてるなんて兄さんにバレたら張り倒されますけどね。悲しいことに。兄さん厳しすぎる。いい人なんですがねぇ……。無表情で読み取りづらいだけでむしろブラシスコンですよ。あれで内心紅覇と紅玉見て「天使」とか思ってんですよ。あぁ、私もか。恐らく兄さんの対象に私も入ってると思いますが、流石にね、天使はないでしょうよ。あったら逆に気持ち悪いです。
そんなことを一人思いながらもそもそと弁当に手をつける。従兄弟’s母、玉艶さんの手作りである。美味しい、そう、とても美味しい。ちなみに、白瑛さんも料理はなさる。がしかし、もうあれは食べる生物兵器ですよダークマターですよ劇物ですよ。あれは毒だ、毒が入っている。一回「紅明くんの為に作ったスタミナ弁当です!」とじゃじゃーんなんて効果音と共に渡された弁当箱の中がガタガタ揺れ……暴れ動いてましたもん。何入れたの怖い。
普通に食べれるものってすごいなぁと将来義理の姉となる彼女のせいでそう思わずにはいられないんですよね。あれで頑強な胃を持つ兄さんが何度病院に送られたか。なぜ毎回食べるんですか紅炎兄さん。
さっさと弁当箱を片付けたのち、机の中に突っ込んでいた軍事書を開く。これの内容は興味深く、兵法も古いものだから工夫も多彩で色々と発想の役に立つ。
どんどんのめり込んで無言でぱら、ぱら、と捲っているとオールマイトがいきなり「わーたーしーがー! 普通にドアから来た!」と扉を勢いよく開けたものだからハッと意識が浮上した。
時計を確認するともう午後のヒーロー基礎学が始まる時間帯でもうそんな時間かとぱらぱらぱらと残りを流し読みしてからぱたりと古錆びた本を閉じた。
前の席の八百万さんから謎の視線をいただき、『どうかしましたか』と問い掛けると、わりと意外な返答がやって来た。
「その古い本……良ければあとで貸してくださりませんか?」
『えー……っと、これですか?』
机にしまった先程の本を出して見せれば、「それです」と興味深そうに頷かれた。
『私は別に構いませんよ。……理由を聞いても?』
「それはですね、私の個性は『創造』ですので、知識を蓄えておく必要があるのです」
『なるほど……』
どうぞ、と手渡しすると八百万さんからありがとうございますと返事をされるも、最後に付け加えておく。
『……一応、これ、兄に借りたものなので……汚されたりすると……その、なんというか……非常に不味いです、私が。私の体が。意識が飛ぶまでプロレス技かけられますので、くれぐれも、くれっぐれも、大切に扱ってくださいね。書庫出禁にされてしまいますので、私が。お願いしますね』
「は、はぁ……わかりましたわ」
のち、ちょっとしょぼくれているオールマイトを横目にヒーロースーツのケースを持って教室を出た。すれ違い様「私の話ぐらい聞いてくれてもいいじゃないか練少年……」と言われたのであぁしょぼくれているのは私のせいかと思い至った。
『……オールマイトさんって、兄さんの言う通りちょっとめんどくさい御方なんですね』
「ちょっと練少年酷くないかな!!!?」
『えぇ……ごめんなさい、悪気はないです』
「そんなあからさまにめんどくさいって顔しないでくれよ!」
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ヒーローコスチュームである白の着物に黒の羽織を金輪で結びつけたあと肩から下げ、半分の仮面を顔に、黒い羽扇を手に私はグラウンドへとやって来た。
ちらりと周りに視線だけやると、男性陣もわりと露出の多い方がいらっしゃるが、女性陣にはぱつぱつの全身スーツのかたや最早それは着ている意味があるのかと普通の男なら目のやり場に困る服装の方までいる。羞恥心はどこかに置いていかれたのですかね八百万さん。
「あれ、練くん仮面なんだ?」
『……一応のためです。コスチューム、似合っていらっしゃいますよ、緑谷さん』
「そっ、そうかな!!?」
照れる緑谷さんなどどこふく風。のそのそと羽扇を手に腕を組みながらその場から移動する。オールマイトの実践形式はヒーローチーム敵チーム、それぞれペアで別れて行うらしい。
『…オールマイトさん、A組は21人なので一人余りますが……』
「うんそうだね! どこか一組三人チームになるわけだ!」
そう言うことらしい。ルールはまぁ核に見せ掛けたハリボテを敵が守りきるかヒーローが奪取するか、それかお互い確保テープを所持しているのでそれを相手に巻き付けるか。単純な話ですね。
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第一試合は緑谷、麗日のヒーローチームバーサス爆豪、飯田の敵チーム。爆豪さんが飯田さんの指示を無視して動いたり完全なる緑谷さんへの私怨だったり核を背の後ろに守る飯田さんに対しての麗日さんの無謀な瓦礫攻撃が行われたり爆豪さんも緑谷さんも建物の中だと言うに大技ぶちかますなどこいつら本当にヒーロー目指してんのかよと言いたくなるも、講評時、八百万さんが全てそれを言い当てていた。ちなみにベストは状況設定をよく理解し馴染んでいた飯田さんである。オールマイトさんもお役ごめんですかね、と羽扇で口元を隠したとき、一通り喋り終えた八百万さんがこちらに視線を寄越した。
「常に下学上達! 一意専心に励まねばトップヒーローになど、なれませんので!
……ところで練さん、あなたなら今回の組み合わせ、どう動くのがベストだと思いまして?」
『そこで私に振りますか』
一気にクラスの注目を浴びた私は『うーん、そうですねぇ……』とどこか気の抜けたように返事をして、相変わらず羽扇で口元を隠しながら言葉を紡ぐ。
生憎と、そこまで深い作戦は立てられませんでしたけど。
『私は今回、敵チームは攻守を間違えたかなと判断しました。機動に優れていらっしゃるのはどう見ても爆豪さんより飯田さんですので、彼が確保テープを手にお二人を相手取れば良かったかと。人体の目で追える速さだとしても、いきなりなら体は動けませんしね。とっさに動いたとしてもどうしてもタイムラグが起きます。万が一飯田さんが抜けられたとして、爆豪さんが核を守っていれば、広範囲の爆撃によりヒーローは近付けず、恐らく鉄壁だった筈。爆発による核への引火も考えられますが、彼は見ていて地の頭脳と判断力、反射神経にとても優れた御方だと思うので、そうなることはないでしょう。敵チームはそれこそ押さえればもっと短時間でケリがついたとおもいますよ、安全にね。
ヒーロー側も同様です。核までの道のりで敵と出会ってしまったなら相手を無重力にし無力化してしまう麗日さんが適役でした。今回、麗日さんではなく緑谷さんが核を取りに行けば彼の個性を発動して猛スピードで核に迫れたはず、もっと良い結果だったと思われます。第一試合は誰がベストを取っても可笑しくなかった個性の相性でしたけど。
別に今回が悪かっただけ、訓練ですのでこれから直していけば良いと思うのですが……』
何か異論などはございますか? と一同に視線をやると皆同じようにふるふると首を振る。意見を言ってくださって構いませんよ? と再度問い掛けてみるも反論はなかった。
オールマイトは「そこまで深く考えないよ! 普通!」と顔に表していらっしゃった。そんなもんですかね?
次は私と葉隠さん、尾白さんの敵チームバーサス障子さん、轟さんのヒーローチームの試合です。
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Noside
別のビル棟へと移動した紅明、葉隠、尾白はビルに散らばり、轟と障子がその外で待機している。
モニタールームにて、切島がオールマイトの横で問い掛けた。
「なぁオールマイト先生、あの練ってやつ、何者なんだ?」
「ん? 何者って?」
「なんかやけに戦法に詳しいっつーか。初めて見た個性なのに理解力がすげぇなって」
切島の疑問はクラスメイトの疑問だったらしく、うんうんとうなずく1-Aにオールマイトはうーん、と少し唸ってから答えた。
「彼はね、聞いた話じゃどうやら中学までの勉強を小学校二年生の時点で終わらせたらしいんだよね」
「!? まじすか!? アイツ天才じゃないっすか!」
「それがそうでもないらしくて……そんなに早く勉強を済ませたのは自分の好きな読書を勉強に時間を取られず存分にしたかったらしい。幼い頃から軍事書や兵法の書を読み耽っていたようだしね」
一同はどこ情報だよ……、と思わなくも無かったが、時間になり開始された訓練に目を向けた。
中に入ろうとした障子を手で制し、轟がビル内に一歩入っていく。その右足の一歩の瞬間、ビルの表面がバキバキビシッと凍り付く。その氷の寒さでモニタールームすら気温が下がったほどだ。
轟が悠々とビル内を歩き、核のある部屋へと入っていく。その部屋には足元の凍った尾白と、核の側で身動きの出来なさそうな練。葉隠はまた別の所で張り付けにされているようだ。
「仲間を巻き込まず核兵器にもダメージを与えず尚且つ敵も弱体化!」
「最強じゃねえか!」
焦りの浮かぶ尾白の横を通りすぎた轟はソッと核へと手を伸ばす。
「ヒーローチーム、ウィン!」
呆気なく終わったそれに轟の最強説が生まれたわけだ。
**
紅明side
なんとか無事に訓練を終えて、帰宅の時間。他の皆さんは反省会を行うようですが、私はとっとと鞄を持って帰路へつかせて貰いましょう。
教室を出て廊下に踏み出したとき、後ろから「おい」と声を掛けられた。振り向くとそこにはちょっと不機嫌そうな轟さんが立っていた。
『……どうかなさいましたか?』
「……訓練の最後、手ぇ抜いたろ」
彼の言葉に若干驚いてから『まさか』と微笑む。クッと眉を寄せた彼には悪いが、話す気にならない。
ガリガリと鞄を肩に掛けていない方の手で頭を掻く。
『……えーっと、その、用件はそれだけで?』
「……ああ」
『そうですか……それでは、また明日、轟さん』
ぺこりと気持ち程度のお辞儀をしてから背を向ける。
なかなかどうして鋭いのだろう。今更転送しても訳もなかったと判断して無力を装ったと言うのに。
これはまた考えねばなりませんねぇ、と考えながら再び髪を掻いて、校門に差し掛かる。そこで多分聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうと私は思いますね。
緑谷さんは元々無個性でオールマイトの個性を受け継いだこと。
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翌日、のそのそと校門に向かうとマスコミが群がっていた。なんだなんだとそれを他人事のように眺めながら影を極限まで薄くして通り抜けようとするもそりゃまあ当然というか、事も無げに捕まった。
「オールマイトの……あれ? どこかで見た顔の…」
『きのせいですよたぶん』
「っていうか、どこかでモデルでもしてるのかしら? ずいぶん爽やかなイケm」
『そんなことないのでとおしていただいていいですかねむい……』
眠気が酷すぎて舌足らずになってしまったが、どうにかその場を切り抜け下駄箱に到着する。がちゃりと下駄箱の扉を開けると何かが数枚はらりはらりと落ちてきた。
『? なんですかね?』
しゃがみ込んで二、三枚の手紙をよく見ると可愛らしい便箋にこれまた可愛らしいシールが貼ってあり、これはまた物好きな……と少し離れた下駄箱で静かにきゃあきゃあと騒ぐ女子グループの声を耳に靴を履き替える。
差出人の名前を見るとA、B組にはなかった名前なので、恐らく普通科かサポート科か商業科かのどれかだろう。はてさて関わりなんてあっただろうか、と首をかしげながら進んで行くと後ろからポンと肩を叩かれ、過剰に反応してしまった。
「よお!」
『うっ、うわぁっ!? って、上鳴さんでしたか……驚かせないでくださいよ……』
「わりわり、で、練はなに持ってんの?」
私の持つ手紙を覗き込んで来た上鳴さんにあっと制止をかけるまもなく、可愛らしい装飾で気づかれてしまったらしい。
丁度クラスに着いた。彼が何か言う前にそそくさと教室内に入るも、そのあとを彼は猛スピードで追ってきた。
「練待てゴルァ! なんだその手に持つ可愛らしいシールの貼られた手紙は!」
『ひ、う、うわあああ! こ、こっち来ないでください!』
「なんだその三枚の手紙はぁ!」
『気のせいです上鳴さんの幻覚です!』
ばたばたと教室内を駆け回る私たちにクラスメイトは少し不思議そうにしていたものの、上鳴さんの発言で一部の男子が目の色を変えて「どう言うことだ練んん!!」と感化され追いかけてくる。ひいい。
ひいい、気のせいです気のせいです! こっち来ないでください! とちょっと涙目になりながらぜーはー息を切らして走っているとついに捕まってしまった。
瀬呂さんと上鳴さんに両脇を抱えられ、峰田さんがパシッと手紙を私の手の中から奪い取る。
『ちょ、峰田さ、ぜー、返し、はー、てくださ、げほっげほっ』
「おいおい……練お前大丈夫か……?」
『そんな心配、するくらいなら、げほげほ、助けて、くださいよ切島さ、ん……!』
「体力ねぇな」
『あのですね、元引きこもりに、体力求め、ないで……いただ、け、ますかね……!?』
**
学級委員決めも無事緑谷さんと八百万さんに決定しましたが昼休みのマスコミ侵入騒動で緑谷さんは何か思うところがあったらしく、飯田さんに委員長の座を譲った。
八百万さんのメンツどうなるんですかねこの場合……。
.
