私の大好きなナミちゃんを取り巻く、キセキの世代や他のみんなのお話。
とりま帝光から書きます
ナミ
二年前の姿(Fカップやな)
帰宅部だが、キセキの世代と仲良し
桃井ちゃんと色違いの白のパーカーを良く着る(高校では色違いの青)
「えっと…体育館どこだろ」
「ちょっと涼太くん」
「こっちっスかね」
「ちょっと!聞いてんの?」
「なんスか?ナミっち?」
私と涼太くんは今、誠凛高校にきている。誠凛高校に用事があるのは私じゃない。この駄犬。私は無理矢理連れてこられた。
「なんスか?じゃないわよ!なんで私を連れて来たのよ!こんなとこに用事はないわ!!
…ちょっと、呑気にファンに手振ってないで私の質問に答えないよっ!」
繋がれている手を振り払おうとしたが、意外に強い力で握られていて解けない。
ムカついたので足でふくらはぎを思いっきり蹴ってやる。
「ちょ、スポーツ選手の足!」
「なによ?だったら顔面にグーパンチプレゼントするわよ」
「モデルの顏!そんなこと言わないでナミっち〜!…じゃなくて、誠凛高校って聞き覚えないっスか?」
そうだ、テツの高校!!
そうと分かれば早く会いたい。涼太くん早く、と言って手を引っ張る。
「あ、ちょ、たぶんそっち体育館じゃないっスよ」
そう言うと涼ちゃんは私の手を引いて歩き出す。
確か誠凛って、鉄平さんもいるところじゃない!でも、今は入院中で会えないかぁ…
ーーーーーーーーーーーーーー
「ねぇ涼太さん涼太さん」
「ちょ、涼太さんとか、なんか照れるっスね」
「うっさい駄犬。そうじゃなくて…」
体育館に入ったはいいものの、涼太くんのファンに囲まれてサイン会が始まってしまった。
涼太くんの隣りにいた私も囲まれてしまって身動きが取れない。すぐそこにテツがいるのに近寄れない。
「何!?なんでこんなにギャラリーができてんのよ」
バスケ部のマネージャーさんだと思われる人物が声を上げた。うちの駄犬が迷惑掛けて申し訳ないわ
「あーもー…こんなつもりじゃなかったんだけど…」
隣りに座りながらサインを書いている涼太くんがボソッと呟いた。
「あいつは…黄瀬涼太!」
誰かが発した声に涼太くんと2人でそちらを見た。
「…お久しぶりです」
テツと目が合って挨拶された。
「ひさしぶ「テツ!!久しぶりィ!!!!」
「ちょ、俺の声遮らないでよナミっち!」
文句を言っている涼太くんを華麗に無視して、テツに手を振る。
「すいません。マジであの…え〜と…てゆーか5分待ってもらっていいスか?」
「早くしなさいよ」
あんたが早くしないと私も動けないでしょーが
サインを書き終えて、よっと体育館のステージから涼太くんが降りる。そして私に手を差し伸べてきたので素直に握り、私もステージから降りた。
「いやー、次の試合の相手誠凛って聞いて、黒子っちに挨拶に来たんスよ…ね、ナミっち」
「私、無理矢理連れてこられたのよ!テツ!」
そう言って抱き着くと頭をよしよし撫でられた。そして、ナミさんは黄瀬くんと同じ高校に行ったんですね、と言われた。
「俺達中学の時一番仲良かったしね!」
テツから離れて2人の会話を聞く。
「フツーでしたけど」
「ヒドッ!」
ナミっち〜、と泣き付かれたけど無視を決め込む。
「というかそこのナミちゃんっていう子は海常のマネージャーさん?」
「違うっス!ナミっちは俺の彼女っス!」
「僕の中学時代の同級生で、今は海常に通っています。帰宅部です」
私もテツも、ふざけたことを言っている涼太くんを無視したら、また泣き付かれた。
「ふーん…」
女の人は私に近付くと、ガシッと私の胸を掴んだ。
「ひゃッ」
咄嗟に変な声が出てしまった。
「くそ、デカイ…IかHってところか…」
な、何なの?あの人…!ってゆーか、顔真っ赤にするな男共ォ!!
するといきなりシュッと音がしてバスケットボールが私と涼太くんの方に飛んできた。
「っと!?」
涼太くんは私を抱き締めてボールを片手で防いだ。バチィと音がした。
「った〜。ちょ…何?ナミっちに当たったらどうするんスか?」
「せっかくの再開中ワリーな。けど、ちょっと相手してくれよイケメン君」
「「火神!?」」
どうやらさっきのボールは彼が投げたみたいだった。
「血気盛んね〜」
涼太くんは文句言ってたけどなんだか、やる気になってブレザーとネクタイを脱いで私に渡してきた。
「これお願いナミっち」
「……」
私は無言でそれをテツに渡そうとしたけど押し返されたので、仕方なく持っててやることにした。
涼太くんと火神ちゃんの勝負はあっさり涼太くんが勝った。
「ん〜…これは…ちょっとな〜。こんなんじゃやっぱ…挨拶だけじゃ帰れないっスわ。…やっぱ黒子っちください」
何言ってんのこいつ。と思いながら退屈過ぎて欠伸がでた
「海常おいでよ。また一緒にバスケやろう」
涼太くんの言葉に体育館が静まる
「とても光栄です。丁重にお断りさせて頂きます」
「文脈おかしくねえ!?」
2人のやり取りに思わずふっと笑みが溢れてしまう。それから2人の会話を聞き流しながら、今日の晩御飯のことを考える。
「冗談苦手なのは変わってません。本気です」
ハッと我に返ったとき、なんだか険悪なムードになりそうだったので急いで2人のもとに駆け寄る。
「涼太くん!そろそろ帰るわよ。誠凛の皆さんこいつが迷惑掛けてごめんなさい!」
そう言って片手に涼太くんのブレザーとネクタイを持ったまま、もう片方の手で涼太くんの腕を掴んで連行する。
「あ、テツ!また今度会いましょう!」
そう言って微笑めばテッちゃんがはい、と言って微笑み返してくれた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「ねぇねぇナミっちー」
「なに?」
涼太くんがブレザーを着てネクタイを結びながら声を掛けてきた
「さっきの黒子っちの言葉聞いたっスか?」
「え、いや全く」
「えー…。俺たちキセキの世代を倒すらしいっス。無謀なこと言うねー、黒子っち」
「そんな余裕かましてたら負けるわよ。寧ろあんたたちのその余裕な態度がムカつくから倒して欲しいわ」
そう言うとまた涼太くんが泣き付いてきたのでうんざりした。
「あ、海常で試合あるから見にきてよナミっち」
「いやよ。面倒くさい」
「そんなこと言わないで、夜ご飯奢るからさ」
「んー、考えとくわ」
私はそんな晩ごはん代が浮く方がいいか、朝から学校へ行くかですごく迷った。
誠凛のことは気になってたし、テツがどれぐらい成長したのか見てみたい。よし、行こう
練習試合当日。私と涼太くんで、誠凛さんたちを迎えに行く。
「火神くん、ナミさんです」
「よろしく!火神ちゃん!」
「ちゃん!!?」
ーーーーーーーーーーーーーー
誠凛さんは体育館に入って驚いた。当たり前か。半面しか使わないのだから。これは本当にウチを倒して欲しい。監督イラつくし。あと黄瀬涼太も
そして、試合が始まった。
笠松先輩のボールを一瞬で奪うテツ。さすがね。ここは変わってないわ。そして、テツからのパスを受けて火神ちゃんがゴールを決めた…ってか!!
『ゴールぶっ壊しやがったぁ!!?』
軽くゴールを壊した火神ちゃん。…へえ、面白いじゃない。しかも何か大ちゃんに似てるし
呆然としてる監督をよそにコート全面を使うことになった。
そして、我らがキセキの世代の黄瀬涼太が試合に参加…どうなるのかしら…あら、誠凛の監督さんは気付いたようね。黄瀬涼太のすごさを
女の子に手を振る涼太くんを、笠松先輩がシバく。もっとやってもいい。
次は涼太くんがゴールを決める。さっきの火神ちゃんを模倣して。
ーーーーーーーーーーーーーー
始まってまだ3分なのに、ハイペース。これはノーガードで戦ってるもんだわ。
火神ちゃんがムキになって挑めば挑む程、涼太くんはそれ以上の力で返してくる。今のままじゃ、火神ちゃんは追いすがるのが精一杯ね…
監督さんも同じことを思ったのか、誠凛がTOを取った。
監督がキレる。その顔を見てると、カマキリが餌を食べているところを見る気分になる。おえ
「彼には弱点がある。」
テツー!がんばってよー!
私は手を合わせて祈った。
監督さんがテツを締める。あの人と気が合いそう…っじゃなかった!!
TOが終了し、試合が再開される。すると、いきなり笠松先輩が3Pを決めた。やだ、かっこいい
「笠松先輩かっこいいー!!」
「うっせぇ!!バカナミ!!!」
巨乳好きのくせに
テツのミスディレクションに慣れたのか、だんだんパスを取られなくなった海常。ジワジワ差は開いて行く。
すると、火神ちゃんが大声で笑いだした。どうやら、涼太くんが何か言ったらしい。でも、火神ちゃんは、とても嬉しそうな笑顔だった。何か、強敵と出会えて嬉しい、みたいな。大ちゃんみたいね…
ーーーーーーーーーーーーーー
休憩に入り、誠凛さんの方は、火神ちゃんの作戦で行くみたいだ。
休憩が終了し、両者コートに戻る。何か変わったっぽいけど…分からない
「ッテツと連携でゴールを!?」
こんなの、並技じゃないわよ!!!涼太くんも動揺してる…
次はテツはメガネの人にパスを投げた。そのメガネの人は、涼太くんが防ぐ前に受け取り、3Pを打つ。
「ま、どうせ黄瀬には勝てねーって」
「…1人でならね。2人なら、勝てるわ。」
あの2人なら、ね…!
すると、テツが涼太くんのマークについた。これにはさすがに、誰も予想だにしてなかったらしい…もちろん私も
さて、どうなるのかしら…
「黄瀬についてんのって…すげーパスしてたやつだろ?」
「え、うそ。見てねー」
「ってゆーか…」
『相手に…なるわけねえーーーッ!!!』
初めて見た…!テツと涼太くんがこんな風に向き合ってるところなんて!!
涼太くんはドリブルでテツを抜く。すると前に火神ちゃんが現れた。そして、テツが背後からボールを取る。
「止めるんじゃない…!獲るんだ…!!」
そして、一気にゴールを決める。笠松先輩たちも厄介そうな顔をしている。次は3Pを打と
うとした涼太くんを、火神ちゃんが抑え込む。
なるほど。つまり平面はテツが、高さでは火神ちゃんがカバーするってことね…!!
すると、涼太くんの手がテツに当たった。テツの頭からは、血が流れる。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ッテツ!!」
急いでテツの元に駆け寄る。
「監督さん!早く手当てを!!」
「ナミさん、大丈夫です。まだまだ試合はこれから…でしょう…」
「黒子ォーーー!!!/テツゥーーー!!!」
何倒れながら言ってんのよ!!
「…どうする」
「黒子くんはもう出せないわ。残りのメンバーでやれることやるしかないでしょ!」
私は誠凛さんの作戦会議を黙って聞いとく。だってテツが心配だもの。私はバスケ部じゃないから監督に怒られても無視無視。
「早いけど“勝負所”よ、日向くん!」
3P決めてた人って、日向くんってゆーのね。ってゆーか、“勝負所”ってなに?
「黄瀬くんに返されるから、火神くんOF禁止!DFに専念して。全神経注いで黄瀬くんの得点を少しでも抑えて!!」
「そんな…それで大丈夫なんで…すか?」
確かに。テツがいないのに火神ちゃんをDFにまわしていいの?
「大丈夫だって。ちっとは信じろ!」
「でも…」
「大丈夫だっつってんだろダアホ。たまには先輩の言うこと聞けやころすぞ!」
笑顔でそう言う日向くんには、赤髪のあのお方を思い出させられる。ってゆーか何?怖いんだけど…
「ったく、今時の一年はどいつもこいつも…もっと敬え!センパイを!そしてひれふせ!!」
「スイッチ入って本音漏れてるよ、主将」
え、あの人主将なの!?うそ、こわっ!日向くんの変わりように、火神ちゃんがすごく驚く。すると、火神ちゃんにイケメンな人が近付く。
「あー、気にすんな。クラッチタイムはあーなんの」
「……?」
それでも分かってないみたいな火神ちゃん。うん、私もよ
「とりあえず、本音漏れてる間はシュートそう落とさないから。OFは任せて、お前はDF死にものぐるいでいけ」
か、かっこいい…!笠松先輩とはまた違うかっこよさ!誰だろ、あの人…!
「…監督さん、あの人たちって?」
「あいつらは…って何で膝枕してんの!?」
「いい機会だったんで」
「ハァ…あいにくウチは一人残らず…諦め悪いのよ」
そう言う監督さんの顔は、すごくかっこよかった。何?誠凛ってかっこいい人多くない?
「優しい時は並の人!スイッチ入るとすごい!でも怖い!!二重人格クラッチシューター日向順平!!」
に、二重人格…?ああ、赤髪のお方が脳裏に…
「沈着冷静慌てません!クールな司令塔!かと思いきやまさかのダジャレ好き!伊月俊!!」
し、司令塔…?赤髪のお方がはっきりと脳裏に…!ってゆーかこの人、伊月さんってゆーのね
「仕事キッチリ縁の下の力持ち!でも声誰も聞いたことない!!水戸部凛之助!!」
誰も声を聞いたことがないって…相当な無口じゃない!!会話とかどーしてんのっ!?
「なんでもできるけど、なんにもできない!Mr.器用貧乏!小金井慎二!!」
最後の人、扱いひどくない?まー、かわいいからコガって呼ぼう。
これが誠凛ね。おもしろいわ、やっぱり!
「…ナミさん、約束します。」
「え?」
「僕はキセキの世代に勝ちます。そしたらまた、バスケしましょう。みんなと、一緒に。」
そう言いながら私の手を握るテツ。そして、コートへ向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
慣れたのにもう戻ってやがる、って顔ね。20分試合に出てないのよ。当たり前じゃない。
そしてついに、同点まで並んだ。
涼太くんのフインキも変わる。そして、一気にシュートを決めた。ここからは、ランガン勝負ね
残り15秒で同点…!どうすんのよ!
残り7秒の時、笠松先輩のシュートを火神ちゃんが抑えてボールを取る。そして、テツにパスをまわす。
テツはシュートなんてできないはず…!
