東方projectのオリジナル小説です。
原作と違う部分が有るかも知れません。
博麗霊夢
東方projectの主人公。
霧雨魔理沙
東方projectの主人公。
宇佐見蓮子
秘封倶楽部のメンバー。
マエリベリー・ハーン
秘封倶楽部のメンバー。
よろしくお願いします!
蓮子視点
––––始まりは、彼女が夢の世界について、私に話し出したことだった。
彼女と言うのは、私の大切なパートナー、マエリベリー・ハーンこと、愛称メリー。
容姿端麗で、柔らかそうな金髪、きめ細かな肌、聡明な声。
ただ…唯一変わっていることがある。
いつものカフェ、いつもの席、いつものコーヒー。彼女は唐突に喋り出した。
「…夢を見たの」
私は、顔を上げた。「夢?」
「結界の裂け目じゃなくて?」
そう。彼女の瞳は、結界の“裂け目”が見えてしまう。それだけが唯一人と違うところ。
彼女は静かに首を振った。そしてゆっくりと口を開く。
「…この前、博麗神社に行ったでしょ。私一人で、夜中にあの神社の周りを一周したの。夢の中でよ?次に神社の鳥居を覗いたら、さっきまでの景色が一変してるの。山も植物もみんなみんな––豊かに生い茂って、太陽が出て、神社が綺麗に掃除されてて…」
そこで、彼女は深いため息をついた。対照的に、私はどきどきしていた。
「ついにメリーは、裂け目から結界を超えちゃったんじゃない?いいなぁ。私もそういう夢を見てみたい!」
「馬鹿言わないでよ。自分が自分で無くなる気がしてならないんだから。こんなこと話せるの、蓮子しかいないの…。お願い、私がいなくなったら…そう、‘夢の世界’から救い出して」
そこではじめて、メリーは夢の世界という言葉を口にしたのだ。私は、悪戯っぽく笑った。
「いいわよ。メリーは私だけを頼ってくれる…。嬉しうわ、もういなくなる前に救い出してあげるから」
「蓮子…」
ふたりで失笑する。
私は冗談半分でその話を聞いていたのだけれど、彼女はその日から、夢の世界の出来事を、ぽつぽつと私に話すようになった。
時には、夢の世界でとってきたものまで。
「これが、紅いお屋敷で頂いたクッキーと、竹林で拾ってきた天然の筍よ」
私は、目を見張った。
「––待って。あれは夢の世界の話でしょ?どうしてここに夢の世界のものがあるの?」
「…それが分からないから、貴方に見てもらってるの」
メリーは、私の目をじっと見つめた。
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メリー視点
ここは蓮子の部屋。私は、ぎゅうぎゅうと詰まった本棚を見た。…そして、目をむく。
結界が、視える。
空間の割れ目のような、途切れ途切れの曲線。
でもそれは、本棚の一箇所に集中的に裂け目があった。
それは、一枚の写真–––。
今度行く場所である、博麗神社。
「メリー?」
ハッとした。蓮子がこっちを見ている。
「話、ちゃんと聞いてるの?」
「…ごめんなさい、よく聞いてなかったわ」
私は、曖昧に笑った。蓮子が「ちゃんと聞いててよー」と、腰に手を当てて拗ねる。
「ねぇ、メリー」
蓮子が急に話しかけてきて、思わず体が揺らぐ。「何?」
「博麗神社って、神隠し多いの知ってる?」
「え…知らない」
「そっかぁ––、メリーも知らないかぁ。神隠し、多いの。あそこ」
蓮子は写真を取り出す。
「今度、ここに行きましょう。絶対メリーの夢について、関係あると思うから…」
ああ、そうか。
博麗神社で、私の夢について、知るつもりなんだ。
蓮子は、私のことを考えて、博麗神社を選んでくれた。
それが嬉しくて、私は蓮子の見てないところで、笑った。