翌日の五時限目、今回のヒーロー基礎学は相澤先生、オールマイト、そしてもう一人の三人体制で見ることになったようだ。なった、だからオールマイトに何やらあったらしい。
瀬呂さんが「はーい! 何するんですかー!?」と挙手して問い掛けると、相澤先生はなにかしらのプレートをデデンとつき出した。
「災害水難なんでもござれ、レスキュー訓練だ!」
途端にわっと騒ぎ出す級友に『ここぞって感じの活かせる個性をお持ちの方もいらっしゃいますしね』と微笑む。すると八百万さんが「活かせると言えば練さんもですわよ」と返され、『そうですかねぇ……』とガリガリと頭を掻いた。
結局、この騒ぎは相澤先生の「おいまだ途中」でぴしりと中断されたが。今回、コスチュームを使わなければならないと言う強制はないようですが、まあ一応のため着替えておきましょうか。
校舎を出てバスへと向かう途中、後ろで麗日さんと緑谷さんの会話が聞こえてきた。
「ん。デクくん体操服だ。コスチュームは?」
「戦闘訓練でボロボロになっちゃったから……」
緑谷さんは体操服らしく、あぁ……と納得する。まあ確かに、焦げたり焼けたり千切れたりしてましたもんねぇ。
丁度隣に爆豪さんが口を一文字に引き結んでいたので、そちらには目をやらず、羽扇で口元を隠しながら一言。
『言われていらっしゃいますよ』
「うるせえ黙れそばかす野郎!」
『おや、なんのことやら』
ガルルと怒鳴った爆豪さんに出来るだけ顔を遠ざけて視線をやらずにすっとぼけててっくんてっくん。素知らぬ顔で通していると後ろから「くそ野郎が!」とただの悪口が飛んできた。子供ですか。
前方にて飯田さんが「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列に並ぼう!」と仰っていましたが、実際入ってみると市営バスのようなものでしたので、わりとショックを受けていました。
轟さんの隣にお邪魔させていただいていると、みんなの会話が個性へと移り変わったようで。
「派手で強えっつうと、やっぱ轟と爆豪と練だな」
「ケッ」
意外と聞き耳を立てていた爆豪さんが喉を鳴らすと蛙吹さんに「爆豪ちゃんキレてばっかで人気でなさそ」と辛辣な一言を投げ付けられていた。それでキレるからまたからかわれる矛盾サイクル。
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってスゲーよ」
『……確かに』
「てめぇのボキャブラリーはなんだコラころすぞ! 紅髪野郎も同意してんじゃねえ」
『あぁ……その、えーっと、何て言うか、……うちの兄よりは全然怖くないですよ、はい』
「だとコルァ!! フォロー入れんじゃねえ!!!」
耳を塞ぎながらそう言うとまた怒鳴り散らされる。私の渾身のフォローですよ、渾身の。
なんて羽扇を口元にのらりくらりとしていると、芦戸さんが「練って兄弟居たんだ!」と声を張り上げた。
『はい、居ますよ。二つ上の兄が一人、9つ下の弟と妹一人ずつ』
「へー。兄貴どこ校だ?」
『兄さんは雄英のヒーロー科にいます。ちなみに、従姉妹の一つ上がここのヒーロー科二年』
「ヒーロー兄弟だった!」
わあわあと騒ぐなか、兄がどれくらい怖いのかを上鳴さんに問われ、『ふむ』と羽扇を抱え直す。
『そうですねぇ……立ってる威圧感だけであぁこれ正座しないとヤバイやつだ、と感じとれる程には怖いです。私はとりあえず兄が口を開く前に謝ります。悪くなくても謝ります』
「エピソードとかあるかしら」
『……んー、恥ずかしながら私とにかく朝が起きれなくてですね。ふらふらしながら寝ぼけ眼で廊下を歩くんですよ。今日は出会い頭ストレートパンチからのラリアットを食らいました』
首をさすさすと手で撫でると全員から怖いんだねえみたいな視線をいただいた。これいかに。
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U(ウソの)S(災害や)J(事故ルーム)、本当にUSJみたいでしたよ信じられない流石雄英。
スペースヒーロー『13号』、何を思って13号にしたのかさすがの私もさっぱりですが、増えるお小言と染み入るいい話を聞かせていただけました。私たちの個性は『人を助けるためにある』、いい言葉ですね。カッコいいです13号。
さて、レスキュー訓練が始まるのかと気を引き締め、羽扇を握り直したところで、相澤先生が叫んだ。
「ひとかたまりになって動くな! 13号生徒を守れ!」
下の広場に現れた敵に、その殺気にぞわりと悪寒が背筋を走る。多分きっと恐らく敵。切島さんが「入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン!?」と叫ぶが、そんなわけないだろう。
「動くな! あれは敵だ!」
**
相澤先生が戦いに出たそのうちに学校に帰る手筈だったのだが、見事に敵のワープの個性に分断された。火災エリア。これまためんどくさいところへ飛ばしてくれましたね……。
周りを見渡すも私一人で、周囲は燃え盛る炎と敵ばかり。一対複数とかどこの無理ゲーですかもー。
羽扇で口元を隠しながら、はあと溜め息を吐く。
『……はあ、私の個性は戦闘向きではないのですが……』
私の独り言を聞いた敵がにやりと笑い、聞き取れる訳もない汚い罵詈雑言を並べて一斉にとびかかってきて。
それを眺めながら、再度溜め息を吐いた。
『まあ、戦えないとは言って無いんですが』
私へと向かってきたその敵の拳をワープで、転送し、向かい側に刃物を持って刺そうとしていた敵に終点を置く。するとあら不思議、私をすり抜け向こう側の味方に攻撃が当たってしまう。それを彼ら全てに使って、残りの敵も同じように。最後の一人は袖に忍ばせていた短刀で太股の腱を裂いて。まあ、全滅ですよね。
一応確認の為周囲を見渡すも影も形もない。ふむ、と頷き、羽扇の持ち手の装飾をいじり、位置情報を認識。とりあえず元の広場へ向かいましょう。なにかすごい音してしましたし。
.
私が広場に駆け付けたときには全てが終結しており、オールマイトや他の先生方がいらしていた。
とりあえず全員の安否確認を行い、大怪我を負ったのは緑谷さんだけだったようだ。ほっと息を吐き、連れられるままに歩いていくと、常闇さんに声を掛けられる。
「お前はどうやら無傷のようだな」
『はい。そこそこ敵が弱かったのもありますが、数が少なかったですしね。なんとかなりました』
「戦える質か?」
『そうですねぇ……あまり戦闘には向いていないと思います。後方で作戦考えるぐらいしかできませんよ、私』
「謙虚な」
『そんなことはないと思いますがねぇ。なんせ9つ下の弟と本気の腕相撲して負けるような私ですから』
「……それは」
『そんな目で見ないでくださいよ……』
**
本日、臨時休校。昨日の敵の侵入でパニックを押さえるのと、先生方の会議のために休日となった。そこそこ気が立っていたわけでもなく、ずいぶん落ち着いている。まぁ、読書の時間が増えた訳で。
昨日帰宅してから速攻で食事をし、風呂に入り甚平に着替え、異母弟妹と少し戯れてから早速書庫に籠ってまだ読めていない軍事書に手を出したのだ。しかし如何せん量が多く、また、興味深いこともあり時間すら忘れ熱中してしまう。
巻物や書物に埋もれながら寝っ転がっていると、いきなりバンと扉が開かれた。
「紅明! っお前! 今何時だと思っている!?」
『うわあっ!? えっ、兄さん!? どうしましたか!? 今何時ですか!?』
「もう登校する時間だぞ! 全く、時間を考えろ!」
ええっ!? と埋もれた書物から飛び起き、『私は丸2日分書斎に籠っていたんですか!?』とばたばたと制服を着る。書斎にこもっている間、一回も外に出ていない私の体は少し動かすだけでばきばきと嫌な音がした。お手洗いは書斎に備え付けられていたので心配はなかったが。
時計を見るといつも出発する時間を少し過ぎていた。うわあこれはヤバイ。
部屋に戻って慌ててズボンを履き、黒のTシャツを来てジャケットとネクタイを手にワイシャツに袖を通した所で唐突に兄に俵担ぎにされて家を出る。兄さん苦しいです。
『紅覇と紅玉は』
「もう学校に行った! 全く、飲まず食わず風呂に入らずとはどういうことだ紅明!」
『ごめんなさい!』
車の扉が開けられたかと思うと私は勢いよくそこへ放り込まれる。その際ゴツンと扉の縁に頭をぶつけ、眠気も相まってか、私は意識を無くしてしまった。
あぁ、車のソファが柔らかいです。
.