「っ、パスミス…?」
ううん、違う!!火神ちゃんが取った!でも、涼太くんが防ごうと飛ぶ。
だけど、飛んでる時間は火神ちゃんの方が長い
「これで終わりだからな!!!」
試合終了と同時に火神ちゃんが決めた。
点数は100対98…ってことは
『うおおおお!誠凛が!?勝ったぁぁ!!!』
テツが、火神ちゃんが、誠凛が勝ったんだ!!監督さんが私に抱き付いてくる。私は涼太くんの方を見た。
初めて感じる敗北に、涙を流していた。
「え、黄瀬泣いてね?」
「いや、悔しいのは分かっけど…たかが練習試合だろ」
私は敢えて涼太くんを励まさない。だって、今励ますのは私の役目じゃないから。
つーかうっさいのよ。あんたたち試合出てないじゃない。涼太くんの気持ちも分からない癖に。…まあ、私もあんまり分かんないけど。でも、あの人たちなら分かるわよね
「っのボケ!メソメソしてんじゃねーよ!!」
「いでっ!」
「つーか今まで負けたことねーって方がナメてんだよ!!シバくぞ!!!」
笠松先輩が涼太くんの背中を蹴る。
「そのスッカスカの辞書に、ちゃんと“リベンジ”って単語追加しとけ!!」
「整列!!100対98で誠凛高校の勝ち!!」
『ありがとうございました!!!』
ーーーーーーーーーーーーーーー
「次はI.Hね!がんばりなさいよ!」
「あんた、ウチのこと応援してもいいのか?」
「さっき黒子のこと膝枕して、海常の監督に怒鳴られてたしな」
「いいのよ。私はバスケ部じゃないもん。日向くん、俊くん」
「ひゅ、日向くん!?」
「俊くん…」
何でお前だけ下の名前呼び!?ってゆーツッコミは無視して、私は監督さんに頭を下げる。
「お疲れ様でした。では」
「待ってナミちゃん!私は相田リコ。よろしくね」
「っ、はい!!」
私に新しい友達がたくさん増えた。
「テツ、火神ちゃん、涼太くんに勝ってくれてありがとう。」
それだけ言って私は、涼太くんを探しに行った。
涼太くんを探しに中庭に行くと、水道のところで黄色頭がしゃがみ込んでいるのを見つけた。
私はその黄色頭に駆け寄る
「涼太くん」
声を掛けると俯いてた涼太くん顔を上げる。
「ナミっち…」
目が赤くなってて、さっきまで泣いてたことが分かる。
でもあんたは、弱ってるところを人に触れられたくない男だから、触れないであげるわ。
水道に腰掛けて、しゃがみ込んでいる涼太くんの頭をぽんぽんと撫でた。
すると涼太くんがガバッと立ち上がり、私もつられて立ち上がる。
そして、私の胸に顔を埋めた。
普段は女の子の目を気にしてぶん殴るけど、今日は何も言わず、されるがままにしておいた。
「もうちょっと、このままでいさせて」
「…うん」
涼太くんが私の胸の中で弱々しく呟いた。
「俺、かっこ悪ぃっスよね…余裕こいて、本気出して負けたんスもん…」
「私は、本気を出して負けたことはかっこ悪いとは思わないけど。」
私は弱々しく喋る涼太くんの背中をぽんぽんと叩く。
「大丈夫。本気のあんた、かっこ良かったわ。次はI.Hでしょ?誠凛さんにも言ったけど、がんばりなさい」
「ナミっち…」
「それに…私は今の涼太くん、好きよ。」
本気で、勝つために、お遊びなしで頑張るあんたは、すごくかっこ良かった。
「だから、いつまでも下を向かない!私の知ってる黄瀬涼太は…「ナミっち〜!!」
「…は?」
涼太くんが私を抱き締める。ってゆーかさっきのシリアスは!?
「やっと俺と付き合ってくれるんスねー!!」
「アホかァ!!私が言ってんのは試合中の涼太くんが好きってこと!!一言も付き合うとか言ってないでしょ!!!」
涼太くんを引っぺがして、殴る。再起不能にしてやろうか
「だいたいねぇ、あんたと付き合うくらいなら、どこぞの御曹司か医者の息子と付き合うわよっ!」
「ひどいっ!俺だって結構稼いでるっスよ?モデルで」
「うっさい!!」
もう2発げんこつをお見舞いする。でも、いつもの調子が戻って良かったわ。
「…そろそろイチャつくのもやめるのだよ」
「え…」
嘘でしょ、この声と喋り方は…
「しん、たろー…?」
「久しぶりなのだよ、ナミ。それより黄瀬、何ださっきの試合は「真太郎!!嘘、本物!?何で神奈川にいるの!!?」
真太郎に抱き付いて、頬をペチペチ叩く。ナミっちーと泣いてる駄犬は無視だ。
涼太くんを探しに中庭に行くと、水道のところで黄色頭がしゃがみ込んでいるのを見つけた。
私はその黄色頭に駆け寄る
「涼太くん」
声を掛けると俯いてた涼太くん顔を上げる。
「ナミっち…」
目が赤くなってて、さっきまで泣いてたことが分かる。
でもあんたは、弱ってるところを人に触れられたくない男だから、触れないであげるわ。
水道に腰掛けて、しゃがみ込んでいる涼太くんの頭をぽんぽんと撫でた。
すると涼太くんがガバッと立ち上がり、私もつられて立ち上がる。
そして、私の胸に顔を埋めた。
普段は女の子の目を気にしてぶん殴るけど、今日は何も言わず、されるがままにしておいた。
「もうちょっと、このままでいさせて」
「…うん」
涼太くんが私の胸の中で弱々しく呟いた。
「俺、かっこ悪ぃっスよね…余裕こいて、本気出して負けたんスもん…」
「私は、本気を出して負けたことはかっこ悪いとは思わないけど。」
私は弱々しく喋る涼太くんの背中をぽんぽんと叩く。
「大丈夫。本気のあんた、かっこ良かったわ。次はI.Hでしょ?誠凛さんにも言ったけど、がんばりなさい」
「ナミっち…」
「それに…私は今の涼太くん、好きよ。」
本気で、勝つために、お遊びなしで頑張るあんたは、すごくかっこ良かった。
「だから、いつまでも下を向かない!私の知ってる黄瀬涼太は…「ナミっち〜!!」
「…は?」
涼太くんが私を抱き締める。ってゆーかさっきのシリアスは!?
「やっと俺と付き合ってくれるんスねー!!」
「アホかァ!!私が言ってんのは試合中の涼太くんが好きってこと!!一言も付き合うとか言ってないでしょ!!!」
涼太くんを引っぺがして、殴る。再起不能にしてやろうか
「だいたいねぇ、あんたと付き合うくらいなら、どこぞの御曹司か医者の息子と付き合うわよっ!」
「ひどいっ!俺だって結構稼いでるっスよ?モデルで」
「うっさい!!」
もう2発げんこつをお見舞いする。でも、いつもの調子が戻って良かったわ。
「…そろそろイチャつくのもやめるのだよ」
「え…」
嘘でしょ、この声と喋り方は…
「しん、たろー…?」
「久しぶりなのだよ、ナミ。それより黄瀬、何ださっきの試合は「真太郎!!嘘、本物!?何で神奈川にいるの!!?」
真太郎に抱き付いて、頬をペチペチ叩く。ナミっちーと泣いてる駄犬は無視だ。
「触るな!…黄瀬、さっきの試合は何だ?まあ…どちらが勝っても不快な試合だったが」
メガネをカチャッと上げる仕草は相変わらず癖のようだ。ナミっちの手を払って俺の方を見る緑間っち。…ナミっちのことは引き離さないんスね…
「サルでもできるダンクの応酬。運命に選ばれるはずもない」
「帝光以来っスね。つか別にダンクでも何でもいーじゃないスか。入れば」
ぶーっと頬を膨らますと、緑間っちから離れたナミっちが頬袋を潰してくれる。…指グリグリすんのやめて!痛いっス!!
「だからお前はダメなのだよ。近くからは入れて当然。シュートはより遠くから決めてこそ、価値があるのだ」
ってゆーか、この人の指のテーピングは相変わらずだな…
「俺は人事を尽くしている。そして、おは朝占いのラッキーアイテムは必ず身につけている。だから俺のシュートは落ちん!!!」
毎回思うんスけど…最後の意味が分からん!!これがキセキの世代No. 1シューター…
「真太郎、メガネ貸して!…だから俺のシュートは落ちん!!!…ブッ、あははは!!」
「返すのだよ!!」
「ブフッ、ギャハハ!似てるっス!!」
ナミっちが緑間っちのメガネを取ってかける。そして、低い声で先ほどの緑間っちの真似をする。ついつい吹き出してしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、真ちゃんいたいたー」
「え、あんた真ちゃんって呼ばれてんの?ぷぷっ、かわいいじゃない」
「うるさいのだよ。」
「しかも友達できたの?これは大ちゃんに報告ね!」
「うるさいのだよ!あいつは下僕だ」
「照れなさんな」
「うるさいのだよ!!」
真太郎と別れて、涼太くんと2人で並んで帰っているとステーキボンバーという店からテツが出てきた。
「テツ!」
「あ、ナミさん。…と黄瀬くん」
「…黒子っち。ちょっと…話さねぇスか」
「……?」
テツに会えたことに嬉かったけど、今の私はそれよりも違うことに興味がいった。
超ボリューム4kgステーキ
30分以内にたべきれたら無料
これ、たべれる人いんの?すっごく気になる…それにお腹も空いたし
「ここじゃあれなんで場所移動しよ。行くっスよ、ナミっち。…あれ?」
「ナミさんならワクワクしながら、そこの店に入って行きましたけど」
「ハァ…ナミっち〜…」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ステーキボンバーに入ると誠凛さんが勢揃いだった。
邪魔にならないように端のほうに座って取り敢えず普通サイズのステーキを注文する。
店の人は誠凛さんの方を見て涙を流していた。私も見てみると、火神ちゃんがぱくぱくとボリュームステーキを完食していた。
り、リスみたいに食うとる…
財布を見ると、お金が少し足りなかった。…仕方ない。お店の人を読んで、潤んだ目で少しシャツのボタンを開けて話す。
「お金が少し足りないんですけど…」
「お、おまけします!おまけ!!」
「やだ!ありがとうございます!!」
ガバッとお店の人に抱き付く。チョロいもんよ、男なんて
店の人にヒラヒラと手を振って外にでると誠凛さん達が慌てていた。
「どうしたの?リコさん」
「あら、ナミちゃん!黒子くん見てない?」
「あー、なんかさっき黄瀬涼太と話をするって…」
最後まで言い終わるうちに、何だってー!?と叫んで誠凛の人達はテツを捜しにいった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
涼太くんどこに行ったんだろ、と思って携帯を開くと、ストバスが出来る公園に黒子っちといるから、というメールがきていた。
そちらに向かおうとしたら火神ちゃんを見つけた。
「火神ちゃん、テツの居場所分かったわよ」
「まじで?案内してくれ」
ストバスの公園につくと涼太くんとテツが深刻そうな話をしていた。だから火神ちゃんと2人でこっそり話を聞いていた。
といっても私には何のことだかさっぱり分からなかったので、早々飽きていた。
ボーっとしているといつの間にか隣りに居たはずの火神ちゃんがいなかった。
あれ?と思い涼太くんたちほうを見ると、涼太くんと火神ちゃんが居た。
「テツがいない」
キョロキョロと辺りを見るとストバスのコートでテツが不良相手に喧嘩売っていた。私は思わず駆け出す。
「はぁ?いきなりなんだてめぇ」
不良がテツの胸倉を掴んだところでようやく辿り着いた
「ちょっと!そいつを離しなさいよ!」
「ナミさん?」
「あ?んだこの女…お、可愛い顔してんじゃねぇか」
そう言って不良どもの手が顔に触れたのでパシッと振り払う。
「触んないで」
「気の強ぇ女も嫌いじゃねえぜ」
と不良どもが近づいてきたと思ったら私と不良どもの間にテツが割って入った。
「ナミさんに近づかないでください」
「あ?なんだこら…そうだ、バスケで勝負してやる。負けたらこの女は貰うぞ」
は?何言ってんのよ。見るからに貧乏そうな癖に、と言ってやろうと思ったらなんだかテツがやる気になっていて言い出せなかった。
「あのー…俺らも混ざっていいっスか?」
背後から声がしたので振り返ると涼太くん火神ちゃんがいた。
「ったく、何やってんだテメーら。まぁいい、5対3でいーぜ。かかってこいよ」
火神ちゃんが啖呵を切ると相手の不良どもは怯えていた。
涼太くんにブレザーとネクタイを渡され、またかと思いながら受け取る。するとテツと火神ちゃんがこれもお願いとジャージを渡してきたので涼太くんのブレザーを地面に落として2人のジャージを受け取った。
「ナミっち酷い!」
と抗議を受けたので仕方なく拾ってやる。そしてブレザーを羽織った。
勝負は瞬殺だった。
もちろんテツたちの勝ち。
「おまえは!何を考えてたんだ!!あのまま喧嘩とかになってたら勝てるつもりだったのかよ!?」
「いや100パーボコボコにされてました」
テツが力こぶを見せるも、全くない。私のほうがあるんじゃないの?
私は羽織っていたブレザーを脱いで、ネクタイと一緒に涼太くんに渡しに行った。
「ナミっちも、自分が女の子ってこと自覚して欲しいっス。まじで俺心臓止まるかと思ったんスから」
「でも「でもじゃない。いくら強くても男が本気出したらナミっちだって勝てないかもしれないんスから」
涼太くんにそう言われて、むぅ…とむくれる。
「黄瀬くんの言う通りですよ、ナミさん」
テツにまで言われて眉根を下げる。そしたら火神ちゃんに頭をガシガシ撫でられた。
「あんま無茶すんなよ」
「お父さん!!」
「誰がお父さんだ!!…ってうおっ!!」
抱き付くと、不器用ながらも受け止めてくれた
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「じゃ、俺達はそろそろ行くっスわ…最後に黒子っちと一緒にプレーもできたしね!」
そう言って綺麗な顔で笑った涼太くんに無意識に見惚れてて、柄にもなく心臓がドキドキした。
すぐに我に返ってテツと火神ちゃんにジャージを渡した。
「あと火神っちにもリベンジ忘れてねぇっスよ!」
「火神っち!?」
「良かったわね。認められた証拠よ」
「良くねぇよ!」
「じゃあね。テツ、火神ちゃん」
「はい」
「おう、またな」
そして私は待っててくれた涼太くんの隣りに並ぶ。
「そういえばナミっち、なんでシャツのボタン開いてるんスか?」
「げっ!!こ、これは…熱くて…」
「また男誘惑して、おまけしてもらったんスね!?危ないからやめてって言ってたじゃないっスか!!」
「ご、ごめんごめん!…きゃっ」
走り出そうとすると、こけそうになって涼太くんが腕を咄嗟に掴んでくれた。
そのまま涼太くんの手は私の手をがっしり繋いだけど、今日はこのままにしておこう
「涼太くん…元気出しなさいよね」
やっぱ。負けた後だからか、どこと無く元気がなかった涼太くん。なんだかこっちが調子狂う。
「もう、だいぶ元気出たっスよ」
涼太くんの言葉に、自然と笑みが浮かぶ。
「…ありがとう、ナミっち。ナミっちが居てくれたから元気出たっス。…出来れば、これからもずっと側にいて欲しいかなー、なーんて…」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「…あ、この音楽好きだわ」
「あれ!?いつの間にイヤフォンしてたの!?今俺ちょー重要なこと言ったのに!」
(何よこれ、何でこんなにドキドキするのよ!何でこんなに駄犬がかっこ良く見えんのよ!)
「俊くーん!」
私はよく誠凛さんにお邪魔している。目的は伊月俊くん。あとテツとか
「ナミ、また来たのか」
「火神ちゃん!だって俊くんに会いたくて!」
「君の瞳に人見知り!!キタコレ!」
「うっせえよダアホ!ナミも物好きだよな…コレがいいとか」
「このちょっと残念な感じがいいんですー!…あ、そうそう…リコさんいる?」
とうとう大ちゃんたちにも勝ったらしい誠凛さん。だから、海常、桐皇、秀徳の監督が話し合って決めたのだ。
この3つの学校の、合同合宿を。
「カントクならもうすぐ来ると思うぞ」
鉄平さんと一緒に、リコさんが来た。私は俊さんから離れて、2人に近付く。
「リコさん!少しいいですか?」
リコさんを呼び止めて、合同合宿の話をする。リコさんはその話を聞いて、嬉しそうだった。
「みんな!集合して!!」
リコさんの声で、みんなが集合する。
「来月、誠凛、桐皇、秀徳の合同合宿が行われることになったわ。各自気合い入れて行きましょう!」
「でも、どこで合宿なんかするんだ…です?」
火神ちゃんが、みんな思ったであろう疑問をぶつけて来た。
「みんなは最近、スポーツ選手の為の新施設がオープンしたのは知ってるわよね?」
「そこはジムやプール、様々なスポーツのコートがあるの。それだけじゃない!」
「ホテルも付いてるの。そこに、私たち三校が貸し切りで合宿するの。ま、そこの館長さんが特別に貸してくれたんだけどね」
「とにかく、バスケをするには充分な場所ってことだな!…です」
リコさんと交互で説明をする。そろそろ部活が始まりそうだから、私は言いたかったことをテツと火神ちゃん、誠凛の皆さんに伝える。
「大ちゃんの笑顔を見せてくれてありがとう!」
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「俊くん!合宿の間、ずっとそばにいられるわね!」
「そばにいたら蕎麦のびる!キタコレ!」
「黙れ伊月!!そして羨ましい!!!」
「テツー!火神ちゃん!!」
「俺にも抱き付いてっス〜!ナミっちー!!」
「どっから湧いて来たデルモ!!」
ついに来た合同合宿の日。私はバス停に涼太くんと行く。もちろんバスも専用のバスだ。
「大ちゃん!!」
「ナミ!でかくなったじゃねぇか」
「触るなっ!!!」
大ちゃんに駆け寄ると胸を揉まれた。あとであいつの財布から5000円ほど抜いておこう…
「ナミさんもマネージャーでしたっけ?」
「臨時マネージャーっスよ、桃っち!」
「どうせ晩メシ奢るとか言われたんだろ」
「違うわよっ!!」
失礼極まりない大ちゃんのふくらはぎを思いっきり蹴る。痛がる大ちゃんを他所に、私はテツや俊くん、火神ちゃんを探す。
「遅くなってすみません!」
リコさんが来た。…ということは、誠凛が来たんだ!!