次に目を覚ましたのは唐突な浮遊感のせいだった。次の瞬間には私は後頭部を強打し、『ぃだっ!』と声を漏らす。
寝起きでぼやけた思考回路をフルに回して倒れたまま視線を動かし周りを見てみると轟さんや八百万さん、その他のクラスメイトたちが唖然と私を見ていた。とりあえずフローリングが冷たくて気持ちいいです。
のっそり起き上がって扉の方を見ると間髪言わずに上履きが飛んできて顔面に炸裂した。
『ぶっ!』
痛い顔を再び放り込まれた扉へ向けると次は顔面にジャケットとネクタイが飛んできた。慌ててそれをキャッチし、もう一度扉に顔を向けると兄が威圧感と怒ってる恐ろしい雰囲気を発しながら私を見下ろしている。
兄さんはホームルームをしていたらしい相澤先生に「遅れて申し訳ありませんでした」と口頭で謝罪をする。
「……謝罪は弟の方から聞く。お前こそ遅刻じゃないのか、練」
「先生には既に連絡してあるので大丈夫です、鞄は教室なので」
あぁ駄目だ眠い。しかしここで寝るときっと兄さんの拳が顔面に飛んでくるに違いない。……目をあけて真面目な顔して寝たらバレないですよね。最近習得したんですよ、目を明けながら寝るの。
座り込みながら真面目な顔で寝ていると「寝るな!!!」と言う怒声と共にバシンと強烈な痛みが頭に叩き込まれ、追い討ちとばかりにバキッと頬に拳が飛んできた。そのまま胸ぐらを掴みあげられる。あ、寝てるのばれた。
『いてて……やっぱりバレましたか。流石兄さんです』
「褒めるな!」
『いやね、最近私目を開けたまま寝られるようになりまして』
「威張るな! とっとと席に着け!」
『腰を強打して動けないので無理です』
「嘘をつくな!!!」
『あ¨ーーーーーーー!』
キャメルクラッチをぎしぎしと決められたあと、兄は私から手を離し、「失礼しました」と相澤先生に腰をおったあと目にも止まらぬ速さで廊下を駆けていった。
やれやれと席に着くと相澤先生に「お前昼休み職員室来い」と告げられる。それに『わかりました……』と最初に強打した頭をさする。
ぷちぷちと服のボタンを止めてネクタイを閉め、ジャケットに袖を通した。
**
休み時間、いまだに痛む頭を擦っていると切島さんや砂藤さんが声をかけて来た。
「よぉー練、頭大丈夫か? めっちゃ叩かれてたけど」
「お前の兄ちゃんこえーな……」
『ええ……』
切島さんに慣れてるので大丈夫ですよ、と返すと緑谷さんが「どうして遅刻したの?」と問い掛けてくる。
それにたいしてはペットボトルのお茶を口に流し込んだあとに答えた。
『えぇとですね……実は一昨日の夜から飲まず食わずで書斎に籠っていまして……』
「ショサイ!!!」
「飲まず食わずってマジかよ!!?」
『マジです……。それから登校時間までずっと本を読み耽っていたので、遅刻しました。二徹してるので正直眠いです寝たい』
「本音炸裂したな……」
.
聞くところによると、雄英体育祭が近付いているらしい。敵に襲撃されたばかりじゃないですか、と上鳴さんに物申すと例年の五倍警備を固めるらしい。あれか、雄英は敵に襲撃されても揺らがない磐石の姿勢が整ってるんだぞっていう主張的な。
個性が溢れて人工が収縮し形骸化したかつてのオリンピックに代わるものが本校の『雄英体育祭』。そりゃあ敵ごときで中止できるものでもないですよね。全国のトップヒーローが見るんですし。卒業後サイドキックに雇ってもらえるように、
『年三回のプロに見ていただく機会ですからね』
まぁそういうわけでして。
「なんだかんだテンション上がるなオイ! 活躍して目立ちやぁプロへのどでけぇ一歩を踏み出せる!」
のりのりで盛り上がる一方を微笑ましく見つめて切島さんから上がった声に確かに、と頷き席を立つ。安いかつとても美味しいご飯を食べに食堂へ向かうためだ。
出口へ向かう途中、「燃えるのは当然だろう!」とグッと身を縮めて緑谷さんに力説する飯田さんを蛙吹さんが「飯田ちゃん独特の燃え方ね、変」とおっしゃっていらしたので『それも彼の一種のいい個性ですよね』と横切るときにぽつりと呟いておく。
くるると鳴ったお腹に苦笑して授業は寝てばかりなのに私も腹が減るんだなと実感する。が、実質一昨日から食べてないようなもんなのでそれも当たり前かと納得した。お腹空きました。
財布がポケットにあることを確認し、廊下に出て右を向いたとき、左側から女子数人がぱたぱたとこちらへ駆けてきた。まぁどうせ通りすぎるだろうとタカをくくっていたのだが。
「れ、練くん!」
『…ん? はい?』
意外なことに、彼女たちに呼び止められてくるりとそちらへ向き直る。
三人の女の子のグループだが、一人の女の子を他が後押ししているように見えた。
「あの、その……いきなりごめんね、ほとんど面識ないけど……」
『? ああいえ、別に構いませんが、どうなさいました?』
首をかしげて問い掛けると「お、おおっ、お昼ってもう食べた!?」と思いきり目を逸らされた。ふいと逸らされた目に私そんなにひどい顔してますかねぇと若干ちょっと傷付きながら『恥ずかしながら、まだでして』と返すと、パッと顔を明るくされる。
「ほ、ホント!?」
『ええ、ホントですけど……』
「じゃあっ、これっ、もらってくれないかな!? ほんと、美味しくなかったら捨てていいから! ホント! あ、あの、その……それで……いや、何でもないっ! 練くんじゃあねっ!!!」
ばっと胸元に押し付けられた包みを半ば反射で受け取り、矢継ぎ早に告げてぱたぱたと言うかどどどと言うか、そんなスピードで駆けていった彼女を追い掛けるように付き添いの二人も走っていく。『え、ちょっと、』と引きずり出した私の声は聞いちゃいない。
『……えぇと……』
ばりばりと頭を片手で掻いて、『食べきれますかね……』と恐らく包んであるのは重箱だろうと当たりをつけて、教室に入るべく後ろを振り向いた瞬間気付いた。ここ、1-Aの扉の真ん前である。
もちろん、中は静まりかえってほとんどが私を凝視していた。幸い、外に出ている人も居るようだが、多いっちゃ多い。
ちょっと不信に思いながらびくびくしつつ席につく。その行動すら凝視とはこれいかに。
机に包みをおいて向いていく。予想通り重箱、かつ三段だった。ぱか……、と一段目を開けて、……ぱこ、と蓋を閉じる。うん、絶対食べきれない。
深呼吸してからもう一度開いた。肉でした。彩りと言うかバリエーションありますけど、カツとか蒸してあるのとか焼いたやつとか。ちょっと私に優しくない、最近の私の胃に優しくない。再び蓋を閉めて一段目は諦めた。横に避けて二段目、彩り豊かな野菜。ほっと息を着く。三段目は四種のご飯。もう一度息を着いた。
その間ですら凝視されるのだから困る。
『……すみません、誰か一段目食べていただけませんか』
その瞬間ほとんどの方がばっと寄ってきて肉の取り合いが始まる。私はその光景を横目に野菜スティックをぽきぽき。
『世の中親切な方もいらっしゃいますね』
そう呟いたら上鳴さんからパンと頭をはたかれた。
.
はたけカカシ転生inMHA。カカシ先生がナルト世界で寿命を全うしたらヒロアカに記憶を持って転生した話。
以下設定
畑 カカシ
雄英で非常勤講師をしている忍者ヒーロー。ヒーローネーム『カカシ』。個性『忍』
前世の記憶持ちなので無双できちゃうほぼチート忍者。政府お抱えの時に左目を失いこの世界のオビト死亡時にオビトの個性『写輪眼』をリンの個性『医療』にて移植してもらったので一応今世も写輪眼持ち。前世じゃ大戦後になくなったからなぁなんてしみじみしながらオビト、リンの墓に毎日朝早くから訪れては集合時間に遅刻している。時間にルーズ。相変わらず言い訳は適当。相澤、山田の元担任で相澤の天敵。相澤たちの担任を受け持ったのを最後に非常勤講師に移る。相澤たちが最後の生徒であり、最初に受け持ったクラス。それ以前のクラスは全て前世と同じように鈴取り合戦をしては容赦なく除籍にしていた。相澤たちのクラスも半分除籍にした。除籍回数は相澤のほぼ倍。
非常勤講師になってからは毎年一年生に変化して一学期間だけA組に送り込まれている。優秀かどうかを見るための評価と監視。しかし今年度のA組監視はUSJの騒ぎにより正体を表すことになった。教師以外の上級生A組は毎年誰がカカシか探している。
「ま!」をよく言う。雄英で教師をする前は政府直属暗殺部隊(暗部)にいた。『狼(ロウ)』で通していた。面も着用。
ヒーローとしては有名だが、ヒーローランキングには参加していない。実はプロヒーロー「ヘッジショット」に憧れられている。ちなみにマジモンの忍者である。
生徒の前で堂々と18禁官能小説を読む。生徒の前では少し忍べ。
基本は額宛で左目を隠し、口符着用。服装は前世の上忍時スタイル。言ってしまえば前世と変わらない。かなり真面目な場面じゃ六代目火影の服装になる。スーツも着る。
生徒たちに常々『仲間を見捨てるやつはもっとクズだ』と説いているが、その前の掟を守らないやつはクズだ、は誰にも言っていない。みんなかなり気になってる。
.
訂正。
ヘッジショットではなくエッジショットです。
今日は雄英高校の入学式である。雄英の校長やら同僚やらに連絡を入れてから額宛と口符を着用して口を開いた。
『変化の術!』
ぼふんと音を伴って出てきた煙を掻き分けて、ふむふむよしよしと鏡を見て満足気に頷く。目の回りや頬には紫色がくっついていてやっぱり変装はこれだよなと数年ぶりのこの姿に微笑んだ。
今日から俺は一学期間『写家 スケア』として学生を評価しないとなあ、そんなことを思いながら以前この姿でナルトたちで遊んだのを思い出しながら、あれよりもいくばくか幼くした16歳のスケアの容姿。まぁ設定はあのときと同じようにやるわけにもいかない。今年も上級生は気付かないだろうな、とくつくつとほくそ笑み、雄英の制服を身に纏って家を出て、瞬身の術で校内へと滑り込んだ。
**
緑谷side
相澤先生にいきなり始められた個性把握テストに除籍にならなくて本当によかった……と安心して教室に戻ったところで『指、大丈夫かい?』と優しく声を掛けられた。振り向けば少し心配そうに微笑むテライケメン……!
「だっ、だだだ! 大丈夫だよ! 指! リカバリーガールに治してもらえたから!」
『そっか、よかった』
ああ、俺写家スケア、よろしくねと伸ばされた手を写家くん、と覚えながら握る。見た目のわりにガッシリした手で意外だったが、まぁそんなこともあるよなあと納得して少し談笑してから僕は下校準備に向かった。
背後でニコニコと微かに意地の悪い笑みを浮かべた写家くんには気付かずに。
.
潜入して数日、最近気になる生徒が出てきた。緑谷出久。実技入試のときや個性把握テストの時もそうだったが、決定的なのは昨日のヒーロー基礎学だ。オールマイトの担当の教科であり、ツーマンセルの対戦をした実技授業の時、彼は爆豪勝己との幼馴染み対決なんて生易しいものではない戦いを繰り広げたとき、“自ら”腕を捨てて天井を殴り破壊した。自己犠牲が酷すぎる。授業は真面目に聞き、きちんと受けているようだが、どうにも…。
と言うわけで、昼休みの談話室にて。スケアのままオールマイトを呼び出した。表向きはちょっとした相談ということになっている。もちろんオールマイトも写家スケアが畑カカシということは理解している筈だ。パタンと扉を閉めて入室してきた彼に微笑み、ドロンと変化の術を解く。
『オールマイト、いきなりで申し訳無いんだけど、すこーし聞きたいことがあってね』
「え、はあ…」
ちょっとぽかんとしたトゥルーフォームのオールマイトに『緑谷出久との関係性はどうなんですか?』といきなり核心をつくことを言えば、ガタタッと体を揺らして「なっ、ななな、なんのことでしょう!?」と盛大に動揺してくれた。
『いやぁ、ねー? ほら、評価するにも個性の事もちゃんと把握しなくちゃならないでしょ? こう見えても俺、『情報のスペシャリスト』なんで、こういう情報漏れは俺の信頼に響いてくる訳ヨ。とっとと吐いてもらおうじゃないの、昨日のアナタと緑谷の会話を踏まえて、彼の個性とアナタの関係性』
暗に昨日、爆豪を追い掛けて校舎の外に出た際の緑谷とオールマイトの会話を聞いてましたよ、と伝えるとオールマイトは観念したように溜め息を吐いて「わかりました…」と言葉を漏らす。
「しかし、これから話すことは一切他言無用でお願いします、カカシ先生。これは校長とリカバリーガールと塚内くん、グラントリノに、緑谷少年しか知らない最高機密事項なのです……」
『あ、そこんとこは大丈夫。最高機密事項漏らすほど落ちぶれてなーいし。教室の外にも人の気配は無いしね、情報漏れもないから安心してオールマイト』
「……ありがとうございます(……本当に忍者だなこの人)」
『うん、俺忍者だよ』
「ジーザス! 心も読めた!」
オールマイトをひと安心させてから事情を聞くと、流石最高機密事項と言うか、任務的にはSランク並の情報と言うか。オールマイトは数年前の傷が祟って一日何時間しかマッスルフォームになれず、ヒーロー活動も縮小。ここら辺は俺達ヒーロー科の教師も知ってる。そして彼の個性、ワンフォーオール。これは代々受け継がれていて、その個性は無個性だった緑谷出久に引き継がれた、と。
『…なるほど。オールマイト程の力が受け継ぎと言うことが知られると、狙うやつらも出てきますからね。文句なしの最高機密だな』
「理解していただけてよかったです……」
それじゃあ、ありがとうございました。とスケアになって談話室を退室しようとしたら、いきなり警報が鳴りだし<セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください>と言うアナウンスが響く。セキュリティ3って言うと。
『校舎内に誰かが侵入してきたのか…今朝のマスコミですかね?』
返事を待たずして窓を見ると、うわあいるいる大勢の報道陣。大方オールマイトの授業風景を取材したいんだろうなあと考えてからじゃあ俺ちょっと行ってきますねと談話室をあとにした。
変化の解き、瞬身の術でやって来たのは報道陣の目の前。突然現れた俺に報道陣は「ああ! カカシだ!」「あの! 写輪眼のカカシ!」「あれでオールマイトよりも年上!? 若っ!」と声が上がり、一気に注目を浴びる。忍って注目浴びちゃダメなんじゃなかったかな。若いのはチャクラコントロールの賜物だよ。
『はいはーい、押さないでねー。素早く校内から出てってくださーい』
途端上がるオールマイトを取材させろと言うオールマイトコールが俺に降りかかる。全く、そう言うのは校長に言ってもらわないと。俺じゃあどうしようもないんだけど。
『とりあえず、これって一応不法侵入になるんで早い内に出た方が身のためですヨ』
この人ことで渋々帰っていくのだから本当に、ね。とりあえず門が明らかに報道陣以外の手で破壊されていたから報告に行かないとなあ。
朝からオールマイトが事件に引っ張りだこだったのを人気者は忙しいねぇとほくそ笑みながら、USJへと向かうバスに乗っている。
スケアとして入学してから上級生にはバレちゃいないし、なんと言うか幸先が良い。がしかし、今回のUSJ訓練に関しては嫌な予感しかしないわけである。こういうときに限って俺の嫌な予感ってよく当たってくれちゃうんだよね。
轟の隣に腰を下ろしてバス内で交わされる会話に耳を澄ました。
「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪だな」
「けっ」
「爆豪ちゃんキレてばっかだから人気出なさそ」
「んだとコラ出すわ!」
「ホラ」
「この付き合いの浅さでクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
「てめぇのボキャブラリーはなんだコラころすぞ!」
「低俗な会話ですこと!」
「でもこういうの好きだ私」
「爆豪くん、君本当口悪いな!」
賑やかな会話にかつての幼い第七班とは違う親しみにくつくつと喉を鳴らす。しかし、これから命を救う為の訓練だと言うことを身をもってしっかり知っているのだろうか。分かってるが実感無いんだろうな。
爆豪の喧しさにちょっと迷惑そうな顔をしていた耳郎に『席変わろうか?』と声を掛けるも「いや、目的地すぐだし大丈夫」と返された。最近の子ってしっかりしてるよネ。
この賑やかな会話は相澤の「もう着くぞいい加減にしとけよ…」と言う一言に全員が返事をして終結した。ん? 恐怖政治?
**
USJに到着し、オールマイトが活動ギリギリまで動いたのを耳にし溜め息を吐く。俺一応教師の監視評価も任されてるから、減点になんのかなコレ。
13号の増えるお小言を耳にし、相変わらずいいこと言うね、と生徒たちの一番後ろでコクリと頷くとちょっと照れられた。まあ、仲間を見捨てるやつはもっとクズだしね、的を射ている。
流石プロヒーローはヒーローがヒーローたる重みを理解しているなと感心している時だった。
突如背筋に感じる懐かしい感覚、そう、殺気である。
パッと広場を見下ろすと同時に黒いモヤモヤから誰かが顔を覗いている。言わずもがな敵だ。
「全員一かたまりになって動くな! 13号、生徒を守れ!」
「なんだありゃ。入試みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな! あれは、敵だ!」
ゴーグルをセットした相澤に、ようやく気付いた殺気に生徒たちが顔を歪ませる。恐怖しきった彼らの顔を見てやっぱ実践はまだまだだなと溜め息を吐いた。ちらりと相澤に視線をやられ、『まあ、緊急事態だししょーがないよね』とぽつりと呟き、相澤の元へ足を進める。周囲が視線を寄越してきたが気づかないふりをした。
「カカシ先生、もう評価はこの短期間で終了にしましょう」
『流石に心得てるよ相澤、とりあえず前線に出るけど……』
振り返って生徒を見つめ、『13号の指示に従って避難しなさいよ』とドロンと変化の術を解く。「に、忍者ヒーローのカカシ!」「潜入してたのか!?」と声が上がった。
『13号は避難開始しなさい。あと、学校に電話も試して。センサー対策まで頭にある奴等だから、妨害してる可能性もあるヨ』
「上鳴、お前も個性で連絡を試せ」
「っス!」
ぴょーんと手摺を乗り越え戦線へと突入する。後ろで緑谷が相澤に向かって何やら叫んでいたが、相澤の「一芸だけじゃヒーローは務まらん」と言う一言で静かになった。ま! そうだよね。
.
※自分のキャラクターを使用しています。晒しはお断り。
色化戦会→MHA。転生って訳じゃなく、ただ見た目と設定がまんまってだけ。
騎士 錺(キシ カザリ)。
雄英1-A。お母さん兼お父さん見たいな子。
基本クラスメイトが人として好ましいので大好き。物欲が必要最低限なのでよく誰かに何かを奢っている。自己犠牲が激しい。
基本人当たりの良い性格をしている。ちゃんと話せばとてもいい人。
そして上記を引っくり返すような風格というか威圧感というかそんなのを雰囲気として出しているので初対面はみんなビビる。本人は分かってない。
普通の表情をしているときはなんかみんなに怒ってると勘違いされるほど目付きが悪いつり目。片目に傷があるから尚更。難儀な子。色気の権化。
かなり整った容姿をしている。赤黒色の短い髪に一本のアホ毛、右目の泣きボクロ。左目には縦に一筋傷跡があり、ほぼ動かないし見えない。
制服のネクタイはつけるけど緩める派。ワイシャツのボタンは第二ボタンまで開いてる。鎖骨。ズボンは左の裾をふくらはぎまで折った。
身長185cm。
個性『神速』…意識したモノのスピードを認知できないほどに高める個性。物や自身の体には影響しないが、自身以外の人体に、骨が砕ける等の存大な負荷が掛かる。この個性により錺は不可避の『居合い抜き』を放つ。
使用武器は『太刀』。刃が薄紅色に輝く一級品。
とある大きな事件により両親共に故人。幼馴染みとその両親も故人。
錺は今でも幼馴染みに自分の持ちうるありったけの好意と愛情を注ぎ続けている。
多分体育祭から。(入試〜USJを書きたくないとかそんなんじゃない、そんなんじゃないぞ)
.
最近、USJの敵襲撃とかなんやかんやでびっくりするほど色々あった訳だが。二週間後にあの雄英体育祭が迫ってることに気付いとるんかね。
俺は威圧感や見た目の問題で現在ぼっちなのであまり会話には入らないが、それぐらいは分かるでとちょっと哀愁漂わせた朝休み。
雄英体育祭。かつてのオリンピックに代わる大々的日本の競技大会。日本巻き込んでのビッグイベントっちゅーわけや。もちろん、プロが卵の下見に来て評価をつける、プロヒーローに見てもらえる最大のチャンス。
しかし、今年は敵襲撃の直後。ホンマにやるんかと思っていたが、朝休みのあとのSTで先生が敵への抑止力の為に開催するらしい。ただ、例年の五倍の警備をつけるらしいが。
なるほど、と包帯まみれな先生に若干見た目があれやなとか思いつつ納得した。
そしてやって来た昼休み。昨日の夕方、中学時代の家庭的過ぎてあだ名が「お母さん」だった男友達に偶然出くわし、なし崩し的に彼の家に引っ張られ、玄関先で「敵に襲撃されたみたいだけど体育祭頑張れよって意味で!」と頂いた手作りのケーキを賞味する。今年小五の友人の弟も「また今度遊ぼうなー!」と手を振ってくれた。久々に人とふれあった気がする。ありがとう友人とその弟。
机においた包みをそっと開ける。チェリーパイ。包みをそっと閉じる。確認のためもう一度包みをそっと開ける。相変わらずチェリーパイ。苦笑いが飛び出た。
ホール丸々なのは見間違いじゃなかった。
『…おぉ』
思わず漏れ出た感嘆の声。こんがり狐色のパイ生地につやつやの甘そうなチェリーが一面に敷き詰められたそれはきっと甘美な味がするだろう。流石友人、パティシエ並みのケーキ作りの腕は伊達じゃない。しかし、これならきっと食後があう、今じゃない。食堂行くか、と包みを片付け尻ポケットに財布があるのを確認してから席を立った。
**
Noside
昼休み、教室で弁当を食べるらしいクラスメイトの大半は机に大きな包みを置いた錺へと注目していた。
「騎士って、なに食べるんだろうね」
呟いた芦戸に葉隠が「いつもはお弁当なのにね」とこくこくと頷く。八百万と耳郎はじっとこちらに気付かない錺を見つめている。
「誰かからの頂き物でしょうか?」
「あの威圧感とんでもない一匹狼っぽい騎士に? 誰だろうね」
「あっ、開けるよ!」
葉隠の言葉に他の三人だけでなく、気になった教室組の切島、上鳴、峰田、瀬呂たちもその様子を見守る。
錺が包みを開けた。そっと包みを閉じる。その顔は少し信じられないものを見たかのようだった。再び錺は包みを開けて、しばらくしてから優しく苦笑いした。
『…おぉ』
感嘆ともとれるその呟きは静まり返る教室によく響いた。おもむろに彼は立ち上がると尻ポケットに財布があるのを確認してから、教室を出る。
「な、なんだ今の……」
「彼女か!? 彼女なのか!?」
「わかんねーよ」
「元々顔整ってるとは思ってたけど、笑った! イケメン!」
「ホントね! それね!」
「中身はなんだったんでしょう?」
「ウチは食べずにどっか行ったのが気になる」
様々な疑問や憶測が漂うなか、数十分後に教室に返ってきた錺が席につき、『いただきます』と意気揚々とフォークを取り出して包みの中から現れた美味しそうなチェリーパイにみんながみんな目を向いたのだった。
.