「テーツーくん!!!」
「俊くーん!!」
私は俊くんに、さつきはテツに抱き付く。その後を涼太くんと大ちゃんが追って来た。
「ナミっち!今すぐ離れて!!それか俺にもやって!」
「んー!むんー!んん!」
「おい、お前のおっぱいで埋もれて死にかけてんぞ」
「いやーっ!!俊くーん!!」
「だから羨ましいっス!!!」
駄犬がうるさいので、俊くんから離れた。すると即座に駄犬と大ちゃんが私にくっ付く。
「…熱いし重い!!」
「えー!じゃあこうっスか?」
涼太くんのせいで、私は大ちゃんと涼太くんと手を繋ぐことになった。ったく、今からバスに乗るってゆーのに
「緑間たちは?」
「もう!大ちゃんってば聞いてなかったの?ミドリンたちは現地集合だよ!」
バスは学校ごとに違うから、私は涼太くんの隣に座る。
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「ナミっち最近冷たくないっスか〜!?」
「うっさい!デルモが調子乗るんじゃないわよ」
「いだだだだ!頭蓋骨割れるっス!!」
(あんたの顔見てたらドキドキすんのよ!そして!ハラハラもする!!はっきり言うと疲れるのっ!)
ついたそこはすごく綺麗で、広かった。
「ナミっち!見学行くっスよ!」
「うん!」
涼太くんに手を引っ張られながら走る。そこは本当に綺麗で、もう学校に戻りたくないと思うほどだった。
「プールもあるっスね!あとで行こう!」
「いいわよ!あ、このプールの隣がジムなのね…」
すると、私の携帯が鳴った。笠松先輩からだ。
『笠松先輩?』
『2人共戻れ。もうすぐ合同の練習試合が始まるぞ』
『分かったわ。』
「涼太くん、戻るわよ。もうすぐ合同の練習試合が始まるって」
「練習試合っスか!?早く行くっスよ、ナミっち!」
急いで海常高校のミーティング室へ向かう。入ると、監督に遅いとこっぴどく叱られた。
「朱崎は選手のドリンクの用意とタオル、救急箱の用意をしとけ」
私が監督に言われたことをしている間、みんなは試合の作戦を考える。今回は、75点マッチらしい
ーーーーーーーーーーーーーーーー
みんなにドリンクを渡して、試合を見る。途中、監督に言われて次の特訓の準備をする。
「あら、ナミちゃんじゃない」
「リコさん!」
「私もいますよ、リコさん!ナミさん!」
「げっ!」
筋トレ道具を準備し終わると、リコさんとさつきに会った。リコさんはさつきが苦手なのね…
「ナミさん、どうせ試合終わるまで時間ありますし、プール行きませんか?」
「いいわね!リコさんは?」
「私も行こうかしら。プールの下見したいし」
三人で、更衣室に向かった。一応お互いの主将と監督に告げてから。
三人で更衣室に向かい、水着に着替える。
桃井は相変わらずデカイ…!ナミちゃんの方をチラッと見ると、前よりも大きくなっていた。小娘がFなら、この娘はJってところかしら…どうせ私はギリギリBよっ!!
「ナミさんの水着かわいいですね〜」
「ありがとう。あんた中学ん時より大きくなってない?」
「そうですか?」
ナミちゃんは縞柄の虹色の水着、私と桃井は前と同じ水着。…ってゆーか、胸の話はやめてくれる!?
「きもちいー…」
プールに飛び込み、ぷかぷかと浮くナミちゃん。私と桃井も後に続く。
「そうだ、ちょっと競争しない?」
「いいですよ。リコさん、審判お願いします」
25Mクロールでナミちゃんと桃井が競争する。ナミちゃんの泳ぎはすごく綺麗で、速かった。
「やっぱり速いですね、相変わらず」
「まあね。」
笑い合う私たち。しばらく泳いだ後は、お互いのチームのキセキの世代について話す。
「黒子くんのあの影の薄さは、試合の時はいいんだけど、普通の時はちょっと困るのよ…」
「ウチは試合するってなったらギャラリーが湧いて来て…タダとかありえないんだけど…」
「私はもう少し真面目に練習して欲しい…堀北マイちゃんの写真集燃やそうかな…」
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あっという間に時は過ぎて、そろそろあがらないといけない時間になった。
「そろそろあがらないと…あんたたちもよね?」
「そうですね…早くあがりましょう」
プールから出て、私は誠凛の、桃井は桐皇の、ナミちゃんは海常のそれぞれミーティング室へ向かった。
コート上なら敵だけど、たまにはいいわね…こんなことも
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「ナミっちー!!プールに行くなら呼んでよ!俺も行きたかったっス!!」
「ごめんごめん…って、あれ俊くんだ!!俊くーん!!!」
「ナミか。…はっ!水着の人を見すぎ!キタコレ」
「ナミちゃんは早く水着から着替える!ってゆかー、伊月くんから離れる!!伊月くんと黄瀬くんは早くミーティング室に行きなさい!」
「じゃあね!リコさん、俊くん!」
「あ、待ってっス〜!」
(相当揺れてるわね、ナミちゃん…黄瀬くんももう少し押せば行けるんじゃない?)
きつい特訓も夕食も終えて、今は7時。10時までは自由時間だ。
だから私と涼太くん、テツと火神ちゃん、桜井と大ちゃん、真太郎と高尾くんはプールへ向かう。この時間は誰も使ってないはずだ
「すげー!めっちゃ広いじゃん!!」
「誠凛は確かもう使ったのよね?」
「はい。思い出しただけで吐きそうです」
テツがそこまで言うってことは、本当にハードだったってことが分かる。火神ちゃんも顔色が悪い。
「お前…やっぱ成長しただろ」
むにゅっ、と私の胸を揉む大ちゃんを私と火神ちゃんで殴る
「何揉んでんだよ!!」
「触るなッ!!」
「いっでぇ!!」
高尾くんは笑い転げて、テツと真太郎は冷たい目で見て、桜井は謎にすいません、と謝る。
「あのねぇ、この胸は俊くんの為にあるの!」
「違う!俺の為っス!……そうだと言って!」
泣きながら言う涼太くんを無視すると、もっと泣くので適当にはいはい、と相槌を打つ。
「んだよ、減るもんじゃねぇし」
「屁理屈言ってんじゃないわよッ!…ったく、あんたの財布から1万円抜いとくから」
「てめ、ふざけんな!!」
涼太くんが羽織っていたパーカーを借りて、みんなが泳いでるところをイスに座って見る。
「…テツ、あんたもっと頑張りなさいよ…」
「……」
「黒子ォーー!!寝るなー!!」
疲れ果ててバテたテツをプールから引き上げる。テツを寝かせて私はプールに入った
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「次はあんたたちの足腰を鍛えるわよ。ペアになって、肩車しなさい」
私は涼太くんに、桜井は大ちゃんに肩車をしてもらう。やはり、すいませんと謝る。復活したテツは火神ちゃんに、高尾くんは真太郎に。
「今から私と涼太くん、真太郎と高尾くんペア対桜井と大ちゃん、テツと火神ちゃんペアで水上バスケをしてもらいます!」
さっき、用意した水上バスケ用のゴールとビーチボール。ルールはさほど普通のバスケとは変わらない。
「だけど、肩車が崩れることと、下の人がシュートを決めるのはダメ。分かった?」
「そうだナミちゃん!罰ゲーム付けよ、罰ゲーム!」
「さすが高尾くん!冴えてるー!!」
「負けたチームは誠凛の監督に頼んで特別特訓メニューを作ってもらうのだよ」
「いいわね!それにしましょ!」
高尾くん真太郎と盛り上がっていると、火神ちゃんが待て!と言ってきた
「黒子がシュートとか無理だろ!!」
「じゃあシュートは高尾くんに頼みなさいよ。それか、テツに肩車してもらう?」
「絶対いやです。下には行きません」
「はえーよっ!!俺の意見無視かっ!」
「無視です。」
始めるわよ、と声をかければぶーぶー文句言いながらも整列する火神ちゃん。
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「うちが負けても私は罰ゲームないから」
「「は!?」」
「お前だけずるいのだよ!!」
「だって私選手じゃないし」
「「「はーーっ!!?」」」
「ぎゃはっ!さっすがナミちゃ〜ん!!」
ナミが考えた肩車水上バスケに、最初は余裕をかましていた下の男たちだっが、人が上に乗っていて、更に水の中を走るというペナルティに余裕がなくなったようだ。
「またボール落とした!しっかりしなさいよ!このままだと0対0で引き分けよ?」
「ちなみに…引き分けん時はどーなんだよ…罰ゲームって…」
「バテバテね、大ちゃん…。…そうね…引き分けの時はリコさんとさつきの料理の試食係」
「火神くん、絶対勝ちましょう」
「桃井は知らねーけど、監督はやばいからな」
「桜井、本気出すぞ…」
「スイマセン、自分も桃井さんの料理は…スイマセン!」
「高尾、シュートを決めろ。死ぬのだよ」
「分かってる!さすがに俺でも分かる!!」
「あ、勝ったらナミっちの手料理ってのは?」
「っ何バカなこと言ってんのよ!!」
「いだだだだだ!!モデルの顔!!!」
ナミが足で黄瀬の顔を挟む。黒子と青峰がもっとやれ、と言うので更に力を入れるナミ。
「とにかく!食べたくないから勝ちなさい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナミって…バスケ意外とできるんだな…」
「あら、その辺の小娘とは一緒にされちゃ、たまんないわ」
桜井からのパスを受け取り、ナミが華麗にシュートを決めた。そんな彼女を、火神が意外そうな顔をして見る。
「ナミさんは運動神経が良くて、中学の時はなんだかんだ言って体育で5を取ってました。」
「体育だけなのだよ、こいつの取り柄は」
「あんたたち、気ィ抜いてたら点取るわよ」
そう言って、またシュートを決めるナミ。今は5対3でナミと黄瀬、桜井と青峰が勝っている。引き分けの時の罰ゲームにより、下の男たちにヤル気が出てきたのだ
「くそっ!なんで黒子はあのパスが使えねーんだよ!」
「火神の存在感がでかいのだよ」
「ぶっ!それ言っちゃダメでしょ真ちゃん!」
とは言いつつも、黒子からのパスを受けてシュートを決める高尾。
「あ、黄瀬ェ!テメェちゃんとDFしとけよ!」
「青峰っちの方が近かったっス!!」
「お前が乗っけてんのはナミだろ!俺が乗っけてんのは桜井!!男だ!」
「でもあんまり体重は変わらないと思うっス!だから青峰っちが行くべきだったっスよ!」
「喧嘩するなッ!!」
喧嘩を始めた黄瀬と青峰の顔を蹴るナミ。喧嘩してる最中も点は決められ、同点となった。
「分かってんの?罰ゲームのこと。このままだと負けるわよ」
「だってナミっち!!青峰っちがDF行かないから!」
「はァ!?お前だって行けただろ!」
「だ〜か〜ら〜…喧嘩しないでって言ってるでしょッ!!!」
またまた、ナミの蹴りが黄瀬と青峰の顔に入る。その衝動でバランスを崩してしまった青峰は黄瀬にぶつかり、黄瀬もバランスを崩した。
「え、嘘でしょ…?」
「青峰さん…?」
バシャーン、と音を立てて崩れるナミと黄瀬、桜井と青峰。
「っ何バランス崩して…んのよ…」
ナミの視線は胸へ行く。なんと、青峰がナミの胸に顔を埋めていたのだ。
「んだァ?これ…」
「ひゃっ」
青峰の手は、ナミのそれを揉む。顔を真っ赤にした火神と緑間が、青峰をナミから引き離し、黄瀬と黒子がナミをガードし、高尾は笑い転げ、桜井は謝る。
「何やってんだアホ峰ーーーーッッ!!!!」
「さ、最低なのだよ!!」
「ナミさん、青峰くんから離れましょう」
「事故だとしても美味しすぎる展開っス!!」
「ギャハハ!!やっぱおもしれぇ!!」
「スイマセン!本当スイマセン!!」
結局、勝負は高尾くんと真太郎、テツと火神ちゃんチームの勝ちとなった。罰ゲームは、明日受けることになっている。
「私お風呂行ってくるわね」
「え、でもナミっち、今9時半っスよ?間に合うんスか?」
「大丈夫よ、10分であがるわ」
自分の部屋に戻って着替えを持って風呂場へ向かう。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「んーーっ…疲れたぁ」
浴槽は銭湯のように大きくて、更に誰もいないので貸し切り状態だ。
「リコさんにお願いしてから、涼太くんたちには罰ゲームを受けてもらお…」
アホ峰には私が必ずや報いを受けさせてやる…
「…涼太くん、かっこよくなったな…」
中学の時の涼太くんはもっと犬っぽくて、子供っぽかったのに、今の涼太くんは男のヒトって感じがする。
「いやいや、私には俊くんが…!」
俊くんは試合中でも1人だけ冷静で、みんなに指示をして点を取る、すごくかっこいい男のヒトだ。ダジャレも最初は戸惑ってたけど、今となっては可愛く感じる。
(涼太くんがかっこよくなったってだけで、私の心はいつでも俊くんよ!!!)
俊くんのことは本当に好きだし、できるならそばにいたいし、他の誰かに取られるのも嫌だ。そして、一緒にいるとドキドキする。
涼太くんは…好きだし、そばにいたいってゆーか支えてあげたい。私がいないとダメだって…そして、一緒にいるとポカポカする。
(これが恋なのか、どれが恋なのかは分かんないけど…2人のことが大好きってことには変わらないのよね…好きな人はいっぱいいるケド…)
大好きに種類があることも知ってる。でも、違いが分からない。
色々考えているうちに、10分経っていた。いつの間にか頭や体を洗い終えていて、自分の器用さにびっくりした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナミか」
「あ、笠松先輩。先輩もお風呂?」
「まあな。はやく寝ろよ」
「…今は笠松先輩ってことでいいや」
「は?」
「ナミっちー!おはようっス!一緒に食堂行こうゴファッ!!」
「女子の部屋に勝手に入ってくんな!!!」
枕を投げられたはずなのに、ドンッて音がした…本当に枕投げられたのか?
「着替えるからちょっと外で待ってて」
「了解っス!」
最近ナミっちは、誠凛の伊月サンが気になっていて、アプローチをかけている。中学から片想いしてる俺からしたら、もちろん面白くない。
「涼太くん、おまたせ」
「全然っスよ?さ、はやく行こう!!」
俺は練習着だけど、ナミっちは制服の上からパーカーを着ていて、ポニーテールしててとにかく可愛い。
「あ、あんた、今日罰ゲームって覚えてる?」
「げっ!!」
そうだ、今日は罰ゲームを受ける日だ…ってゆーか昨日の青峰っちまじ羨ましいっス!!