昼食にラーメンを食べ、教室で濃厚な甘味の絶品チェリーパイをいただき、ほうと息をつく。至福。
わりと甘党な俺に美味しいチェリーパイの応援はもし貢がれたとしてもそれ以上に心に響いた。ありがとう友よ、今度お礼に行くわ。やっぱり友人って大事やなあと再確認する。
疲れが引っ込んだところで、スマホをいじり、久々に開いた無料通話アプリで彼に味の感想を送り付けようとした矢先、「騎士くん」と扉の方から俺の名前が呼ばれた。
ふいとそちらに目をやると、黒髪の、つり目の女の子が真っ直ぐ俺を見ている。…えぇと、何事や。
「ちょっと、こっちまで来てもらっていいかな!」
マジでなんや。ちゅーか誰や。……いや、ちょっと見覚えあるぞ。……ちょっと待って、今思い出しとるから。えぇと、えぇと、ああ。思い出した。マスコミが門突き破って来たときに食堂のパニックで転けそうなとこ助けた子や。はー、思い出せてよかった。
合点がいったと言うように『あぁ、あんときの』と呟いて席を立つ。本にはすでに栞が挟まれている。栞、しおりか……。……うぅ、しおり……。ちょっとというかかなり寂しくなった。
扉のところまで行くと、「この間はありがとう」とお礼を言われる。丁度俺もアイツにお礼せなって考えてるときやったわ。とりあえず『気にせんでええよ』と笑って返した。怪我がなければ幸い。無事でよかった。
「あー、それでね。……それでですね」
急に敬語になった彼女に若干きょとりとして「一年経営科の宮原 飛鳥です」と唐突に自己紹介され、「お、おお?」と疑問を返す。
「一目惚れです! 付き合ってください」
『ごめんなさい』
一考もせずに最早反射で飛んで出てきた即答に少し焦るも、まぁ結果は同じかと開き直った。いやまあ女の子に失礼なのは俺の流儀に反するけれども、変に優しくして期待持たせて傷つけるのもどうかと思うし。いや、罰ゲームの可能性も捨てきれへんねんけど。
「そ、即答……! 即答なんて……私なんて眼中にないってこと……? out・of・眼中ってこと……?」
とりあえずここは教室の扉な訳で。後ろのクラスメイトの雰囲気が「out・of・眼中か」「即答……」「即答なんて……」「告白なんて羨ましいんだよ……」「即答とはなかなか……即断即決タイプか」「out・of・眼中」「騎士くんって関西弁だったんだ」とだんだん俺の非難へ変わっていく。泣きたくなるからやめろください。関係ないん混ざっとりますけど。
『あー……さっきのは反射と言うか』
「反射!!!」
『あぁぁ!』
喋れば喋るほどややこしいことになっていく事態に俺収集出来るんかなと不安がよぎる。……うーん、こういうことってないことはないけど、苦手なんよなあ。
「いいんですわかってます騎士くんこう見えて超優しいもんね変に期待持たせないようにしてくれたんだよね!」
『なあ、こう見えてってなんや。こう見えてってなんなんや』
若干の心的ダメージを受けながら、そうだよね!? とちょっと必死に問い掛けてくる宮原にこくこくと頷くとほっとした彼女は「諦めるつもりはありませんので!」と俺をぴしりと指差す。
『人んこと指さしたらあかんやろ』
「あっ、はい」
指を折り曲げて握り拳を作らせた。ら、真っ赤になって脱兎の如く走り去ってしまった。
結果で言うに、俺的超面倒臭いパターンになってしまったに違いない。
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そしてやって来た体育祭。あの一件で俺は更に敬遠されているらしい。悲しみ。
ここ二週間、下駄箱に呼び出しの手紙や机に市販のお菓子などがあったりするものの、呼び出しには応じず、お菓子も食べずに取っている。しかし、ちゃんと捨てていないので安心してほしい。ちゃんと保存してあるから。
呼び出しに応じないのは結果が変わらないのが絶対として分かりきっているから。捨てないのは気持ちを尊重しているから。
控え室にて勃発した轟の緑谷への宣戦布告や宣戦布告返しを横目に、パイプ椅子に腰を掛けた俺は腕を組んでうんうん唸っている訳で。そろそろちゃんとお断りした方がいいかもしれない。中にはためしで付き合ってみてそれから決めて、という内容もあったが、俺も俺で譲れないのである。
『……10年やからなぁ』
そう、10年。しおりが亡くなって6年。それでも俺は彼女を想い続けている。これだけは死んでも譲れないのだ。俺きっと独身だな。しおりが心に居たから付き合いはしない。キスもしない。好きとも言わない。
それでも童貞は卒業済みなんだよな。うーん。
中学の時、抱くだけでいいからと何人かに頼まれ、仕方なく抱いた。相手は俺が絶対そんなことをしない性格で、そんな性根だと理解していたから泣きながら感謝をのべて、絶対口外しなかった。流石に手首切って死ぬとかカッター持ち出されたり、屋上で落ちて死ぬとかその他似たようなことを言われたりされるとなぁ……。
あのときはかなり神経をすり減らした。今の状態もちょっとそれに似ている。前は信頼できる友人たちが居たから立ち直れたが、今は居ない。そうなる前にケリをつけなければ。俺がヤバイ。
扉を出ようとすると飯田に「もうすぐだぞ騎士くん!」と止められるが、『すぐ戻る』と言い放ち、控え室を出た。
**
経営科の控え室を目指していると、こちらに向かっていたらしい宮原に偶然出会う。
「騎士くん! どうしたの?」
にへ、と笑った彼女にずくずくと心が痛む。が、俺が真剣な顔をしているのに気が付き、いすまいを正した。
『……悩んだままで体育祭には出れん。あと、ちょっと、キツいこと言うかもしれんけど』
間髪入れず「良いよ」と返され、少しほっとする。うん、最低か俺は。彼女が良い子で本当に良かった。
がしがしと頭を掻いて、一言放つ。
『二週間あったけど、やっぱり変わらん。ごめん』
「……あー、まぁ。そんな気はしてたよ、私も」
残念そうにする彼女にポツリと呟いた。
『俺な、10年間ずっと好きな子居るねん』
「えっ10年! ……すごいね」
『すごない。ただ初恋拗らせとるだけや』
苦笑いした俺に、彼女はふるふると首を振って、「10年とか本気ですごいよ」と笑った。
「……うん! ちゃんと返事くれてありがとう! 体育祭、頑張って」
『……ん』
.
<ヒーロー科! 一年! A組だろぉぉ!?>
『(ギリギリ!)』
出場にギリギリ間に合った俺はどこかすっきりした面持ちだと思う。
全国中継のテレビだと言うのに、体操服の前を開けて黒のインナーが見えた上にズボンの左の裾をふくらはぎまでまくった様は最早いつも通りだろうか。きっと友人たちも見ている筈だ、それは活躍せねば。
先日の爆豪の態度でA組ヘイトが集まっている訳だが、選手宣誓で壇上に立つ彼にちょっと先が読めて苦笑いを漏らす。
「せんせー」
やる気無さげな彼はズボンのぽっけに手を突っ込んだまま、言葉を紡いだ。
「俺が一位になる」
「絶対やると思った!!」
切島が声をあげる。まぁ当然と言えば当然か。だって爆豪だしな、爆豪。
わあわあと非難が殺到するなかで「跳ねのいい踏み台になってくれ」発言は俺でもどうかと思うけど。これ一位なれなかったら大変なことになるぞ……。
「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!」
「雄英ってなんでも早速だね」
「いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)! さて運命の第一種目!! 今年は……」
ドゥルルルルと言うドラム音に伴い、デデンと発表されたのは障害物競走。計11クラスの総当たり戦らしい。コースはこのスタジアムの外周約4km。
『コース守れば何したって構わんとか、妨害有りてモロ言うとるやんけ』
さあ位置に着きまくりなさい! と言う今年の一年主審ミッドナイトの合図で流れるようにゲートへ向かう生徒の波に乗り、運良くゲートの一番前を確保出来た。
隣には怖い顔した轟。ああ、コイツ絶対地面凍り付けるとかやるわ。絶対やる。この目はやる人の目や。
「スターーーート!」
その一言で自身に神速を駆けていの一番に走り出す。後方でぱきぱきと音が聞こえたのでやっぱり凍らせたらしい。容赦ねぇ轟。
<さーて実況してくぜ! 解説アーユーレディ!? ミイラマン!>
<お前が呼んだんだろうが>
相澤先生解説かー。
そんなことを考えながら神速の速度をかなり落とす。あんまり速くしすぎると、俺の認知を越えてしまう。流石に音速とか見切れないし。だから居合い抜きはほぼ見えない。刀身よりも大きく抉る威力が出るからそれはきっと風圧の暴力だと俺は思っている。
暴力、暴力か。と不意に目の前の暴力を体現したようなそれに目をやった。
「ターゲット……大量!」
入試の0ポイント敵だ。
.
<さぁいきなり障害物だ! まずは手始め……第一関門、ロボ・インフェルノ!>
プレゼント・マイクの実況をどこか他人事のように危機ながら、俺は目の前の入試の0ポイント敵を、背中に下がる刀に手をかけて一切の迷いや躊躇いなく一刀両断した。
ピシリと真っ二つに綺麗に縦に避けたその真ん中をすたこらと時速40kmほどのスピードで走り抜ける。
<1-Aの騎士が躊躇いなくロボ・インフェルノを一刀両断! なんだアイツ刀抜いたのか!? 見えなかったぞクレイジー! そして同じく轟! 攻略と妨害を一度に! こいつぁシヴィー!>
恐らく後ろでギリギリと俺を睨んでいるだろう轟に背筋を震わせながら、攻略と妨害を一度にとかどなしたんやと悪態をつく。コイツ恵まれた天才やな。親もおる、兄弟もおる。憎々しげやがその相手が存在することがどれ程良いことかよくわかってない。
俺は復讐する相手すら居ないんだから、もうちょっと世界に優しくしてもうちょっと大人になれよ轟焦凍。
後続がドンパチやっている所で訪れた第二関門。落ちればアウト、ザ・フォール。なんか、数ある土の柱に綱渡りみたいに縄が連なっている。これを越えて行けってことか。
これ、俺にはちょっとだけ難しいかもしれない。とりあえずとっとと轟とか爆豪とか来る前にやってしまおう。
とか頑張って神速で綱を踏んで飛び越えたりしてたら轟が氷で、爆豪が爆破で空を飛んでったので俺の一位捕守は呆気なく破れた訳だが。
だってあいつら飛べるもん。ずるい。
現在三位。これ落としたら上がるん大変やな……。
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凄いですね!小説!ヒロアカのオリキャラから版権キャラまで幅広い文章力や表現力!何処をとっても凄いです。
それで、なりきりが不得意とは思えないのですが!苦手と言う感じが全然無いので、なりきりしたら楽しいと思うし。ヒロアカのなりきりなら、小説のネタとか出来るかと思いますよ!
あ!ちなみに凄く簡単なヒロアカクイズ。このキャラのはだれ?
https://ha10.net/up/data/img/23347.jpg
うおお、めちゃくちゃ褒められとる……。
うへへ、そんなに誉められるとマメツキは天狗になっちゃいます(笑)
クイズの答えは障子くんですね!!