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「うわっ、もう結構人いるっスね」
「そうね…あ、俊くんだわ!テツたちもいる!行きましょ!」
俺の手を引くナミっち。完全に桃っちと同じ顔をしている彼女に、胸がチクチクと痛む。
「俊くーん!!」
「ゴフッ…な、ナミか。おはよう」
「おはよー!」
伊月さんに後ろから抱き付くナミっち。俺は頬を膨らませながら黒子っちの隣に座った。
「黄瀬くん、罰ゲーム頑張ってください」
「監督張り切ってたぞ」
ああ、終わったかも…なんて考えてると、ナミっちが俺の前に座った。隣は誠凛の監督さんだ
「リコさん、夜遅くにすみませんでした」
「いいのよ。むしろ、キセキの世代の特訓メニューを考えられるなんて嬉しいわ!!」
監督さんの張り切りを見ると、もっと怖くなった。
「ナミさん、僕たちのことも忘れてません?」
「え、あんたたち勝ったでしょ?特訓メニューしたいの?」
「いえ。ナミさんの手料理が食べたいです。」
ハッとなって黒子っちを見る。この人…たまにものすごい爆弾落とすよな…!
「ダメですか?」
「うっ…そ、それぐらいなら別にいいけど…」
く、首を傾げるなんてあざといっス!!ナミっちもキュンとしないで!!
「じゃあ、夜ごはん楽しみにしておきますね」
「そうだな。緑間たちも呼ぶか!」
黒子っちと火神っちが去る。ナミっちはずっと顔が赤かった。
たまに俺もナミっちの料理は食べるけど…なんか複雑っス!!
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナミの手料理か…俺たちも食べてみたいな。なあ?伊月、日向」
「そうだな。今度作ってくれよ」
「いつでもいいから作ってくれ」
「鉄平さん…日向くん、俊くん…」
「誠凛の人ってなんなんスか!?人のことキュンキュンさせて嬉しいっスか!!?」
今のちゃんとした設定
朱崎ナミ
海常高校1年。合宿の間だけ臨時マネージャー
二年後の姿(Jカップ、ポニーテール)
桃井とお揃いの青のパーカーをよく着る
伊月俊に猛烈アタック中だが
「朱崎さん」
「えっと…あなたは確か…」
「桐皇バスケ部監督の原澤克徳です。」
大ちゃんたちのチームの監督さんが、私に話しかけて来た。
「そうそう、原澤監督!」
「いえ、原澤で結構です。」
「じゃあ、原澤さん…?」
いったい、私みたいな凡人に何の用だろう…リコさんやさつきならまだ分かるけど…
「…で、何の御用ですか?原澤さん」
「…あなたは…何者なんです?」
「へ?」
いきなり何者なんです?って言われても…私は私だし、宇宙人とかじゃなくて普通の人間だし
「桃井さんのように優れたマネジャーの能力がある訳ではない…相田さんのように監督の技量が高い訳でもない…」
原澤さんは、私のことを無視して話していく。…いや、確かにそうなんだけど、はっきり言われたら傷付くわよ!!
「何故、うちの青峰くんや海常高校の黄瀬くん、誠凛高校の黒子くんなどのキセキの世代は、君に一目置いているのでしょう」
何故って聞かれても…みんな中学からの友達だから、みたいな感じじゃないの?
「キセキの世代だけじゃありません。無冠の五将と呼ばれていた木吉くん、誠凛高校や海常高校、うちの桐皇高校のみんなも、君に一目置いている…」
だから、友達だからじゃないの?鉄平さんも、日向くんや俊くんや火神ちゃんも、笠松先輩や由孝も、今吉さんや桜井も、全員友達だから私を気にかけてくれるんじゃないの?
「…原澤さん、私にも分かんないわ、そんなこと」
「?」
「まず、鉄平さんが無冠の何とかって呼ばれてたことも知らないし、みんな友達なだけだし。キセキのみんなも中学からの友達ってだけなんです。」
「…実に興味深いですね…」
そう言うと原澤さんは、私に近づいて来た。何されるかは分からないから、ぼーっと見ていると、頬に唇が…
当たらなかった。
「何してんだよ、あんた…」
「…青峰くんですか…」
大ちゃんの大きくて、黒い手が原澤さんの唇を抑えていた。…つーか、練習サボってるわね?
「こいつは俺らの友達ってだけだ」
「……」
「強いて言うなら…勝利の女神ってやつだな」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナミが応援に来た日は嬉しくて楽に勝てるよ、ありがとう」
「なんか、元気が出てくるっス!!」
「はい。勝たなければ、となりますよね」
「べ、別に嬉しい訳ではないのだよ!!」
「緑間ツンデレお疲れ。ま、ナミが来てる日はヤル気がちげーんだよな〜…」
「…ナミちんは俺らの勝利の女神様だねー」
『は!?』
「だって、俺たちを勝たせてくれるし、みんな大好きだしさ〜ピッタリじゃない?」
「…勝利の女神か…納得っス!」
「女神にしちゃぁ、暴力的だけどな」
「僕も納得です」
「納得しない訳ではないのだよ」
「帝光バスケ部の勝利の女神ー」
「これからも俺たちの応援をよろしく。ナミ」
「…何バカなこと言ってんのよ!」
呆れたように、嬉しそうに笑うナミ。そして、キセキの世代。それを優しい目で見守る虹村。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「わ、私は…ーーー」
何も言えなくなって、原澤さんと大ちゃんを置いて走り出してしまった。
(私は勝利の女神なんかじゃないわ…!)
女神、なんて私には似合わない。
「おいナ「朱崎さん!!」
女神はみんなをバラバラにしたりなんかしない
「朱崎さん!!」
「は、原澤さん!!?イヤーーー!!!来ないでーー!!!」
走ってると、原澤さんが追いかけて来た。スピードを上げるけど、すぐに追い付かれた。
「何なんですか!?話は終わったはずよ!!」
「…先ほどは失礼しました。あなたの気持ちも考えずに、頬にキスなど…」
いや、されてないけど。…にしても、この人って紳士的ねぇ…さつきが言ってた独身って情報、本当かしら?
「あなたは魅力的だ。」
「…は!?」
突然そんなことを言われて、驚かない女はいないだろう。確かに私は魅力的かもしれないけど
「私はあなたに対して、ものすごく魅力を感じました。」
「ど、どうも…」
手の甲に口づけをされ、つい顔が火照ってしまう。
「…たくさんのライバルがいるみたいですが…私はあなたを譲る気はないです。」
「…っ、」
お、大人の余裕がかっこいい…!原澤さんは、私の額にキスをして去って行った。その後に走ってきた大ちゃんが私を抱き締める
「ナミ!お前あの人に何もされてねぇか!?」
「なっ…何もされてない、わ…」
「あの人はこえーからな…もう誰にも取られたくねぇんだよ…」
「へ?何を?」
「ッ、うるせぇ!さっさと戻るぞ!!」
「わっ」
大ちゃんに頭を軽く揺らされる。髪の毛がボサボサになったので、後ろから飛び付いてやる。
「ちょ、テメ、苦しい…」
何だってゆーのよ、本当…でも、心臓がずっとバクバクしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナミ」
「は、原澤さん…その、名前…」
「ああ、これからは私もあなたとの仲を深めようと思いまして…よろしくお願いしますね、ナミ」
「あ、う…」
「あんた犯罪だろ!!やめろ!ナミに近づくんじゃねーよっ!」
「男の嫉妬は見苦しいですよ、青峰くん」
「くそっ…!」
(余裕あるとこが余計ムカつくんだよ…!ナミももっと危機感持て!!)
長かった合宿も今日で終わり。色々あったけど、なかなか良かった合宿だと思う
「ナミ、いつでも連絡してくださいね」
「は、はい…」
「桐皇の監督!!俺のナミっちを誘惑しないでくださいっス!早くバス乗ってくださいよ!」
「おい早くしろ!黄瀬、ナミを死守しろよ!」
と、桐皇の監督とも仲良くなれたし…りょ、涼太くんと大ちゃんのコンビ(?)もなんかできたし…俊くんを落とすことはできなかったんだけど…
「ナミ、また会おうな。手料理も楽しみにしてるぞ。」
「しゅ、俊くん…!」
でも、俊くんに手料理を食べさせてあげる口実もできたし、リコさんやさつきとももっと仲良くなれたと思う。
「次会う時はお互い敵同士ですね。ウチが勝ちますけど。」
「ちょっと、誠凛が優勝をもらうんだからね!勝手に決めないで」
「あら、ウチの男共のことナメないでよ?本気出したらスゴイんだから!」
お互い自分のチームに誇りを持ってる。だから私たちは相性がいいのかもしれない。…秀徳が俺らも女子マネ欲しー、と言ってたのは無視しよう
「行くぞ、ナミ」
「はーい!じゃあね、リコさん、さつき!」
「ええ。また今度、ゆっくり話しましょ」
「ナミちゃん、誠凛にはいつでも来てね」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
笠松先輩に呼ばれて、バスに乗る。隣の涼太くんはブスッとしている。癖で頬袋を潰すと、こっちを向いた。
「ナミっち」
「な、何…?」
「マネージャー、本当に今日で終わるんスか」
「…そうよ?そうゆう約束だったじゃない」
「…何でっスかー!!さっき、誠凛の監督と桃っちと張り合ってたじゃないスか!!」
「それはそれ、これはこれよ!とにかく、合宿中だけの約束だからもうおしまい!!」
ギャーギャー喚く駄犬を笠松先輩が蹴る。もっと蹴ればいいのに
「ナミが元から決めてたことだろ!うるせーんだよお前は!!」
「だって〜!!笠松先輩も寂しいでしょ?ナミっちは他の学校も応援するんスよ!?」
「知るか!!ナミの勝手だろ!!」
すると、笠松先輩の隣に座っていた由孝も一緒に言ってきた。
「笠松の言う通りだぞ。ナミの勝手だ。まぁ、俺はナミの為に勝つよ」
「笠松先輩…!由孝…!成長したじゃない」
「でも俺はやっぱり寂しいっス!!」
「あ、じゃあこうしよう。俺たちが優勝したら、ナミに言うことを1人一個聞いてもらえる」
由孝の案に、涼太くんは目を輝かせた。
「俺、今から考えとくっスね!」
「考えんでいいわ!!」
…これで涼太くんが納得してくれるなら、みんなのヤル気が出るなら、いっか!
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「もちろん俺はナミと付き合ってもらうよ?」
「あ、そうゆう系のお願いはムリです」
「ねえ君!海常の子でしょ? 良かったら連絡先教えてよ」
またコイツらか。 朝の満員電車に揺られながら私は心の中で悪態をついた。 この電車に乗っている人はサラリーマンよりも学生が多い。
恋にお多感な世代が沢山乗り合わせている車内では、遠慮なく興味津々の眼差しが注がれる。
本当、一度きっぱり断ってんだから諦めなさいよ。
精一杯に迷惑な表情を浮かべて席を立つ。 そしてそのまま人の流れに乗って電車から降りる。
後ろからは、えー、シカトー?と大声で叫ぶ声が聞こえる。
周りの乗客から何事かとチラチラ様子を伺う視線が飛び交う。
「…ったく、ほんとに朝から気分悪っ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい朱崎ぃ。お前何で今日はいつもより不機嫌なんだよ。」
放課後、帰り仕度をしていると、友達が恐る恐る話しかけてきた。 手には何やら美味しそうなお菓子が握られている。
「別に不機嫌なんかじゃないわよ。ただ気分が悪くなることがあっただけ。」
「それを不機嫌って言うんじゃないのか?」
苦笑しながらあたしの前の席に座りながら話を聞く体勢を作る友達。
あんなナンパ野郎のことを相談するつもりはないが、鬱憤晴らしに愚痴をこぼす。
「ここ最近しつこい奴等がいてムカつくのよ」
「しつこい奴?ああっ!!」
引っ手繰るように友達の手からお菓子を奪うと、食べながらここ最近朝の電車の中で毎朝しつこくナンパしてくる奴等のことを愚痴った。
「別にナンパなんて私みたいに可愛いければしょっちゅうあるけど、あいつ等ほんっとしつこいんだもん!おまけに朝の電車の中で!! もうちょっとマシなとこでナンパしろっつーの。」
「美人なのも大変だなー。黄瀬にでも頼んで絞めてもらったらどうだ?」
「それも考えたけど、それはそれで面倒臭いし。 ま、このままずっと相手にしなければ向こうも諦めるでしょ。むしろ諦めずに手でも出してきたらその時こそこっちのもんよ!」
「そうですか…まあ、気をつけろよ。」
肩肘を突きながら溜息をもらす友達。なかなか美味しいわねこのお菓子、と友達とお菓子の評論をしていると掃除当番を終えた涼太くんがやってきた。
「お待たせっス、ナミっち」
今日は学校全体で部活がないから、2人でカラオケに行く約束をしていた。 だから朝から気分が悪かった分今日は思い切り遊ぼうと思っていた
「ううん、大丈夫よ。お菓子ありがとう、美味しかったわ。 また明日ね」
友達に礼を言ってから、2人で廊下を歩く。そこへ、黄瀬くーん!!と声高に呼ぶ声。
もしやと思って振り向けば、廊下の奥から駆けてくるのは最近付きまとってくるファンの女の子だ。
「黄瀬くん、一緒にボーリング行かなぁい?」
「あぁ、悪いっスけど今日は…」
涼太くんが断ろうとすると、すかさず後ろからガバリと抱きつくその子。
「行こうよ?ボーリング」
頬を赤らめギュッと涼太くんに抱きつくその子の体からは魅惑的な香水の香りが漂ってくる。
「ごめん、今日は私が涼太くんと約束してるから…また違う日にしてくれない?」
せっかくの気分転換の楽しみを潰されては堪らないと私は咄嗟に涼太くんの腕を掴む。
「あーもー!!うるさいこのブス!!」
パシンと廊下に響く音。 一瞬何が起きたか分からなくて、
「ナミっち!!!」
と言う涼太くんの声に遅れてじんわり掴んでいた腕に痛みが広がる。
咄嗟のことになかなか声が出ないでいると、横からあまり声を荒げない涼太くんが珍しく声を荒げた。
「おい!ナミっちを叩くなんてやり過ぎだ!!謝れよ!!!」
「ふん、あなた黄瀬くんを私に渡したくなくて必死にすがり付いてるんでしょう?しつこく毎日まとわりついて、見苦しくて敵わないわ」
不気味な程不敵に微笑む。 抱きつかれたままの涼太くんが体を捩っる。
「おい!ナミっちは…」
「帰る。」
もう聞いているのも沢山だ。きっと今日は最低の一日なんだ。
朝から気分の悪いことをされたと思ってたら、逆に自分も涼太くんにしつこく付きまとっていると言われる…腹ただしさにカッと体中が熱くなる。
「ナミっち!!」
後ろから涼太くん呼ぶ声を無視して私は走り出した。
『ふん、あなた黄瀬くんを私に渡したくなくて必死にすがり付いているんでしょう?』
電車で揺られる中、頭の中では何度もさっきの言葉が頭を回る。
何なのよ…ファンだからと思っていて、ろくに気にも留めていなかった“女”に本気で心の内を踏み込まれ見下された。
涼太くんに必死にすがり付いている…そんなことは一切思っていない。
そう思うと同時に涼太くんが離れていくことも許せない自分が居る。 腹立だしさや困惑や色んな気持ちがない交ぜになって胸の辺りがモヤモヤする。
「…もう、何だって言うのよ。」
思わず愚痴が口を突いて出た所で聞き覚えのある声に話しかけられた。
「あれー?もしかして君、朝の子だよね?」
パッと顔を上げれば、まさに最悪のタイミングとはこのことだ。 毎朝しつこく電車の中でナンパをしてくる他の学校の生徒が居た。 おまけになんともガラの悪い友達三人も一緒だ。
「ヒュー!こりゃーマジで美人だなぁ」
「だろ?だから嘘じゃないんだって」
「あんまりにも聞いた感じが出来すぎてるからお前の見栄っ張りだと思ってたけど… 本当にこんな別嬪さんが居るとはな…ね、君今帰り?俺たちと遊ぼうよ。」
「おい、抜け駆けすんなよ!大体俺が最初に目をつけてたんだぞ!」
勝手にギャーギャーと盛り上がって、気付けば完全に取り囲まれていた。 他の乗客も遠目に見ている。 どうしてこうも悪いことは重なるわけ?
せめてもの救いか、電車は丁度駅に止まった。 まだ目的の駅まで2個手前だけど、こいつ等に絡まれるくらいなら降りて巻いてしまおう。
無理矢理男たちの間をこじ開け、ドアが閉まる前にと急いで出ようとする。
「ちょっと待ってよ。ねえ、君ほんと冷たいよね…今日の朝もシカトだし。ちょっとはかまってくれたっていいんじゃん?」
「離して。」
「いや〜、怒った顔もやっぱ可愛いー!俺こう言う子はすッげー泣かしたくなるタイプ!!」
「ちょっと!!」
何キモいこと言ってんのよ! 体中の血が一気に沸騰したように熱くなる。
思いっきり腕をひねり上げようとした所で後ろからもう一方の腕も他の男に掴まれてしまった
その間に電車のドアも閉まり、ガタンと大きく揺れて走り出す。 踏みとどまろうと思いながらも咄嗟の揺れに思わず腕を掴まれている男の方へ倒れ掛かった。
すると意味も分からずヒューヒューとはやし立てられ、 その瞬間泣きたくもないのに涙が出そうになった。
何で…何でこんな思いしなくちゃいけないのよッ!!
「ちょっとすみませんっス」
「おわっっ!!!」
「え…」
いきなり横に立っていた男が尻餅を着いたかと思うと、掴まれていた腕が引き剥がされる。
何?と思う間もなく今度は私が勢いよく引き寄せられてぶつかった。
「……涼太くん」
「俺の女に手ェ出してんなよ、お前ら」
シンとなる車内。 横に立っていた男が手を出そうとするのをもう一人の男が止めつつ、そっと耳元でモデルの…と囁いている。 それを聞くや素早く私たちから離れて行く。
涼太くんは逃げていく男たちを一睨みをすると、肩を引き寄せ手で私の顔を涼太くんの胸に押し付ける様な体勢で歩きだす。
私もされるがままの体勢でよっかかるようにして隣の車両へと向かった。
ドアにもたれて立つ私の前に、他の乗客から私を隠すように立つ涼太くん。肩はまだ引き寄せたまま、大きな手の平も私の頭の上に乗ったままだ。
駅に着いてゆっくりと降りる私たち。ホームの端にあるベンチに腰掛ける。
「もう泣いてもいいんじゃないっスか?」
「ッ泣いてなんか…ないわよバカぁぁ!!」
ボロボロと零れてくる涙。涼太くんは頭を掻きながら泣いてんじゃないスか、とこぼす。
「本当にナミっちは他人の前では泣こうとしないっスよね」
「うっさい!大体…あんたが…!」
あの子にと、続きを言おうとして喉がしゃっくりを上げて言葉が続かない。
『ふん、あなた黄瀬くんを私に渡したくなくて必死にすがり付いているんでしょう?』
また頭の中に響く声。違う!必死にすがり付いてなんかいない!
いつだって、困った時に必ず涼太くんから助けに現れてくれるのだ。
嘘なんかじゃない。そんなことも知らないくせに…知らないくせに涼太くんを、我が物顔で独り占めしないでッ!!!
あの場で叫び倒してやりたかった気持ちと、本人の前で言えるわけがない気持ちと、鈍感にせよ涼太くんの前であんなことを言われた気持ちが今更こみ上げる。
完全に混乱しながら更に目の前にいる涼太くん当たり出すと言う最も子供な態度にで出た。
「…あんな奴等っ…しかも何よ!!あの俺の女ってセリフは!!」
「うっ…!」
「何が…」
『俺の女に手ェ出してんなよ、お前ら。』
言おうと思ったところで言葉が続かなかった。こいつ…何であんなセリフをずけずけと言えた訳…?
八つ当たりをしておきながら完全に自分が当たる方向を間違えたと気付く
泣いたせいもあるが、いきなりそれとは別の意味で体が火照ってきた。更に少し落ち着くとこうして泣いていることも、意味なく涼太くんに当たったことも急に恥ずかしくなって、今更ながら顔を見られまいと俯く
それでも涙はボロボロと目から零れ落ち、ぼたぼた垂れて手に落ちる。さっき叩かれた場所は薄っすらと赤くなっていて、そこに涙が当たるとヒリヒリした
「ナミっちー、まだ怒ってんスか?」
困り果てた顔で覗いてくる来た涼太くんと目が合う。 なんとなく気まずくて私は涼太くんから目を反らす。
「手は?」
「え?」
「さっき叩かれた手は痛くないっスか?」
そう聞きながらそっと手を取って見始める涼太くん。手から伝わってくる温もりと、大きくてごつごつした涼太くんの手。
別に痛くないわよ、と手を引っ込める。なら良かった、と笑って使いなよ、とタオルを差し出す涼太くん。
「…あんたの女になった覚えはないからね。」
「えーー!!ダメっスか?さっきのアレじゃぁ…」
スパコン!と効果音がしそうな程強く、間髪いれず涼太くんの頭を叩く。
「そんな適当にするんじゃないの!あんたからの告白待ってる子はたくさんいるんだから!」
「あだァッ!!! …俺が告白するのはナミっちがだけっスよ」
「はいはい。」
また適当なことを…と思いタオルを丸めて投げつける。投げたタオルは見事に涼太くんの顔に命中した。
「ブッ!…へへっ!」
「何がおかしいのよ」
「いや、いつものナミっちに戻ったっスね!」
「え?」
「やっぱりナミっちはそうでなくちゃ。少しは落ち着いたっスか?さっきあの子にヒドイこと言われたから…大丈夫かなと思って。ナミっちのこと何も知らないくせにあんな言い方してさ!それにナミっち、あんな変な奴等に絡まれてんなら、すぐに俺でもバスケ部の人でもいいから呼ぶんスよ!!」
今度は涼太くんが子供のように頬を膨らませて愚痴を漏らす。そんな涼太を見ていたら自然と笑顔になった。
駅構内に電車が来るアナウンスが流れ始める。
パッと立ち上がると、それと同時に電車が来る
電車によって巻き起こる風、ふわりと膨らむ制服のスカート。風でポニーテールが激しく揺れる。髪を押さえながら、そっと私は呟く。
「……………」
「ん?ナミっち、なんて言ったんスか?」
「さぁーね。」
乗車を促すアナウンス。発車前の電車に駆け込む。 怪訝な顔をした涼太くんも、急いで着いて来る。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
いつだって颯爽と助けに来てくれるスーパーヒーロー。
『かっこよかったわよ、あんた』
今日はいつもより気合が違う。
いつもよりエッチでレース多めの下着、ムダ毛の処理、適量の香水、髪の毛はいつもより念入りにといて来た。
全てはそう、この日の為に!!
今日はテツや火神ちゃんをはじめとする誠凛のみんながうちに私の手料理を食べに来るのだ。
もちろん、みんなの中には私の好きな人である俊くんも入っている。だから気合を入れてるのだ。
『ナミ…手料理は美味しかったけど…お前はどうなんだ?味見、させてくれないか』
『しゅ、俊くんになら…私、いいわよ…?』
なーんて感じでR18指定のオイシイ展開があるかもしれないじゃない!!?だから、全てにおいて完璧にしとくの〜!!!
「ナミっち、現実に戻ってっス。」
「うっさい駄犬!!」
妄想に浸ってると、呆れた目で見て来る駄犬。なんでこいつこんなに不機嫌な訳?
「ナミっちの料理の味は、俺だけが知ってればいいのに!!」
「イヤよ。私あんたの妹でも姉でも彼女でも、ましてや奥さんでもないのよ?本来ならお金取るわよ」
まったく…別に初めて手料理を食べさせる相手って訳でもないのに…中学の頃から飽きる程食べてたでしょーが
チャイムが鳴り、帰る時間となる。私はカバンを掴んで走って家へ帰った。そして、家にカバンを置いてスーパーへ向かう。誠凛のみんなが来たのは、夜7時をまわった頃だった。
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「お久しぶりです、ナミさん」
「テツ!それにみんなもいらっしゃい!」
みんなを家に入れて、狭いけど座って待っててもらう。適当にテレビを見てもらってる最中に、私はシチューを作った。
『いただきまーす!!!』
「おかわりあるから、どんどん食べてちょーだい!」
火神ちゃんがいるから、いつもより多めに作った。でも、火神ちゃんは人の家だからか、少し食べる量を減らしてるみたいだ。
みんなが食べてる間に、サラダを作る。火神ちゃんは本気を出して、どんどんおかわりしてくる。うん、嬉しい。
「リコさん、どう?おいしいですか?」
「おいしいわ!料理上手ね、ナミちゃんって」
そりゃそうよ!!母が他界してからは私が家で料理してるし、中学の時はキセキのみんなにお弁当作ってたし、今でも涼太くんの家に行って作って一緒に食べてるんだから!!!
「俊くん、おいしい?」
「ああ、うまいぞ。はっ!!五穀米、五個食うまい!!」
「伊月黙れ!」
ああ、俊くんに褒めてもらえて幸せ〜♡
ーーーーーーーーーーーーーーーー
みんなでワイワイしてると、時間はあっという間に過ぎてしまった。もう帰る時間だ。
「ナミさん、ありがとうございました。」
「ううん。みんな遠いのにわざわざ来てくれてありがとう。また、来てね?」
「はい。必ずまた来ます。次は誠凛のみんなと、帝光のみんなで。」
「テツ…。ありがとう。」
みんなが帰るのを見送る。すると、俊くんが走って戻って来た。
「どうしたの?俊くん」
「……ナミ」
「へ?」
俊くんに抱き締められる。俊くんは私の耳元で小さくささやいた。
「ナミ…W.Cが終わるまで待っててくれ…」
「しゅ、俊くん…?」
「お前の気持ちが…W.Cが終わっても変わってないのなら…」
「伊月ー!!何やってんだ!!新幹線乗り遅れんだろダァホ!!」
「悪い!!すぐ行く!!…じゃあな、ナミ」
「っ、俊くん!!」
俊くんは振り返らずに、手を振るだけだった。
俊くん、あなたは最後、何を言おうとしたの?
期待して、いいの?
でも、胸が熱くて焦げそうなのはなんでだろう
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナミっち、何かぼーっとしてるっスよ?」
「涼太くん、どうしよう…!」
「ちょ、泣かないで!!」
(何でこんなに胸が熱くて、痛いのかな…?何で涙が止まらないのかな…?何で…)
原澤さん:今日、一緒に夕食でもいかがですか?
ケータイを見ると、原澤さんからLINEが来ていた。今日は何の予定もないので、快くOKする。
原澤さん:海常高校に待ち合わせでいいですか?
迎えに行きます。
駅前に新しくできたレストラン
なんてどうかな?
駅前に新しくできたレストランって…有名シェフの超高級レストランじゃない!!神奈川のレストランなのに、東京の人が知ってるって…相当有名なのね、あそこ…
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナミ、お待たせしました」
「い、いえ!全然!!」
高級レストランということで、一応ちゃんとした服を着て来た。
真ん中に黒いリボンがある、丈の短い白いドレス。髪もいつものポニーテールではなく、ちゃんとキレイにして来た。
「久しぶりに会いますね。連絡が来ないので忘れられたのかと思いましたよ」
「す、すみません…」
め、滅相もございません!!何度か連絡しようとは思ったけど、相手は教師でしかも桐皇の監督だから迷惑だと思われたらどうしよう、的な感じだったんです!!
「だから、すごく楽しみだったんです」
「は、原澤さん…」
「今日のそのドレスも、すごくお似合いですよ。キレイです。」
ドキッ
あ、今胸がドキッとした。…って違う違う!!私には俊くんという心から想う人がいるじゃない!!あー、危なかった…大人の魅力にやられそうだった…
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ん!おいしい!」
「お口に合って良かったです」
ステーキを口の中に入れると、舌の上でほろほろと溶ける。うん、うまい。
「原澤さんは、お酒苦手なんですか?」
「好きですが、車を運転しなければならないので…」
「あ、なんかすいません…」
「いえ。あなたと食事ができるんです。そのくらい軽いですよ。」
ニコッと微笑む原澤さんはいつもよりかっこよかった。…いやだから、私には俊くんが…!
「そ、そういえば、大ちゃん元気ですか?あとさつきも!」
「2人とも元気ですよ。まあ、青峰くんのサボリ癖に桃井さんが手を焼いてますけどね」
「あんッのガングロアホ峰…!今度会ったら、ちゃんと部活に行くように言っときますね」
「ははっ、よろしくお願いしますね」
おほほ、と笑うと面白そうに笑う原澤さん。この人も、こうやって笑うんだ…何か意外…
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「もう帰る時間ですか…」
「明日もお仕事なのにすみません…」
レストランのあとは適当に近くの公園に寄った。ベンチに座って話したりして、あっという間に時間が過ぎた。
「送りますよ」
原澤さんに甘えることにして、家まで送ってもらった。
「それじゃあ、また…」
「ナミ」
チュウ
車を降りようとしたら、腕を掴まれて頬にキスをされた。一瞬、理解ができなかった。
「W.Cが終わった時、私の気持ちを聞いてくれませんか?」
「原澤さん…」
「それでは…」
原澤さんに俊くん…私の恋ってどうなるの?
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナミっちー!!あのおっさんに何もされなかったっスか!?」
「………何もされてない、デス」
「何スか今の間は!!」
「何もないってば!しつこい!この駄犬が!」
「ギャインッ!!」
「ナミっちー!今日一緒に帰ろうっス!」
「いいわよ」
いつも通り涼太くんに誘われて、体育館で待つ。もうちょっとでW.Cだから、練習はいつもよりキツイそうだ。
「ナミっち!お待たせっス!!」
「別にそんなに待ってないわよ。練習おつかれ様!」
もう寒い時期だから、私はブレザーの下にセーターを着て、靴下もいつもは短いけど、今日は黒のタイツだ。
それに比べて涼太くんは、セーターは着ずにブレザーだけだ。こいつはナメてんのか、この寒さを、今年の冬を
「あんた、寒くないの?」
「寒いっス」
「じゃあもっと防寒しなさいよ」
「えー、でも俺って、あんまり重ね着しない方がかっこよくないっスか?」
「重ね着をかっこよく着こなせてやっと、真のかっこよさに辿りつけるのよ。」
適当なこと言うと、なぜか納得するモデル。誰よこんな適当なやつ業界に入れたのは
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「もうちょっとでW.Cねー…練習、キツイ?」
「キツイっスけど…勝ったらナミっちにワガママ聞いてもらえるんで、がんばれるっス!!」
「……もう決まってるの?その聞いてもらうワガママって」
「んー、内緒っスね!!W.Cが終わったら言うっス!!」
「…ねえ、涼太くん」
私は笑いながら歩く涼太くんの裾を掴んだ。こんなことを言うのは初めてだから、涼太くんの顔を見れない…
「っ私が、その、W.Cであ、あんたががんばったなって思ったら……」
「思ったら?」
がんばって顔を上げた。顔に熱が集中してるのが分かる。
「……ゆ、優勝しなくても…聞いてあげないこともないわよ、ワガママ…」
やっぱり口にすると恥ずかしくなって慌てて、優勝した時より制限はかかるけどね!!と付け足す。でも、涼太くんからの反応はない。反応が気になって、涼太くんの顔を見てみる。
「ーーーっ、」
涼太くんは、顔を片手で覆っていた。わずかな隙間から見える涼太くんの顔は真っ赤で、つられてこっちも赤くなる。
「ーー…ナミっち!!」
「ひゃいっ!!」
いきなり肩をガシッと掴まれて、変な声で返事をしてしまう。相変わらずお互いの顔は赤い。
「それ、絶対に他のみんなには言っちゃダメっスよ!!」
「なっ…なんでよ!あんただけとか不公平じゃない!」
「ダメなものはダメっス!!」
「じゃあ、優勝しなかったらもう聞かないわよ!」
「うぐっ…!でも、今のナミっちすっごくかわいかったから、惚れちゃうかもしれないっス!みんな惚れたらどうすんスか!!」
「なんの心配してんのよあんたはッ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「じゃあ、あんたからみんなに伝えるってことで。」
「それならいいっスよ。伝えとくっス」
そのあともずっと、しばらく言い合いを続けてやっとこの意見になった。
「ナミっち、今日家来ないっスか?姉ちゃんいないし」
「ええ。行かせてもらうわ。」
涼太くんの家につくと、人がドアの前に座り込んでいた。金髪の女性だ。
「誰?あの人。あんたのファン?」
「な、なんであの人が…!」
涼太くんを見るととても驚いたような顔をしていた。はっ!もしかして、年上の元カノ!?ヤバイ!面倒なことにならない内に逃げなきゃ!