障子くんも複製腕とかかっこいいので好きです。
いえいえ!それでここに良かったらどうかと!なりきりしたら面白い場所をご紹介しますね!
http://m.saychat.jp/bbs/thread/629724/
http://m.saychat.jp/bbs/thread/623373/
正解です!そうですか。障子君って結構声とかカッコイイし(本体の声)
複製した声はそれぞれ声が違った所あるし!後仲間想いな所ありますよね。(USJで黒霧から飯田君を庇ったシーン)
現代からテニプリにトリップしたら跡部に成っていて、その生を全うしたらなぜか次は財前に成っていて、「なんなんやもう!」と憤りながらその生も全うしたらnrtに転生していて財前のまま跡部のインサイドを持ってた男主の話。ナルト世代。
『財前 イオリ』
財前一族の跡取りで関西弁。容姿と口調は財前、能力は跡部のインサイド。眉毛だけは普通に細いけどきりっとしている。壮絶な紆余曲折の末転生したらナルトの世界で「これ頑張らな死ぬやつやん」ってなった可哀想なイケメン。骨格レベルで相手の絶対死角を見抜く血継限界『眼力(インサイド)』を持って生まれた。普段の目は紅色で、発動時はアイスブルーになる。それを知って「いろいろ混ざっとるやんけ!」と叫んだのは当時四歳の頃。尚前世の財前の目の色はライトグリーン。
封印忍術や結界、時空間忍術を得意としている。得意なのは瞬身。インサイドあってもその場に行けなきゃ意味ないよねってやつ。出来るだけノーリスクハイリターンが理想。流石最初の人生超絶平和だった男。
容姿の為モテる。チームワーク大事なのはもう身に染みてる。ほら、全国大会とかU-17の世界大会とかで。
訂正『財前イオリ』→『財前 光』。
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アカデミーの教室のドアを開けて、ざわついている室内を見渡して空いてる席を視線で探す。あ、窓際の一番後ろが空いてる。ラッキー。
背中に背負ったボディバッグを横にかけて席について早速自来也様のイチャパラシリーズを開いた。もちろんブックカバーついてるから安心や。
なんか色々あって四度目の生を授かった俺、『伊織 丞』は今世も『財前 光』として生きていくことになった。前世は財前光、前々世は跡部景吾だった。なんだこのテニプリ面子とか思ってたらマジのテニプリだった訳で。もっかい財前やんの、とか思ってたらナルトの世界だった訳よ。マジ訳わからん。
まぁ四度目ともなれば慣れるもので、そこそこに楽しくやっている。血継限界がインサイドやったことには混ざっとるやろ! と叫んだもののよくよく考えれば悪いことちゃうし。インサイドを使うために瞬身めっちゃ努力したからな、めっちゃ。お陰で一番得意やで瞬身。黄色い閃光を追い抜く日も近いか? 遠いな。あの人13かそこらで上忍やったし。俺この年でまだアカデミー生やし。いまやあ五歳頃卒業の話は来とったけど、面倒事はごめんやから断った。そのせいかめっちゃサスケに嫌われとるっちゅーな。こわ。
そんなことを思いながらぺらりと本を一枚捲ったところで隣に誰か来た。ヒナタや、かわええなあ。
「おはよう、光くん」
『おはよお、日向』
「イルカ先生遅いね……」
『……せやな、どうせあれやろ、ナルトが叱られとるんやろ』
授業開始遅れるから楽でええわーと呟くと「そ、そうかな……?」とヒナタに苦笑いされた。まぁこんなん今更気にしてもどないもならんし、楽観視しょーやと返す。前のシカマルに確かになと同意された。せやろ。あれもう病気やで病気。
漫画でもそうやったけど、ナルトマジでなんべん怒られてもやめへんねんけど。あれか、構ってもらえるのが嬉しいのか。イルカ先生最初は里の人らと同じような冷たい反応しよったけど、今じゃちゃんと叱っとるしな。心境の変化様様。ナルトは構ってもらえて嬉しいんやろなあ。俺は怒られるなんて真っ平やけど。Mでも無いし。
「…光くんは何を読んでるの?」
『自来也様の書いたやつやで』
「ああ、ド根性忍伝だね…」
『……あ、そうそう。主人公の名前がナルトなんや、すごない?』
いやまあ四代目がつけはったんやけどな。それにしてもヒナタがド根性忍伝と勘違いしてくれてよかった。
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昨日の夜更かしが祟ったのかちょっと寝坊した俺はちょっとズルかと思いつつ瞬身で校舎のトイレに飛んだ。そのままぱたぱたと廊下を駆けて教室に入ると何やらナルトとサスケの周りが騒がしい。
席に着きながら後ろに体を捻ってからそこにいた同級生に『おはよお、なんやあったんか』と問い掛けた。
「ああ、光おはよう。いや、俺もよく見てねえんだけどさ、なんかサスケにナルトが至近距離でガン飛ばして、サクラがぶつかってナルトとサスケがそのまま……って感じらしいぜ」
『……そか。分かりやすい説明ありがとお』
くるりと前を向き、ぱらぱらとイチャパラを捲る。うーん、今日だったか。見たかったような見なくてよかったような。だからナルトが女子から袋叩きにされとるんか。ちょっと不憫な気もするけどまあ、いつの時代も乙女が強い言うことで。ヒナタはちょっと可哀想。仕方ないと割り切ったってや。そりゃまあサスケのファーストキス狙ってた女子からしたらナルトに奪われたようなもんやしな。しかしそう言うのは女子が一方的に狙うんじゃなく双方の合意の元でしなければならないのでは?
こんな疑問は胸に留めておくことにした。口に出すとまたうるさくなりそうやし。
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卒業試験の分身の術も無事合格をいただき、額宛をもらった。これなんか二重の試験待ってるからしんどいねんな……なんやねん下忍試験は6割落ちてアカデミー逆戻りて。やっぱり世の中理不尽なんやなあ。
教室で不合格を貰っていた筈のナルトがいたためあぁミズキ先生アデューとかせせら笑いつつ、とりあえず10か8班が良いなと呪文を唱える。だって7班とか死ぬフラグやろ。死亡フラグ立っとるがな、なんもせんでも立つがな。サクラ以外全員爆弾過去持ちやがな。いや、サクラも怪力に目覚めるけど。その班に俺が入ってチームワークが活かせられれば多分バランス良すぎるチームになるとおもうけど、里抜けが若干名おるからな。全く、いのしかちょーでも10班でも良いよ俺は。
「うちはサスケ! 春野サクラ! 財前光! そしてうずまきナルト! 以上が第7班だ!」
お上は俺を殺しに来とるんかオイコラ。
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現代→nrt転生トリップ
オビトもリンもミナト先生も死ななくてうちはもクーデターなんて企てなくて五大里も仲が悪くなくマダラも落ち着いてて暁と言う組織もなくサスケも里抜けせず第四次忍界大戦なんて起こらないと言う夢にまで見た平和な世界線。要するに危険なことがない。
転生トリップ主はうちはの家系。オビトは親戚。フガク家族は従兄弟。リン可愛い天使女神超可愛い好き、な眼鏡女子。名前は『うちはシオリ』
っていうほのぼのが書きたくなった。一応カカシ夢。
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ナルト世界に生まれて幾星霜。ごめんそんなに生きてない私まだ五歳。一応前世の記憶を持った転生トリップなるものをしたが、私は神様になんてあっちゃいないし死んだ記憶も残念ながらない。夜寝て目が覚めたら母の中からこんにちはした状態だった。当初よくわからず赤ん坊だったこともあり泣き喚いたがまぁ落ち着きを取り戻したけどさ。
うちは一族に生まれてしまったんだがどうしよう。作中ナンバーワンで命の危機に瀕してるんだが。確かイタチくんが暗部の命令でクーデター企ててたうちはをサスケちゃん残してブッコロしちゃったのはそりゃもう記憶にこびりついてる。その時はサスケ可哀想だな、物語進んで真相知ったときイタチお前すげえその上司ブッコロとか思ったけどもさ。そりゃないぜとっつぁん。そもそもここにとっつぁん居ねーよルパンの世界線行け。
まぁそんなわけで。二歳ごろ自分の置かれた状況に命の危機を感じて鍛練を始めた。いやあ父との鍛練が進んで命の危機に瀕するとはおもわなんだ。でもまあ写輪眼も出たしいろいろスッ飛ばして万華鏡写輪眼も出たしオールオッケー。こんなに簡単に出てもいいのか万華鏡写輪眼。いやダメだろ。父さんも父さんだよ何してくれとんだ。全然オールオッケーじゃねーよ馬鹿か私。
私はどうやら剣の方に才能が有るらしく適性だった火遁と風遁を使って上手くその才能を伸ばしている。日本刀とかまじかっけー。厨二心擽られる。前世の私は幾つだったよもう精神年齢25越えてるよそれで厨二とかうわ私やべーな。
火影岩見りゃ三代目様までしかない。マジかよ主人公世代じゃなくてよかった……いややべーよ今第三次忍界大戦の終わり頃じゃねーか時期的に。確かうちのオビトが出た神無毘橋で決着着くんだよなうおおオビトは今生まれてるのか年は幾つだ! それで私の運命が決まる!
その時「オビト君なんていつ知ったの、まあいいわあの子なら貴方と同い年よ」と母に言われたときの衝撃はでかかった。
同世代かよ!! 母さん軽いわ!!
そして現代アカデミー。まぁ楽しく暮らしてますよ。
「シオリちゃんおはよう!」
『リンおはよう』
とりあえず叫んでいいかな。リン可愛い。
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転生したらテニプリの某詐欺師みたいなことが出来るようになっていた男主が木の葉でのほほんするだけの話。見た目は仁王だけど髪が黒くて目が赤い。普通に喋る常識人。サクモ世代。
ていうのを書きたいです!
成り代わり荒船哲次(ワートリ)inヒロアカ
荒船哲次
超理論派サラリーマンが事故で死んで転生したら荒船哲次とか言うイケメンに生まれてた記憶持ち原作知識無し。ボーダー入隊して木崎さんすげーってなってアタッカーからスナイパーした行動派。原作より戦闘力かなり高めでA級クラスとか言われてたらいい。なんやかんやとネイバーと戦って30歳。二十歳でパーフェクトオールラウンダー理論を確立させてマニュアルを作るもそれに必要なトリガーがもの足りねえってなってエンジニアに転向。そこから寺島さんに教わりつつトリガーの構造を熟知、マニュアルを完成させた。
隊もかなりの古株になったしなあって思ってた所で事故で亡くなる亭年30歳。
そしたら荒船のまままた転生してた理論派。個性? 敵? ヒーロー? 俺の個性は『トリオン』? ならここでもパーフェクトオールラウンダー理論作り上げてやろうじゃねーのと。アクション映画ばりに敵なんざ薙ぎ倒してやるぜと。アクション映画? ビルから飛び降りる真似するほど大好きですが何か。犬? あれの話はするなっ……!
前世知識を存分に生かして主要トリガーからトリオン体、果てはトリガーケースまで造り上げる努力家(若干チート)
帽子をアイデンティティにヒロアカ世界で突っ走る荒船(成り代わり※しかし原作と大差ない)のお話。
ちなみにデク&爆豪と同じ小中。(あんま関わりない)
1-Aで斬撃狙撃お手のものって感じのパーフェクトオールラウンダーやりながらみんなとがんばります。
記憶持って転生した影浦がヒロアカでがんばる話。雄英1年A組。
影浦雅人
個性『トリガー』サイドエフェクト『感情受信体質』
記憶にあるトリガーを主に扱うもの(基本前使ってた物ばっか)。サイドエフェクトは以前と変わらない。
粗野な面はあるけど根は単純でいい人。雄英近くのお好み焼き屋『かげうら』次男坊。
**
何かが刺さる、と言うか皮膚を撫でていく感覚に襲われ、がしゃーんと食器が重力に従い床へ叩きつけられて割れた。あ、くそ能力。
意識がふと浮上したら、俺は四歳児になっていた。
それから数日、わかったことと言えば超常が日常で個性なんつうのがこの世界の約八割に発現しているらしい。
どうやら俺の個性は『トリガー』らしく、その副作用で感情受信体質が引き継がれたようだった。
そして考えるがこれ転生じゃねーのかと考えたわけだ。わりとその手の漫画を読んでたのもある。が、俺は死んでないから不思議でならない。戻りたいとは思うもののもとの世界に戻れるまでの辛抱か。
そしてここ数日で聞き慣れた『ヒーロー』と言う単語。ヒーローって何、と店の手伝い中だった俺が常連に聞くとあんなになりたいって言ってたのにどうしたと感情が刺さる。まあ、個性で犯罪を起こすやつらを取り締まるまあ対個性警察みてえなもんだ。
前と変わらない環境で手伝いして、幼稚園行って。
『……だりーな』
**
中学三年の春。始業式で早く帰ってきた俺は相も変わらず店の手伝いをしていた。ここ数年で刺さる感情は店ならかなり柔らかい。
注文を受けていたとき、不意にその常連客が俺に話し掛けてきた。ネズミなのか犬なのか、よくわかんねえ容貌の見た目がかわいいおっさんである。
「ねえ雅人くん、君雄英に行く気はないかい?」
急にどうしたとばかりにおっさんを一瞥してプレゼント・マイクの注文を書き出し、『どうしたおっさん……』と俺は若干引いた声を出した。マイクがやいのやいの行ってるがこの際無視だ。
「君のその感情受信体質、かなり役に立つと思うんだ!」
その一言に「……そんなに便利なもんじゃねえよ、こんなクソ能力」とだけ一言残し、次の席に移る。
感情受信体質。ある種迅さんの未来視よりもしんどいサイドエフェクトは、他人の己に対する感情が針となって刺さる。不愉快な感情であればあるほど刺さったときの感じ方は不快になる。他人の感情がダイレクトに伝わってくるのだ。
一通り手伝いを終えて自室に籠って一眠りしよう。それが一番、今はいい。
翌朝、母に「雄英からスカウトなんてよかったわねアンタ」と言われてどういうことだと硬直する。雄英、確かに行かねえのかとかそんな話はしたけどスカウトだと?
そんな顔をしていたのだろう俺に母はこう言った。
「あのネズミのひと、雄英高校の校長さんなのよ、まさか知らなかったの?」
『……知らねーよ……』
**
あれよあれよと言う間に高校の入学式。俺はというと雄英高校の門を横目に大きくため息をついていた。
結局、母が勝手にスカウト受けるだなんだ言ったらしく、回避行動が取れなくてずるずる引きずられるように引っ張りこまれてしまったのだ。
しかしまあ俺みたいなのがこんなトップ争いしてるような学校で生き残れるとは思わない。
『……だり』
向かうは1年A組である。
いやはや。雄英ってクソぶっ飛んでんな。初日から入学式スッ飛ばして最下位除籍の個性把握テストやらせるとは。いくら自由な校風とはいえマジで自由過ぎる。それをやってんのが相澤のおっさんなのに驚きだ。何を隠そう俺がガキの頃からの常連客なのだけど。
トリガーを駆使して全てでそこそこの点数をとった俺は相澤のおっさんから刺さる感情に舌打ちしつつ教室へと戻る。真面目にやれだと、ざけんじゃねー俺はヒーローになる気はねえ。
猫背にクソ悪い目付き、マスクにズボンに手ぇ突っ込んだ俺に声をかけるやつなんてまぁ居ない。いや別にもう精神年齢が30オーバーした俺は当時のバリバリ高校生だった時のようにツルもうだとか絡もうだとか思わねえけど。いや、前世でもばか騒ぎはすぐそばで眺める程度だったか。教室で穂刈の野郎が鋼にあることないこと倒置法で吹き込むのを爆笑しながら見てたぐらいで。
そんなことを考えながら荷物も纏めて校門に向かっていると聞き覚えのある声に呼び止められた。ばっと振り向けばそこには。
「……は、カゲ?」
『…荒船……』
「ブレザー死ぬほど似合わねーなお前……」
『ぶん殴るぞ』
.
翌日。今日は荒船と登校中だ。荒船にもどうやら記憶が残っているらしく、まぁ、気心知れた友人な訳だ。
「なんだよ、お前もスカウトか」
『っせ、ババアが勝手に決めやがったんだよ』
何を隠そうこいつ、隣のB組らしいのだ。うわちけえ。
荒船も個性はトリガーらしく遠中近とで進んでいるらしい。二人目のパーフェクトオールラウンダーは伊達じゃないってか。
帽子がないから多少の違和感を覚えるが、コスチュームじゃどうせいつものアイデンティティが頭の上にあるだろう。
「トリオン体作れるようになったからお前にもやるよ」
『荒船やべーなおまえ……』
「崇めろ」
『うぜえ』
荒船と別れて教室へ。午前は必修科目に英語とごくごく普通の授業だった。
飯時は荒船に誘われ食堂へ。ヒーローが作ってるらしく文句なしにうまかった。
午後は待望らしいヒーロー基礎学。担当はオールなんちゃらさんだとよ。
コスチューム身に付け外に出りゃグラウンドは疑似市街地だわ室内戦闘訓練だわなんだわと盛り沢山な訳だが、まぁ俺の浮きようは仕方ないっちゃあ仕方ない。みんな何かしらの装備をしていると言うのに俺は黒いコートにワークパンツ、要するに前世の隊服のまんまだからだ。なんだあの軽装と思われてもそれが普通だ。
襟元のエンブレムを一撫でしてちょこちょこ刺さる感情に軽く舌打ちする。……あ、なんだこれ……好奇心? 探求心?
ぱっと振り向くとそこには緑のマスクした奴が俺に声をかけようとしていた。
『……んだよ』
「えっ、イヤッ、かなり軽装だからっ! ど、どうしてかなー、と思って、」
『あぁ……個性の関係だ』
きょどるそいつにたいしてわりと普通に返答したら多少驚いた様子だ。困惑が刺さる。
「……どうして?」
『俺の個性がかなり攻撃向きだからだ。あと興味津々で俺んこと見んな、痒い。刺さりまくりなんだよ』
とりあえずどういうわけか問われる前にふいと背を向けて話始めたオールなんちゃらに意識を向けた。
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そして始まる戦闘訓練。要するにペアチームで敵とヒーローに別れてから核を敵が守るかヒーローが回収するか、あと倒すかで勝敗が決まるらしい。
めんどくせーなこれ建物壊しちまったらダメなやつじゃねーか。大規模破壊をすると建物が崩れて何かしらが核に作用して大爆発なんてことになりかねない。
俺は轟、障子ってやつらのチームに一人余ったから放り込まれた。オールなんちゃらてめー雑なんだよ色々と。パワーバランスはどうなってんだ世……推薦入学とスカウト入学一緒にしちゃいけねーだろ……。
第一戦目は爆豪と緑谷の私情を挟みに挟んだ泥試合だった。二人して建物破壊するわ麗日は核のこと考えてねーわで見てるとき思わず舌打ちがもれたろーが。隣の紫チビから怖いもんでも見たかのような表情と恐怖の視線をもらっちまっただろ。唯一まともなのは飯田か。
まぁ言いたいことはポニテの八百万が全部言ってくれたからもういいけど。
第二戦、俺達三人VS葉隠と尾白。くそあっさり終わってしまった。轟がチームワークも作戦もその手段すら俺達に説明せずビルを氷付けにしてしまったのだ。こいつはなんだもう。チームワークはこの際置いておく、せめて手段ぐらい説明すれば俺達も棒立ちにならずにすんだのに。
轟がビルを凍らせて溶かしたあと、大きな溜め息を吐けばなんだと言わんばかりに轟に睨み付けられたのでとりあえず肩をすくめておいた。
その後の試合はまちまち。訓練にならない訓練よりは全然ましだった。
『…こんぐれえだな、今回の戦闘訓練は』
「ランク戦なら建物破壊普通に出来るから気にしなくていいんだがな、それを置いといてもまぁ子供らしいと言うか」
『俺らも同い年だろーが』
「カゲお前肉体年齢同い年を恋愛対象に見れるのか」
『……ちっ』
流石に犯罪だろ、と言うと違いないと荒船から笑いが帰ってきた。
教室での反省会には参加せず下駄箱に一直線に向かえば荒船に会ったので戦闘訓練のことをお互い話し合う。ランク戦じゃあ真っ先に狙われておとされるやつだなとか、そんなん。
わりと後方から爆豪、緑谷、オールマイトからの視線が刺さるがまぁほっとこう。
「うーっし、お前んちで作戦会議としゃれこもうぜ、腹減ったわ」
『おごんねーぞ自分で払えよ』
けちくせー野郎だな、とどかっと肩を組んできた荒船の横腹にかるく一発かませば「カゲくそ野郎」と罵倒が飛んでくる。
『うっせえな泳げねーくせしやがって』
「泳げねーのはカンケーねえだろこの」
その時俺のケータイが着信を知らせた。
言っておくと。俺の携帯電話の番号は前世と同じもので。着信した電話番号は驚くぐらい見覚えのあるものだった。
『……もしもし』
【……村上だ、その声はカゲか、よかった、番号は変えてないんだな】
『はぁ!? 鋼!?』
「鋼だと!?」
【お、そっちは荒船がいるのか。こっちはあと犬飼がいるぞ】
【話は聞いたよー、カゲー荒船ー久しぶりー】
衝撃の出会いである。よもや鋼と犬飼までいるとは。他を探せばいそうな気がするのは気のせいか。
鋼と犬飼はどうやら士傑に別クラスでいるらしく、まぁ今の俺たちのようになっているらしい。
『おーなら話ははえーな、鋼今度俺んちの店こいよ』
【行く】
【俺はー?】
『来んな』
「来ていいってよ」
【やったね!】
『言ってねー!』
**
夜。腹を空かせて帰って来たからか荒船はいまだモグモグとお好み焼きを頬張っている。夕方ごろに来たくせによく食うもんだ。俺が友達を連れてきたのは初めてだからかめちゃくちゃ歓迎されていた荒船に憐れみの視線を刺されたので握り拳を見せておく。とは言え俺も頭にタオル巻いて店の服着て手伝い中だ、呼ばれたからバタバタと慌ただしく移動する。
次にがらりと扉が開いて入ってきたのは相澤のおっさ……相澤先生とブラドのおっさん、プレゼント・マイク、ミッドナイトさんその他もろもろ。……なんか骸骨みてーなの居んな。見ねえ顔だ。
「よう影浦」
『暇かよ相澤のおっさんども……おいババァ! ヒーロー勢来たぞ!』
直後「ババァって言うんじゃないわよバカ雅人」と怒声が返ってきたのもいつも通りだ。
「なんだ、荒船も来ていたのか」
そういったのはブラドのおっさんだった。どうやらB組の担任らしい。荒船は口の中のものをモグモグそしゃくし飲み込んだあと「こんばんは先生」と一礼した。
先生たちと一緒に来た骸骨のおっさんも多分先生だろうと思われ、隣の相澤先生に何やら耳打ちしていた。刺さる感情からするにどうして俺がここにいるのかを聞いたのだろう。息子だと教えられたらしく納得が肌を滑った。
『つか荒船てめーいつまで居座って飯食う気だ早く帰れよもう九時だぞ』
「うわ九時とかやべぇな……おいカゲ今日泊めろ、帰るのだりーわ」
『くそ船それやめろ痒い』
「フッ」