「やっぱり用事思い出したし帰るね、私…」
「ま、待ってナミっち!!」
ちょっと!!声が大きいわよ!!!女の人は涼太くんの声に反応して、こっちを見た。すると、嬉しそうに駆け寄って抱き付く。
「涼太ーーッ!!!」
「ちょ、ばか!抱き付くな!!」
あれ?この人の顔、どっかで見たことあるわ…どこだっけ?すごく身近な存在な気が…
「やめろ涼香!!」
「あんた実の姉に向かってなんて口の利き方すんのよ!!」
「実の…姉…?…っはーーーーー!!!??」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「確かにちょっとシャララってる…!」
「 シャララってる?面白いこと言うっスね、あなた!」
「…弟がチワワなら、姉はパピヨンってとこね…」
オリキャラ
黄瀬涼香(きせ りょうか)
黄瀬家の次女
合コンが趣味のチャラい女
でも本命には一途
黄瀬涼太がチワワなら、こいつはパピヨン
「何で家にいるんスか!!聞いてないっス!」
「自分の家にいちゃダメっスか?あぁん?」
「今日お前合コンって言ってたっスよ!!」
「…涼太ぁ〜!!」
家に入ると、さっそく喧嘩を始める黄瀬姉弟。喧嘩を眺めていたら、いきなり泣き始めて涼太くんにお姉さんが抱き付く。
「今日は合コンの予定だったのに…男全員が来れないってさっき連絡が〜!!!」
「はぁ!?ってか、抱き付くな!!!」
なるほど、だから家の前に座り込んでいたのか。うん、もう帰っていいかな?涼太くん
「そういえば、誰っスか?この可愛い女の子」
「ナミっち。今日はお前がいないと思ったから連れて来たんスよ」
どうも、と頭を下げるとお姉さんにものすごい力で、二の腕を掴まれた。
「無理矢理連れて来られたっスね!!」
「「……は!?」」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「いやー、ごめんごめん。中学の時、涼太はヤンチャしてたから…てへっ」
「てへっ、じゃねーっス!!まず、中学ん時も無理矢理女の子連れて来たことねーし!!!」
「……へえー…」
「ナミっち!!?」
別に涼太くんが女の子と遊んでたとか知ってたし。初対面の人にキスしようとした人だし。
「じゃあ、この娘はあんたの友達っスね。」
「まあ…一応そうですね!」
笑顔で答えると、涼太くんが一応ってなに!?と泣き付いて来た。邪魔、うっとうしい
「なるほど。私は黄瀬涼香っス!近所の大学に通ってるから、こいつの家に住んでるっス」
「私はナミです!涼太くんと同じ海常高校に通ってます!」
お姉さんは私をジッと見ると、強く抱き締めて来た。少しビックリする。
「ナミちゃん可愛いっス!!私と付き合わないっスか?」
「お、お姉さん!私、あなたと同性です!」
「お姉さん、なんてダメっス!涼香って呼んでっス」
「何言ってんだクソアネキ!!!」
涼太くんのおかげで、お姉さん…涼香さんから解放された私。
「恋に性別なんて関係ないっス!どう?ナミちゃん」
お姉さんが私の顎をクイッと上げると、涼太くんが私の手を掴んで顔を真っ赤にして言い放った。
「ダメっス!!この人は、ナミっちは、俺がW.Cで優勝したらお付き合いする人なんスから!!」
……へ?
何?ちょっと、分かんない
俺が掴んでいたナミっちの手は、彼女によって振り払われた。
「はっ!!ご、ごめんナミっち!!これW.Cが終わった後に聞いてもらおうとしてたワガママだったんスけど…ナミっち?」
ナミっちから拳が来ると思い慌てて謝るが、中々来ない。彼女を見ると、顔を真っ赤にして目を回していた。涼香も驚いたように見る。
「あっ…あんたとはただの友達だし…これからもそのつもりだし…その、えっと…」
そうだ、ナミっちには好きな人がいるじゃないか。いきなり言われても、困ってるだろう。
「な、なんて冗談っス!!ナミっちは好きな人がいるから涼香、お前は諦めろっス!ざまぁみろ!」
「……そうっスね、可愛いナミちゃんの好きな人っスもん!私が敵うわけないっス!!」
俺が明るく言うと、涼香も明るく返して来た。少しホッとしてると、ナミっちが背中に頭を預けて来た。涼香は謎の空気を読んで、自分の部屋に戻る。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「涼太くんは…」
「……」
「涼太くんは私のヒーローで、いつも感謝してる。」
「……ッ!」
ナミっちの言葉に、嬉しさが込み上げてくる。嬉しさに浸っていると、ナミっちは俺の方に回り込んで、俺の目を真っ直ぐ見つめる。
「だから、ちゃんと告白して。」
「え?」
「さっきの告白って、本気だったんでしょ?あんたの嘘付く時の癖ぐらい、知ってるわよ。」
自分の髪の毛いじり過ぎなのよ、というナミっちの言葉にハッとする。そして、俺を真っ直ぐ見つめる瞳に、俺も真っ直ぐ見つめ返した。
ゆっくりと口を開く。
「ナミっち、俺は君が好きっス。付き合って欲しいっス。」
「…うん、ありがとう。ごめんなさい。」
「ぐはっ!!や、やっぱり直接言われたら心に来るっス…」
涙目になりながら、ナミっちを見ると少し笑っていた。でも、耳は赤い。可愛い、なんて思ってしまう。
「でも、真剣に考えさせて?」
「ナミっち…?で、でも伊月さんは?」
「俊くんの気持ちも、W.Cが終わってから聞く予定なのよ。あと原澤さんも。」
「そ、そんな!俺すっげーかっこ悪いっス!俺もW.C終わってからにすれば良かったー!!」
ナミっちに泣き付くと、すぐに引き剥がされる。ってゆーか、伊月さん告白したら俺勝ち目ねーし!
「そんなことないわよ。気持ちを伝えるのに勇気が必要って私、知ってるのよ?だから私はかっこ悪いとは思わない!!」
ニカッと笑うナミっちは太陽のようにキレイだった。
彼女を狙うのは俺だけではない。
伊月さんや桐皇の監督をはじめ、俺や青峰っち、赤司っちなどのキセキの世代。
そして、もう1人の大きなライバル。
俺は、決めた。
「ナミっち、また告白するっス!!」
「……?」
ナミっちは意味が分かってないようだけど、いいんだ。
次に告白する時は、もっとナミっちは悩む。
それでも君を諦めない。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「久しぶりだな、日本…」
まさか、こんなにはやくに帰って来るなんて
「ナミ…」
もう1人の、大きなライバルが
涼太くんと涼香さんとごはんを食べていると、私のケータイが鳴った。
『もしもし?』
『俺だ…』
『あ、あんた…!』
電話の相手は、私の義理の兄であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナミ!ノジコ!新しい家族だよ!」
「…ローだ」
「ロシナンテだ。よろしくな」
母さんに言われて紹介されたのは、黒髪でクマのひどい男の子と、金髪の男の人だった。
「ナミよ」
「私はノジコ」
最初はなかなか打ち解けられなかったけど、新しいお父さんのドジ振りや、それにツッコミを入れる兄と、仲良くなることができた
ーーーーーーーーーーーーーーーー
『ナミ、お前の学校での就職が決まった。明日の夜には、神奈川につく』
『え、そうなの!?家とか大丈夫?』
『お前の家に住む』
『何言ってんのよ!!』
『文句あんのか?』
『………分かったわよ』
電話を切ると、涼太くんに誰だったか聞かれたので兄だと答えると、嫌そうな顔をした。
「あの人、ナミっちのことには厳しかったっスよね〜…他は不良教師の癖に」
「アメリカでの留学が終わったから、こっちに戻って来るらしいの」
兄は医療に関しては勉強熱心で、私たちの卒業と一緒にアメリカへ留学に行った。他はなんッにも興味のない、ただの不良の保健室の先生だった。
「じゃあ、帰るわね。部屋の片付けしなきゃ」
「また来てっス!ナミちゃん!!」
「送るっスよ、ナミっち」
涼太くんの自転車に乗って、家へ向かう。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
告白する時、こいつは何を考えていたんだろう
私は俊くんが好きだけど、なんか最近違うのよね。いや、好きなんだけども
「送ってくれてありがとう。」
「じゃ、また明日っス!」
涼太くんの広い背中を見ていると、1人脳裏に浮かぶ黒い奴がいる。
成長したなぁ…涼太くん
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「へぶしっ!」
「ちょっと大ちゃん!風邪?」
「誰かが俺の噂してんだろ」
「今日からテメェらのことを診る、朱崎ローだ。ロー先生とでもトラ男とでもなんとでも呼べ」
ほ、本当に先生になるのね…周りの女子はかっこいい、と盛り上がる。だけど私は彼をかっこいいとは思わない。
なぜなら、彼はとんでもない過保護だからだ。
血の繋がっていない私の兄は、どういう訳か私に甘い。がんばれば自家用ヨットを買ってもらえるんじゃないか?と思えるほど甘い
「朱崎ローって…おい朱崎」
「私の…兄、デス…」
友達は面白そうに笑う。しかし、対照的に涼太くんはぶすっとしていた。
「あの人、普段は優しいけどナミっちのことになると、別人になるから独り占めできないっス!あと怖いし、厳しい!!」
涼太くんに目を向ける。確かに、運動部の人はウチの兄にはお世話になっているだろう。
キセキの世代のみんなも、修兄も崎ピョンもお世話になっていた。いや、ウチの兄が迷惑をかけた回数の方が多かったかもしれない…
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「トラ男センセー」
「…黄瀬屋か。なんだ、部活でケガでもしたか」
トラ男先生は、俺のことを覚えているみたいだ。まあ、そうだろう。自分の可愛い妹が神奈川に行ったのは、俺のせいなのだから
「ちょっと擦りむいたんスよ。消毒してっス」
先生のデスクの隣にあるイスに座る。デスクにはたくさんの医薬品がある。
「特にひどくもなんともねぇ…練習に戻れ」
「ひでーのは相変わらずっスね」
先生は俺に目を向けた後、すぐにデスクの上にあるパソコンに目を向けた。相変わらずのその人に、苦笑する。
「消毒だけでもしてくださいっスよ〜」
「……チッ」
舌打ちをされて、消毒をしてもらう。
この先生は、態度は悪いが学校医としての腕は確かだ。それと、なんだかんだでちゃんと診てくれる。
「テメェらのことは…許してねぇからな」
彼が言っているのは、中学の時のことだろう。確かに俺たちは、勝手にバラバラになって、ナミっちを悲しませた。
それでも彼女は、俺たちを、黒子っちを、黄瀬涼太を信じてくれている。
みんなが笑顔でバスケができる日を信じて。
「トラ男先生、俺はナミっちをもう泣かせないっスよ。」
「……」
「告白もしたっス。…ま、フラれたっスけど。でも、W.Cで優勝したらまたするっスよ、告白」
「あァ?」
トラ男先生の鋭い、クマの濃い目が俺をとらえる。
「俺はナミっちが好きっス。今、彼女は俺の方を向いてないけど、いつかは俺に向いてもらうっス。」
俺も負けじとトラ男先生を見た。
「先生、妹さんは俺が守るっス。」
「……消毒は終わりだ。練習に戻れ」
もっと言いたいことはあったが、俺はおとなしく保健室を出た。先生から、殺気が出ていたからだ。このままだと、殺気で殺されそう
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「黄瀬屋、俺はナミのことは恋愛対象として見てないぞ…」
「知ってるっスよ!!……って、え!!?」
「可愛い妹なだけだ。ただ、泣かせる奴はころすす」
今日はW.C予選の前日だ。神奈川から出る高校を決めるのだ。海常高校は、ホテルへ向かう。
「ナミっち、ついたっスよ」
「んぁ?あー…」
黄瀬が隣で寝ているナミを起こす。すると、携帯が鳴った。開いて見ると、かつての自分の主将である赤司征十郎からLINEが来ていた。
赤司っち:涼太、W.C当日にキセキの世代で集まろう
後から来たLINEには、集合場所が書かれている。黄瀬は頭を悩ませた。
(ナミっちが知ったら行きたがりそうだな〜…いいのかな?ナミっちも連れてって)
「あー…ナミっち、キセキの世代がW.C当日に集合するんスけど…」
「キセキの世代ってことは、テツたちはもちろん、征十郎とむっくんにも会えるのよね?私も行く!」
やっぱり…と思いながら、一応赤司に聞いてみると、快くOKしてくれた。
「おい、2人とももう降りろ!!」
「笠松先輩!ちょっと待ってよ!!!」
今日のナミは、マネージャーではない。
ただの一般人として、試合を見る。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「予選は明日だ。近くの体育館を借りて、練習する。1時間後、またロビーに集まれ」
監督の声で、各自が自分たちの部屋へ荷物を運ぶ。ナミは、何度も黄瀬の家に泊まっているということで、黄瀬と同室になった。
「涼太くん、この荷物どこに置くの?」
「ああ、それは…」
黄瀬が振り返ると、ナミと顔の距離が近かった。黄瀬は顔を真っ赤にして、慌てて少し体を引いた。
心臓の音が、ナミに聞こえてないか心配だった。
「ちょっと涼太くん?」
「そ、それは机の上でいいっスよ!!あ、喉乾いたんで下の購買で買って来てっス!」
「お金は出さない「これ俺の財布っス!」
無理矢理、財布を押し付けられてナミは渋々購買へ行った。
(こ、告白してから更に意識しちゃって…ど、ドキドキするっス…!)