『泊めてもらう立場の奴が鼻で笑ってんじゃねえぞ!痒いわ!』
お互いヘラでオラオラやんのかと稚拙な攻防を繰り広げていると周囲から刺さるそれが一気に和らいでいく。『和むんじゃねえ!』と叫ぶが全く変わらなかった。
「雅人の感情受信体質は健在だなあ!」
「一時それのせいですごく暗いときもあったけれどね」
「それがあんな風に友達つれてんだから私達年とったわねー」
『っせ』
常連客からの言葉に空気を吐く。照れんなよ、とはははと笑う荒船が憎たらしい。あと教師たちの荒船と影浦って仲良かったのかみたいな視線も痒い。骸骨先生からの感情受信体質への疑問の視線も痒い。
「流石はあの純粋な鋼に根は単純でイイヤツと言わしめた野郎だな」
『あのやろう…』
「根は単純でイイヤツ……」
『笑ってんじゃねーぞ荒船こら』
翌日の昼。食堂で荒船と飯を食べようとしていたときのこと。不意に水取ってくるわと立ち上がった荒船に「おー」と気の抜けた返事をしてスマホをいじる。マスクに姿勢が悪くスマホいじって目付きが悪い。そんな俺は視線を多々集めている。なんであんなのが雄英にいるんだと言う視線が刺さって不愉快だ。だから俺は人混みが嫌いなんだ。
すると不意に警報が流れる。なんか、今朝のマスコミを校内に入れなかった防犯システムが突破されたとかなんとか。迅速な避難の行動過ぎてパニックになってんだけどどう収集つけんだこれ。と半ば呆れているとラインに通知が来た。
荒船である。
【水汲むとこに居る。早く来い】
小さく舌打ちしてガタリと席をたつ。ここら辺は人がいなくなってがらんどう、水汲むとこは人混みのなかだ。くそ……。
人だかりのなかに身を滑り込ませて間を通り抜けていく。わざわざ俺呼んで一体どういうつもりだあいつは……。
パッと目的地に付くとそこには荒船が居た。いやいないとおかしいんだけどよ。
なんでうちのクラスの八百万と耳郎がいるんだよ……。
『荒船それどうなってんだ……』
「人混みに引っ張られてこけかけそうになってたんだよ、とりあえず端に寄せたけど俺一人じゃそろそろもたなかったからな、ナイスタイミング」
『てめー……!』
「良いからとっとと手伝えよカゲ」
『だろうと思ったわ!』
なんで俺がとかぶつくさ言いつつも断れないのが俺だ。くそ、コイツ理解してるからムカつくわ……八百万と耳郎からの困惑の視線も鬱陶しい。
舌打ちを噛まそうとしたとき、荒船が口を開いた。
「悪いな、あんまりカゲのこと見てやらないでくれ。そろそろ爆発する」
『うるせーな』
「まぁ根は単純でイイヤツなんだ、嫌な感情さえ向けなきゃただの御好み焼き屋の次男坊だしな」
『荒船そろそろいい加減にしろよ! 首飛ばすぞ!』
「出来るもんならやってみろよ、ぶったぎってやるぜ」
『上等だ後で表出ろ』
「こっちの台詞だ」
人が捌けてきた頃、俺たちは「じゃあちょっと俺達行ってくるから」『……』「カゲ」『うるせえ』と二人を出口まで送り届けたあと中庭へと移動した。
最後まであっけにとられてしゃべれなかった二人はまぁあとでどうにかする。
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荒船とは一応言い争いで終わらせ教室に戻る。すると八百万と耳郎からの視線がいたい。なんだこれ勘弁してくれよ。
あと非常口飯田ってなんだ。緑谷は委員長の座をそいつに譲るのか。なに? 昼休みの食堂? 俺居たけど知らねーよ。
その後、八百万と耳郎が俺の席にやって来た。
俺の席は八百万の後ろ、二十の席からひとつ飛び抜けたところにある。これも一応、スカウト枠の悲しい性ってやつか。今年から導入らしいけどスカウト枠。
「あの……お昼休みではありがとうございました、影浦さん」
「うん、正直助かった」
真っ直ぐの感謝と刺さるそれに照れ臭くなって視線を逸らし『ん』 とだけ一言返す。しかし周囲がざわついているのが気になる。なんだあいつとか、影浦っての何したんだとか、あとは女子二人に対する心配的な警戒の対象、あとは興味ねえって視線。好意的な視線がないそれらがいっせいに俺に刺さって気持ち悪い。辛うじて目の前の二人の好意的なそれが救いだ。
だんだんと微かに青くなっていく顔に気が付きつつも、もとの席に戻らない二人に視線を投げた。
「その、ひとつ質問よろしいですか?」
『……言ってみろよ』
「……B組の荒船さんが仰っていた『刺さる』とは一体どういうことなんですの?」
「あ、言ってたね。あんまり見てやるなよ、とか。どういうこと?」
その二人の質問に答えようとしたとき、緑谷が「あっ、ぼ、僕も前に影浦君がいってたその事について聞きたかったんだ!」と寄ってきた。これにより視線は『疑問』へとシフトチェンジされる。……不愉快なものよりか全然ましだ。
『……感情受信体質』
「……え?」
「感情受……なに?」
「!? そ、それってどんな個性……!?」
『あー、ある意味個性か?これ……』
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『感情受信体質ってのは、俺の個性の副作用みてぇなもんだ』
そういうと副作用!? と緑谷がやけに食い付いてくる。別に前々からそういう片鱗はあったから気にも止めない。
『俺の個性は万能で攻撃特化みてぇなもんだ』
個性【トリガー】。心臓の近くにある見えない内蔵、トリオン器官から作られるトリオンと言うエネルギーを武器や防具、その他のサポートとして具現化して扱う。トリオンは、まぁ多い方が戦闘面で有利にはなる。
『この個性はわりと被りやすくてな、俺以外ならB組の荒船、他にも同い年に二人いる』
「……じゃあ、その他の方も副作用を?」
『いや、俺の他に持ってるのは一人だけだ。トリオン器官の発達のしすぎでトリオンがでかくなって身体に異常を起こすことが極希にあんだよ。それこそ宝くじが当たる確率だけどな。それが副作用……サイドエフェクトだ』
「サイドエフェクト……」
『それがあれば戦いじゃかなり有利になったりするが……マトモな日常生活は送れねえ。
俺の場合……くそ能力、感情受信体質はな、相手の視線から俺に対する感情の全てを受信する。受信っつっても脳内に直接語りかけるとか、そんなんじゃねえ』
相手の感情が肌に刺さる感覚だ。チクチクする。好意的な感情ほどくすぐったいし、不快な感情ほど刺さり方が不愉快で気持ち悪い。簡単に言うと、好きとか優しいとか面白いとかの感情が知れる反面、嫌いだとか嫉妬だとか蔑みだとかの感情すらもダイレクトに伝わってくる。
『あそこの紫ちびからの『妬み』や爆豪からの『敵対心』も分かる。しんどさは他のサイドエフェクトを引き剥がしてトップを独走中だ』
「そんな……」
『別にもう折り合いはついてるからいい。それに、これのお陰で俺には不意打ちが効かないからな』
「……じゃあ、聞いてもいいかな?」
ふっと顔をあげた緑谷になんだ、と視線で問い掛ける。いやまあ刺さるから分かってるんだけどな。
『そのサイドエフェクト、他には何があるの?』
その一言に、クラスの疑問がひとつにまとまる。ふうと大きく息を吐いて『俺の知る限りじゃ……』と口を開いたところで別の声がその続きを引き継いだ。
「睡眠強化学習に未来視、相手の実力を色として可視化する、耳が人の五、六倍いい、動物と意思疎通ができる、相手の気配を察知する、気配を消す……あとなんだ?」
『あれだろ、嘘を見抜く』
「そうそれ」
『てめーなんでここにいんだB組だろうが』
ばっと振り向くとそこには腕を組んで仁王立ちする荒船が立っていた。荒船に緑谷はヒッと萎縮し、女子二人は昼休みのことで感謝を述べていく。
一通り対応し終えた荒船が言った。
「サイドエフェクトのせいでイライラして誰彼構わず噛みついてると予想して様子を見に来たんだがな、お前はなんか普通に個性のこと喋ってて拍子抜けした仕返しだろ」
『ちっせえ』
「そう言うなよ」
『おいきもちわりー感情向けんな』
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一頻り荒船を威嚇したあと、緑谷が「あ、あの……」と荒船に対して口を開く。
「……君は? B組らしいけど……」
「ああ、俺か。自己紹介が遅れて悪いな。荒船哲次だ、よろしく」
荒船のそれに反射的に自己紹介を返した緑谷は「影浦くんと個性が一緒だって聞いたけど」と容赦なく踏み込んでいく。こいつなかなか度胸あるな。
「ま、カゲの言う通り個性は一緒だな。使い方のスタイルが違うだけで」
『おい荒船、べらべら手の内喋んな』
「喋らねーよ、俺だって不利になんだから」
ポジションがどうだのと口を開く前に釘を刺せば軽い同意が飛んでくる。まぁ、楽しみに取っとけよってことだ。
**
翌日。今日のヒーロー基礎学は急遽教師三人体制でレスキュー訓練らしくそれ用の訓練所へとバスで移動した。バス内の話題はせわしなく移り変わるものの、俺に刺さる感情は感情受信体質を詳しく聞いてみたいと言うものばかり。隣の轟からも一身に突き刺さるので流石に寝た。
到着した場所はUSJ、嘘の災害や事故ルームというらしい。訓練施設はまるでアトラクションのようでこりゃUSJと呼ぶのも分かる。
なんやかやとUSJ考案者13号の増えるけどかなりためになる話を聞いていたんだが、問題は、そのあとだ。
敵が攻めてきたのだ。雄英に。
オールマイトを、ころす為に。
黒いワープゲートの個性でクラスの半分が散り散りにUSJ内に転送されているのが目の前の雑魚敵からの視線で伝わる。……オールマイトを倒す算段があるから攻めてきたんだろうな。
俺が今居るのは倒壊エリアのとあるビルの中。群がるのは俺をただの学生とナメきった視線の雑魚敵ばかり。
ああ、もう。
『俺はな、ナメられんのが大っ嫌いなんだよ!』
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切島side
爆豪と共に倒壊エリアの敵を一掃する。あてがわれた敵の実力は言ってしまえば俺たちの敵ではなかったが、なんせ数が多い。
「これで全部か、弱ぇな」
「っし! 早くみんなを助けに行こうぜ! 俺らがここにいることからしてみんなUSJ内にいるだろうし! 攻撃手段少ねぇやつらが心配だ!」
とりあえずまぁ爆豪のワープゲートぶっ倒す発言だとか、後ろから迫っていた敵を倒したこととかわりとクラスの奴等の実力を信頼していたことに俺は強い男気を感じたわけだ。
そういうわけでワープゲートを倒しにいくことにのったんだが……。
下の階からがしゃーんと大きな音が響いてきたんだ。
びくりと反応した俺たちは視線を合わせて階段を駆け降り、その光景を見た。
俺達が闘った敵よりも多い人数が、壁近くの床やそこら辺に転がっている。そこにただ一人立っているのは影浦だった。
俺達二人であの量を相手にしたのに、真ん中で光る剣を持ったアイツは、たった一人でそれより多い敵を俺たちと同じ時間で倒したのか。
それを見たとき、ただただ純粋にすごいと思ってしまった。
『あ? んだこれ……ってお前らかよ、変な視線刺すな』
確か、感情受信体質だったか。今のすごいって感情も読まれているのだろうな。
次の瞬間、影浦の右腕がぶれ、俺と爆豪の顔の横を勢いよく何かが通り、後ろでぎゃっと悲鳴が聞こえる。
振り返ると無傷なのに首を押さえてくずおれる敵の姿がそこにあった。
……影浦が、やったのだろうか。
『あー、こちら影浦……って別に報告は要らねぇんだったか』
影浦が小さく「もうクセだな」と不服そうに呟いたのを俺たちはきちんと聞いた。
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