ナミが戻ってくるまでに、終わらせようと荷物を運ぶ。
(W.Cが終わったら…)
自分の気持ちをもう一度伝える、それを胸に黄瀬は練習へ向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「な、ナミっち…俺の財布の中が空っぽなんスけど…」
「ああ、みんなのドリンク買ってたら無くなっちゃったのよね」
「そ、そんなー!!」
予選をなんとか勝ち抜き、今日はW.Cの開会式。ナミは黄瀬と共に、キセキの世代の元へ向かった。
2人は集合場所である会場前の階段のところに、カラフルな髪の色を見つけた。即座にナミが走り出す。
「むっくん!!」
「うわっ!ナミちん!?」
階段に突っ立っていた紫頭の男にナミは飛び付く。慌てて黄瀬も追いかけた。
「つーかなんでナミちんがいんの〜?」
「涼太くんに連れて来てもらったのよ!みんなに会いたくて!」
ニコリと笑ったナミを見て、紫原も微笑んでナミの頭を撫でた。
「まだむっくんと私たちしか来てないの?」
「そうみた〜い。ナミちんチョコ食べる?」
「食べる!」
紫原は自分が手に持っていたチョコレートをナミにあーんと食べさせてあげた。黄瀬が羨ましい、と涙を流す。
おいしい!とナミが言ったとき、ナミと黄瀬と紫原の背後から声がした。
「あ?まだ紫原しか来てねぇのか?」
その声にナミと黄瀬と紫原は同時に振り返った。2人の目には黒くて体格のいい男が映る。
「やっほ〜峰ちん」
「久しぶり、大ちゃん!」
「久しぶりっスね!青峰っち!!」
青峰は紫原の隣にいた人物に目を見開く。
「は?お前っ、ナミ!?」
ナミはピョンピョンと階段を上って青峰の真ん前に立つ。
「久しぶりね。合同合宿以来かぁ…」
「おー…お前も来てたのか」
「俺達に会いたかったんだって〜」
紫原がそう説明すると青峰がニヤニヤしながらへーナミちゃんは寂しかったのかァ、と言ったので、ムカついたナミは青峰の腹に一発拳をお見舞いしてやった。
「大丈夫〜?峰ちん」
「くそ…ナミのやつ思いっきり殴りやがって」
「だってなんかムカついたし」
「青峰っちに心の底から同情するっス…」
いつも殴られる黄瀬が、青峰の身を案じているとナミに殴られた。
「ちょっと!!なんで殴るんスか!!!」
「ノリよ」
「ノリっスか」
「つーか他の奴ら遅くねぇ?赤司はどうしたんだよ」
「さあ…きっと部員に指示出してから来るんじゃない?たぶん他の人はちゃんと先輩に説明してから来るわ」
「「………」」
ナミの言葉に紫原と青峰は無言になる。たぶん2人は先輩に無断でここに来たのだろう。今頃先輩達が必死で探しているはずだ。
「なんだ赤司はまだ来てないのか」
「緑間」
「あ、ミドチン」
「真太郎!!!!」
ナミは青峰と黄瀬を押し退けて緑間の元へ駆け寄る。
「ナミ?なぜここにいるのだよ」
「俺達に会いにきたらしいぜ」
「大ちゃん以外だけど」
「なんでだよ!!」
緑間はラッキーアイテムのハサミを持ちながら眼鏡をクイッとあげる。
「そ、そうか」
「ミドチン照れてる〜」
「照れてないのだよ!!」
「相ッ変わらず可愛いわね、あんた」
ナミと紫原が緑間をからかうと、緑間は拗ねてしまった。
「そうだナミっちー」
「空が青いわね〜」
「あれ?ナミっち!」
「本当だー綺麗な空だね」
「ちょっと、あれ?ナミっち聞こえてるっスよね!?」
「あー…眠くなりそうだぜ」
「え?みんなも?みんなも無視っスか!?」
「お前ら、さすがに黄瀬が可哀想なのだよ」
先程からずっと黄瀬を無視するナミと紫原と青峰の三人。黄瀬は涙目になっていた。ナミは鬱陶しそうに返事をした。
「何?涼太くん」
「やっと返事したっスね!!」
「早く話せや」
青峰の蹴りが黄瀬に入る。黄瀬はよろめきながら、ナミに後ろから抱きついた。
「笠松先輩たちに言ってくるの忘れたっス」
「……何を?」
「キセキのみんなで集まるのグハッ」
黄瀬が言い終わる前に、ナミの肘が黄瀬の溝うちに入った。そして、黄瀬の腕の中からするりと抜け出し、胸ぐらを掴んでブンブンと揺さぶる。
「あんた何してんのよッ!!!笠松先輩たちに迷惑かけてんじゃないわよ!バカッ!殴るわよ!!」
「もう殴ってるのだよ」
目を吊り上げながら怒鳴るナミに、静かにツッコミを入れる緑間。
紫原と青峰は、相変わらずのナミに冷や汗をかいた。アレが自分だと思うと、ゾッとする。
「あとはテツと赤司か」
「遅いね〜」
「あっ、来た!!」
ボコボコの黄瀬を足元に、ナミは手を振った。
「なんだァ、テツ…お守り付きかよ」
「峰ちんと黄瀬ちんにも、さっちんとナミちんがいるじゃん。お守り」
「さつきはカンケーねぇだろがコラ」
「そうよ!私はみんなのお守りよ!!」
「つーか緑間っち、なんでハサミとか持ってんスか?」
「ラッキーアイテムに決まっているだろう。バカめ」
「いや、とりあえず危ないから、むき出しで持ち歩くのやめてほしいっス」
「お待たせしました」
ナミたちのところへやって来たのは、キセキの世代幻の6人目 黒子テツヤ。しかし、彼の後ろには同じチームと思われる部員がついて来ていた
「テツ…久しぶり。」
「ナミさん…どうしてここに?」
「みんなに会いに来たの。そっちの人は誠凛の人よね?」
ナミが黒子のところまで階段を下りて、黒子の隣にいる男子の顔をジッと見つめる。
「彼は降旗くんといいます。チームメイトです」
「よろしくね、降旗くん!」
「ど、どうも」
ナミが降旗を見つめていると、急に降旗の頬が赤く染まった。その様子にナミは首を傾げた。
「つーかナミ!!」
青峰から呼ばれてナミは振り返った。
「何よ」
「赤司遅ぇ」
「知らないわよ。むっくんそれ貸して」
青峰にそう告げてから、ナミはお菓子の袋を開けようとして中々開けれない紫原に声を掛けた。紫原は素直にお菓子を渡す。ナミが開けると、中のお菓子が飛んだ。
「「……」」
「拾って食うな!!!」
「「さ、3秒までなら…」」
「なんなのだよ、そのルールは!!」
ナミと紫原がヒョイヒョイお菓子を拾うと、ツッコミをしていた緑間が、疲れたように壁にもたれた。
お菓子を全て食べ終わったとき
「すまない。待たせたね」
やっと彼、赤司征十郎がやって来た。
「…赤司君」
黒子がそう呟く隣で降旗は赤司を見て怯えているようだった。
「大輝。涼太。真太郎。敦。そして…テツヤとナミ…また会えて嬉しいよ。こうやって全員揃うことができたのは実に感慨深いね」
その場の空気が重々しくなる。
ナミはヤバイと感じて、降旗にそっと逃げたほうがいいと告げた。しかし、彼は足がすくんで動けない。
「…ただ、場違いな人が混じってるね。悪いが君は帰ってもらっていいかな?」
赤司が降旗にそう言うが、彼は赤司にヒビって中々動けない。
「なんだよつれねーな。仲間外れにすんなよ」
そんな緊迫した空気を破るかのように1人の男が現れた。
「火神!!」
「火神ちゃん!!」
「話はアトだ。とりあえず、あんたが赤司か。会えて嬉しいぜ」
「………」
(うっわ…最悪な状況…どうするのよこれ〜…!)
赤司はゆっくりと階段を下りて、緑間にハサミを借りた。
「火神くん、だよね?」
「征、十郎…?」
赤司がこれからすることが分からないナミは、ただ2人を見つめるだけだった。
するといきなり、ビュッと赤司が火神にハサミを突き付け、ギリギリのところで火神はそれを避けた。
「火神君!」
「火神ちゃん!!!」
黒子と降旗、ナミが火神に駆け寄る。その光景を残りのキセキ達はボーッと眺めていた。
「僕が帰れと言ったら帰れ」
赤司がそう言ったとき、紫原が大きな手でナミの耳を塞いだ。
「この世は勝利がすべてだ。勝者はすべてが肯定され、敗者はすべてが否定される。僕は今まであらゆることで負けたことがないしこの先もない。すべてに勝つ僕はすべて正しい。
僕に逆らう奴は親でもころす」
赤司がハサミで自分の前髪を切りながらそう言った。しかし、ナミは耳を塞がれているので赤司がなんと言ったか分からなかった。
紫原はホッと一息ついてナミの耳から手を離す。
「じゃあ僕はそろそろ行くよ。今日のところは挨拶だけだ」
「はぁ!?ふざけんな赤司。それだけのためにわざわざ呼んだのか?」
「いや、本当は確認するつもりだったけど、みんなの顔を見て必要ないと分かった。全員あの時の誓いは忘れていないようだからな」
ナミは話についていけなくて困惑する。キョロキョロとみんなの顔を見渡すが、訳が分からない。
「次は戦う時に会おう。」
「待って征十郎!!」
「ちょ!ナミっち!?」
「ごめん涼太くん!私、戻るの遅れるって先輩たちに言っといて!!」
ナミが赤司を追いかけようとする。しかし、その前に火神に近づいた。そして、そっと火神の切れた頬に手を添える。
「火神ちゃん、大丈夫?征十郎がごめんね!」
「い、いや大丈夫」
「良かった…W.Cがんばってね!応援してるから!!」
火神が少し顔を赤くした。しかし、ナミはそれに気付かず、赤司を追いかけた。
「…惚れましたか?」
「ほれっ…!?ばっ、おま、!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ナミは赤司に追いつくと、手を掴んだ。やっと赤司は振り向いた。
「征十郎、久しぶり。」
「久しぶりだね、ナミ。」
「あんた、何してんのよ。人にハサミを向けるななんて…火神ちゃんが避けてなかったら、どうなってたか…」
赤司はナミに目を向けると。また歩き出した。
今度は、ナミは追いかけなかった。
「怖かった…」
ナミの出した声は、掠れていて、赤司に聞こえるかどうか分からないぐらいの、ボリュームだった。
「火神ちゃんがケガするのも…みんなが険しい顔をしてるのも…」
ナミの目から、ツーッと涙が伝う。
「あんたが…犯罪者になるかもしれないって…思ったのも…」
ピタリと赤司の足が止まった。ナミの声は、聞こえていた。ゆっくりと赤司が近付いて来る。
「ナミ…」
そして、彼は先程とは違う優しい笑みを浮かべて、ナミを抱き締めた。
ナミは背中に手を回して、更に泣き出す。
「だいたい何よ、誓いって…ッ聞いて、ないわよ…!みんな分かってるのに、私だけ1人みたいじゃないのよ…!ばかぁ!」
「すまない。…ナミ、待っていてくれ。」
声が少し、穏やかになった。ナミはハッとして、上を向く。
「彼らが…“キセキの世代”がオレを倒すまで。」
「征ちゃん…」
それは、勝利に執着する赤司征十郎の顔ではなかった。ナミはそれに、すぐ気が付いた。
「そしたらまた…そうだね、バスケでもできたらいいな」
ーナミも桃井も、みんなが笑っているバスケを
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「じゃあな、ナミ」
「ええ。さよなら、征十郎。」
ナミは何にさよならと言ったのだろうか。
ただの別れの挨拶か、それとも…
未来を読んだのだろうか。
番外編【青峰とナミ、あと誠凛】
せっかくの休日だから、東京に帰ってゴロゴロしながら、テレビでも観ようと思いソファに寝転んだところで、玄関のチャイムを連打する音がした。
居留守をしようと思ったがあまりにもインターホンを連打されたので煩くてそれは出来なかった。
「誰よ!迷惑ねっ!」
ノジコが居たらぶっ飛ばされてるわよ、と思いながらガチャっと玄関を開ける。
目の前に居たのは見知ったガングロ。
静かに玄関のドアを閉めようとしたら、ガシッとドアを掴まれてしまった。
「おい、閉めんじゃねぇよ」
「何よ、休日にまであんたの顔なんか見たくないんだけど」
そう言って力に任せてドアを閉めようとしたが大ちゃんも踏ん張る。
「おい、話ぐらい聞けよ……さつきが!」
さつき!?
ガンッッ
さつき、という名前を聞いた瞬間勢いよく玄関を開けたので、大ちゃんの顔面に玄関のドアがぶつかった。
「いってぇな…いきなり開けんなよ」
そんなことはどうでもいいのよ、と言えばよくねぇよ、と言い返された。
「さつきがどうしたの!?」
「いや、あのー…喧嘩して、さつきのやつどっかいっちまったんだよ。見つかんねぇから、一緒に捜してくんねぇか?」
「バカアホ峰!!!!」
と叫んでアホ峰の顎にアッパーを決め込んだ。
グハッと言って激痛に悶え苦しんでいたけど無視した。
幸いなことに服はちゃんと私服を着ていたので、家の中から携帯と鍵を取って、玄関の鍵を締めたことを確認してから未だに悶えているバカを放置して走り出した。
後ろからアホ峰の私を呼ぶ声が聞こえたが、聞こえていない振りをして、さつきを捜しに行く。
さつきはきっと、あそこにいる…!!
番外編2【青峰とナミ、あと誠凛】
さつきがいるであろう場所に向かって走っていると、急に雨が降り出してきた。透けない服着てきて良かった。
誠凛高校と書いてある校門の中を突っ切る。
そして体育館に向かう。
バンっと勢いよく体育館の扉を開けると、体育館の中にいた人達の注目を一気に集めたのが分かった。
「さつき!!」
「ナミさん!?」
「ナミさん?」
「ナミ!!」
「ナミちゃん?なんで!?」
私は髪から水滴が滴り落ちるのも気にしないでさつきたちの方へ向かう。
「ナミちゃん、このタオル使って」
リコさんと日向くんから差し出されたタオルをお礼を言って受け取った。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
誠凛のみんなに、一応挨拶とお礼を言う。
そして、イスに座っているさつきに近付いて
パシンッ
思い切り頬を叩いた。
「ッ、?」
「ナミさん…」
「ナミ…?」
そして、さつきに抱き付く。
「心配させないでよ…バカッ…!」
「っ、ごめん、なさい…!ごめんなさい…!」
さつきがいなくなったら、どうしようと思った。あのガングロのそばにいてあげられるのは、さつきだけだから。
私の、大切な友達だから。
さつきと私の目からポロポロと涙が溢れる。
しばらく2人で静かに泣いていると、不器用に火神ちゃんが私の頭を撫でてくれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「それで、2人共どうしたんですか?」
なんだ、まだ大ちゃんと喧嘩したことテツたちに言ってなかったのね…
「私…っ青峰くんに嫌われちゃったかもしれない」
せっかく、目が乾いたのにまた、涙を瞳に溜めながらさつきがテッちゃんに泣き付く。
そして、さつきが大ちゃんとの喧嘩の理由を話し出した。
私にはよくわからない話だったので、ボーッとしててちゃんと聞いてなかったけど。
番外編3【青峰とナミ、あと誠凛】
「大丈夫ですよ桃井さん」
そう言って話し終わったさつきの頭を、テツが撫でる。
いいなーさつき、テツに頭撫でてもらえるとか貴重なことよ、なんて思ってると心を読まれたのか火神ちゃんにまた、頭を撫でてもらった。
「青峰くんもちょっとカッとなって言い過ぎただけです」
「そうよ!だからあいつ、私にさつき捜すの手伝ってって頼んできたんだから!」
「そうなんだ…」
「うん。それと、さつき泣かせた分まで私が大ちゃん殴ってきたから大丈夫よ!」
そう言って拳を突き出す。
(((何が大丈夫なの⁉)))
すると、ちょうど拳をおろした時に携帯が鳴った。
「あ、ごめん。ちょっと失礼するわ」
ちょっとだけみんなのとこから離れて通話ボタンを押す。
『もしもし?大ちゃん?」
『おう、さつき居たか?』
『うん、誠凛高校にいたわ』
『テツのとこか。門の前で待っとけって伝えてくれ』
『分かった。ちゃんと謝りなさいよ』
『あぁ、それとさつき家まで送ったら飯食いに行こうぜ』
『もちろんあんたの奢りでね。じゃあ、それまで私誠凛高校にいるわ。さつき送ったら連絡して』
『分かった』
ピッ
「さつき!大ちゃんが迎えに来てくれるって!校門の前で待っとけって」
「分かった。ナミさん、ありがとう」
「いえいえ。礼には及ばないわ。ちゃんと仲直りしてきなさい』
さつきは誠凛の皆さんにお辞儀をして、私とテツに手を振ってから、体育館をあとにした。
「あら?ナミちゃんは一緒に帰らなくていいの?」
「うん!大ちゃんがさつきを家まで送ったらご飯食べに行こうって。それまでここにお邪魔してていいですか?リコさん、みんな」
そうみんなにに言うと大歓迎だと言われた。
「なんだナミって青峰の彼女だったのか?」
火神ちゃんが変なことを聞いてきたので、足を思い切り蹴ってやった。
「んなわけないでしょーが!!!」
「火神くん、変なこと言わないで下さい」
「な、なんだよ」
「私には俊くんがいるもん!ねー、俊くん♡」
「伊右衛門がいるもん!やべキタ!」
「伊月黙れ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「そう言えば黒子。I.Hに青峰が出なかった理由は分かったが、残りの2人はどうしてだ?」
「それなら僕より、ナミさんの方が詳しいと思います」
いきなり話を振られて、何のことか分からず困惑した。
「紫原くんと赤司くんがこの前の試合に出なかった理由です」
あーハイハイ
そう言えば試合のことについていろいろ聞いた気がする…
「むっくん…紫原は、征…赤司と戦うのが嫌だし、赤司に出るなって言われたらしいわ」
「紫原君は赤司君とだけは戦うことを拒むんです」
「赤司って奴は…?」
「青峰が出られないって聞いて、それじゃ簡単に勝ってつまらないから出なかったって言ってた」
「なんだ?それ!」
「まぁ結局は化物ぞろいってことだろ、キセキの世代」
そんなにすごいの?あいつら…火神ちゃんは目をギラギラさせていて、少しドキッとした。…何に!?
「それにしてもナミって、バスケ部じゃないのにキセキの世代と仲良いんだな」
鉄平さんが私にそう問い掛けた。
「うん!」
元気よく頷いて笑った
(((かわいいなー)))
「バスケやってる人たちからは、よく妬まれたりしてるけど、本当はすっごくいい人達なのよ?」
と言うとそうか、と言って鉄平さんが久しぶりに頭を撫でてくれた。
番外編4【青峰とナミ、あと誠凛】
私の携帯が鳴った。あっ、大ちゃんからかも!
『もしもしー』
『あー…俺だ』
『今どこ?』
『誠凛に向かってる』
『じゃあ駅前のとこで待ち合わせしましょ。私も今から向かうわ』
『おう、危ねぇから誰かに送ってもらえよ』
『分かった。ありがとう』
ピッ
あ、もう外暗くなってる。いつの間にか雨もやんでるし、服もだいぶ乾いてきたわね…
「じゃあリコさん、みんな、お世話になりました」
「え、もう帰んのか?」
「大ちゃんと駅前で待ち合わせしてんのよ」
誠凛の皆さんは私が帰るときいて少しガッカリしていた。なんていい人たちなんだろう。最後に、俊くんに抱き付く。
「途中まで送って行こうか?」
火神ちゃんにそう言われ、お願いしようとしたらテツが、僕が送りますと言ったのでテツにお願いした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
テツと並んで歩いているとあることを思い出した。
「そうだわ、このタオル今度洗って返すってリコさんに言っといて」
「はい。その時また一緒にご飯でも食べましょう」
「うん!また家に来て!ごちそうするから!」
嬉しくてニヤニヤしていたら、テツに頭を撫でられた。そんなことされたら、もっとニヤニヤしてしまう。
「あ、そう言えば今日紫原くんに会いました」
「うそ!!」
今テツは、私にとって聞き捨てならないことを言った。
「ストバスの大会で会ったんです。まあ、雨で中止になってしまったんですけど」
「いいなぁ…ってなんでテツとは会って私とは会ってくれないのよ!」
「今日会ったのは偶然ですけどね」
よし、今日の夜電話してやろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
テツと話してたら、いつの間にか待ち合わせ付近に来ていた。
信号を渡ったところに大ちゃんらしき人が見えた。
「ここまででいいわ。ありがとう。」
「気をつけて下さい」
「テツ」
「なんですか?」
「またいつか、バスケしてよね。みんなで!」
「……」
「そしてその時は。私も誘ってよね?あんたたちが全員で笑ってるとこ見たいから。」
少し驚いたように目を開けたテツだったが、すぐにいつもの顔に戻った。
「…はい。約束します」
拳を突き出されたのでコツン、と拳を合わせた
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「だーいちゃん!」
「お、来たか」
「あんた…暗いとこにいたら背景と一体化して分かんないんだけど。肌が黒いから」
「ぶん殴るぞてめぇ!!」
番外編2【桃井と朱崎とキセキの世代】
今、帝光中学の文化祭にみんな夢中で、部活の合間を縫ってクラスの子に呼び出される人もいる。
もちろん私も、二度目の文化祭に張り切っていた。
「さつき、一緒にまわんない?」
「もちろんいいですよ!」
今年はさつきとまわることにした。さつきのクラスはクレープ屋さんをするらしく、さつきは裏方らしい。たぶん当日に追い出されるか、ウェイトレスになるわね、うん
ーーーーーーーーーーーーーーーー
さつき:クラスのみんなに追い出されたので、今からナミさんのクラスに行きますね…
ほらね。さつきには悪いけど、すっごく予想できてた。
「ナミさーん」
「あ、さつきだ。征ちゃん、出てもいいかしら?」
「ああ。俺も後から出る。」
征ちゃんに一言かけてから、教室を出てさつきと歩き出す。
「んじゃ、どこ行く?」
「バスケ部のみんなのところ行きます?」
「確かみんなは…「桃井さん、ナミさん」
地図を見ると、前から声をかけられた。見てみると、燕尾服姿のテツだった。横にいるさつきが蒸発しかける。
「テツ!あんた、なんで燕尾服なの?」
「おかしいですか?」
「お、おかしくなんかないよ!似合ってる!」
さつき、がんばった!がんばったじゃない!!さつきの勇姿に感動した。
「テツのクラスはエレガントde curryね。そのセンスはどうかと思うけど…行きましょ」
「て、ててて、テツくんの燕尾服…」
やはり蒸発しそうなさつきの手を引っ張って、テツにエスコートしてもらう。
カレーはなかなかおいしかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
歩いていると、占星術研究会の占い相談コーナーと書いている看板を見つけた。
「あ、確かここって、ミドリンがいるところですよ」
「へ、真太郎が?」
「はい。たぶん、おは朝占いを生活の基準に置いてる人だから、占星術研に目を付けられたんだと思いますよ」
…さすが真太郎。類は友を呼ぶ、ってこーゆーことなのね。
「面白そうだし、行ってみましょう!ナミさん」
入ると真太郎に会ってしまった。こいつが正しく占える訳がないのに…
「私、会長に見てもらって来ます!」
「ちょ、さつき!」
嬉しそうに走り出して行くさつきに、少しだけ嫉妬した。あぁ…私もできることなら会長に占ってもらいたいわよ!!
「見てやるのだよ、ナミ」
しょーがないから、真太郎の前に座る。水晶やタロットで見てもらえるのかな、と思っていると机の上にはホラ貝とガラス製ランプが置いてある。
「こんなんで占える訳あるかーーッ!!!」
怒りでホラ貝とガラス製ランプを拳で壊してしまった。真太郎が叫ぶ。
「あああああ!!何をするのだよ、ナミ!!これでおは朝グッズがもらえたのだよ!!!」
「知るか!詐欺よ詐欺!!ったく…行くわよさつき!」
さつきを引っ張って教室を出る。ここら辺は、征ちゃんの好きな将棋部やチェス部の出し物をしていた。いるかもー、なんて思って覗いてみると、赤いよく知っている頭がいた。
赤司様だ。
赤司様は、将棋部の部長に圧勝した。
(あ、赤司無双を私はこの目で見た…)
少しびっくりしながら歩いていると、何かにぶつかった。
番外編2【桃井と朱崎とキセキの世代】
ぶつかったのは、変な格好をした涼太くんだった。周りの女子がキャーキャー言いながら、列を作っている。
「あ、ナミっち、桃っち、おはようっス」
「きーちゃん!」
「涼太くん!…何?その変な格好」
ガーンッと効果音付きで膝をつく、フランス王朝の青年将校姿の涼太くん。でもすぐ復活した
「うち、縁日やってんスよ。だからこれはその衣装…」
看板には、艶仁知〜艶やかなる新しき愛と知性をあなたに〜と書いてあった。
「…もうどっから突っ込んでいいのか、分からないんだけど」
そう言うと、涼太くんも苦笑した。
「ナミっちの気持ちも分かるっス。俺も教室の飾り付けしてて、あれ?と思ったし」
いやもっと前から気付くでしょ、と思う。これには、経緯を見てると気付かなかったらしい。
涼太くんの話によると、初めはアフタヌーンティーの喫茶室を希望してたらしいけど、調理室の関係で飲食店のクラスは数が限られてて涼太くんのクラスは抽選に外れた。
だけど、一部の女子はアフタヌーンティーの準備を既に準備をしていた。せっかく用意したものを無駄にはできない、と用意した衣装で縁日をやろうということになった、らしい。
「でも人がいっぱい入って良かったじゃない」
「まあ、そうっスね。なんか物珍しさで人が集まってるらしくて」
「物珍しさ、ねぇ…」
涼太くんと話し始めてから、やたらと背中に視線を感じる…たぶん間違いなく、涼太くん目当てに並んでる女子たち…
それはさつきも感じ取っていたらしく、2人で顔を見合わせて、あはは…と笑う。
「あ、そうだ2人とも!紫原っちのも見た方がいいっスよ絶対!待ってて!呼んでくるから!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、ナミちんにさっちんだー」
「むっく…ん!?」
むっくんは、お姫様の格好をしていた。デカイ分、迫力もある。
「驚くっしょ?」
涼太くんの言葉に、こくこくと頷く私とさつき。すると、涼太くんはむっくんに声をかけた
「紫原っち、アレやってよ」
「えーうん。まあいいよ」
「アレって?」
「まあ、見てて」
黙って見てると、ゴホンッとむっくんは咳払いをすると腰に手を当てて、人差し指を突き出す
「ごはんがないなら、お菓子を食べればいいじゃなぁい!!」
「「…え?」」
私とさつきが驚いていると、周りの女子がキャーキャー言い始めた。
「似合うー!すてきー!」
「もっとやってー!」
な、なんてむっくんにぴったりなセリフ…
そのまま私たちは、縁日を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、もうちょっとでスタンプラリーね」
「スタンプラリー?」
「そう。その大会に男女ペアで出場して優勝すると、そのペアは幸せなカップルになるんだって」
さつきの目の色が変わり、肩を掴まれる
「まさかナミさん…!」
「そのまさかよ…!」
ガシッと私とさつきは手を組んだ。そして、勢い良く走り出す。
「がんばりなさいよ、さつき!テツにはこのこと言ってあるから!!」
「ありがとうナミさん!私、がんばります!」
そう。テツとさつきにペアを組ませるのだ。
受付会場に向かうと、たくさんの人が集まっていた。
(この中からテツを見つけるとか、砂浜に落ちたコンタクトレンズを拾うのに等しいじゃない…!)
ショックで2人でうなだれていると、大声で声をかけられた。
「ナミー!さつきー!」
「ナミさん、桃井さん」
ハッとして声をかけられた方を見ると、テツと大ちゃんがいた。私とさつきはテツに駆け寄る
「テツ!!」
「テツくん!!」
「おい、俺は無視かよ」
大ちゃんにデコピンされる。
「だってテツしか目に入らなかったもん」
「そうだよ!無視じゃないもん!」
「それを無視っつーんだよ!!」
大ちゃんを無視して、テツにはさつきと組むように言う。テツはそれに分かりました、と頷く
「おい、なんの話してんだよ」
「このスタンプラリーの話よ。あんたもこれに参加すんの?」
「しねぇよ。俺はテツに付いて来ただけだ」
「呆れた…このスタンプラリーの優勝景品は、レブロンモデルだから、ついあんたもかと…」
「マジかよそれ!!俺も欲しかったんだよそのバッシュ!!!」
すると、大ちゃんはガシッと私の肩を掴んだ。やだ、イヤな予感…!
「ナミ!俺と参加しろ!!」
あぁ…イヤな予感、的中…
「イヤよ!私はさつきの味方なの!!」
「なんでそこでさつきが出てくんだよ!」
「いいからイヤなの!!出たいなら他の女を誘いなさいよ!それか男!!」
「めんどくせぇ!!参加しろ!」
「2人とも、受付終了しますよ?」
ギャーギャー言い争ってると、いつの間にか人が私たちを避けていた。
「…しかたない…あとで焼きそば奢ってよ!」
「分かったよ」
受付を済ませて、会場へ進む。まずは二人三脚で第2ゲームへ進む、というものだった。
「勝つぞ、ナミ!」
「はいはい。ってゆーか、あんまりくっ付かないでくれるかしら?セクハラよ」
「どういうことだよ!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
スタートの音と共に、大ちゃんに引っ張られて私は走り出す。
「はやッ!速すぎ!!止まれなーーいッ!!」
「止まる訳ねーだろ!!…ッ!曲がるぞ」
「え?」
すると、勢い良く大ちゃんはカーブした。ゴールから少し離れる。
「ちょっと!なんで曲がるのよ!?」
「なんつーか、イヤな感じがしたんだよ」
「はあ!?」
「いいからっ!もう一回曲がってコースに戻るぞ!!」
コースに戻って走ってると、後ろからバゴォッと音がした。振り返ると、地面には大きな穴があいている。
「後ろの、ゴールを一直線に目指してた集団が消えてる!?なにあの穴!!」
確かあの場所は、大ちゃんがちょうど曲がったところ…すると、アナウンスが流れた。
《えー、クイズ研からのお知らせです。落とし穴に落ちた人は、その場で“失格”となるのでご注意ください》
「落とし穴って…あとだしもいいとこよ…」
てか良く見たら、ところどころ掘り返したあとのような…どことなく土の色が違う気が…!
「グラウンドに落とし穴って…本格的すぎ…」
「いいじゃねぇか。これぐらいスリルがある方がおもしれぇよ。」
うわ、楽しげな笑み…因縁のライバルと出会ったかのような…
すると大ちゃんは、私の肩に回している手に力を込めた。
「ナミ、突っ走るぞ!」
「えっ!?いや、少し慎重に行かないと私たちも穴に落ちるわよ!?」
「俺の勘を信じろ!!」
自信満々な大ちゃんを見る。
「…本当に信じて大丈夫なんでしょうね?」
「大丈夫じゃねー時は…なんとかしろ!」
「んな滅茶苦茶な!!」
「グダグタ言うな!行くぞ!!」
もう一度、私と大ちゃんは走り出した。
↑番外編2【桃井と朱崎とキセキの世代】
84:桜◆kk:2017/10/23(月) 17:09 ID:7ZY 小話まとめ1(会話文のみ)
帝光中学3年生時代のナミのセーター事情(黄瀬×ナミ)#なんか2人でやらかして廊下に立たされてます
「ね、ナミっちのそのセーターって男もんっスよね?つーか帝光のやつじゃないっスよね?」
「兄ちゃんの友達の花宮真から奪っ…もらったのよ」
「え、今奪ったって言おうとした?……姉ちゃんのお古あるからあげようか?」
「……ううん、いい!これマコの匂いして好きなの!」
「………あ、そっすか…」
「ちょっとー、何泣いてんのよ?」
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ナミの交友関係が広かった件について(キセキ×ナミ)
「えー、ナミちんって木吉鉄平と友達だったのー?聞いてねーし」
「コンビニでよく会うようになって…」
「そのセーターも花宮真のっしょ?なんなんスか!!」
「いや兄ちゃんの友達…」
「虹村さんと知り合いだったということも、聞いてないぞ」
「昔からの知り合いだったし?言わなくていいかな〜、みたいな?」
「灰崎をどうやって下僕にしたのだよ」
「崎ピョン友達だし…」
「トラ男と兄妹って聞いてねーんだけど?」
「朱崎ローだし、むしろ気付くでしょ…」
「桃井さんともいつの間に仲良くなったんですか?」
「さつきとは大ちゃん絡みで…ってゆーかなんなのよみんな!ちょっとうざいんだけど!!」
「待てナミ!話はまだ終わってないぞ」
「いーーーーやーーーーー!!!!!!」
一応の設定。
ほんと、ちゃんとしたやつ。後付けとかじゃなくて、I.Hのこと忘れてたから書けなかっただけだから。合同合宿とか正直なところW.C後の話だから。いつかI.Hの話も書くから。合同合宿の話は今だけ忘れて。またするかもだけどさ。
花宮真はローの友達
ノジコとローは帝光中学じゃない
ノジコとナミは二歳差、ローとナミは六歳差
花宮とローはローが六年生、花宮が二年生の時に出会った。
結構、朱崎宅にお邪魔していてナミたちの過去を唯一知っている。
セーターをナミに奪われ…あげた
なんかねー、色々ごちゃごちゃだから新しくスレ作り直します。
変えたい設定もあるし…少ないとは思いますが(つーかいないと思うけど)読んでくださった皆様、ありがとうございました。違うスレで作り直しした際は、もう一度足を運んでください。