NieR:Automata~9Sのコックピット・アイズ、あるいは乗り物探究~

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1:ヒゲナマズ N:A×他作品クロスもの:2021/03/16(火) 00:52 ID:1LA

西暦11945年……地球を巡り長きに渡って繰り広げられた、地球のアンドロイドと異星の機械生命体との戦争は一先ずの区切りを見せた。
アンドロイドたちは亡き主人たちの軛より解き放たれ、また機械生命体もその制御ネットワークの中枢を失った。
これは主なき人形たちのその後の物語……の、ほんの一部。
9Sと呼ばれたアンドロイドの、好奇心の物語

2:ヒゲナマズ:2021/03/16(火) 01:11 ID:PMY

Chapter1:ATM-09-ST

そこは半ば自然に飲まれつつある廃墟都市。巨大なイノシシやヘラジカが、文明の痕跡を尻目に悠然と闊歩している中を、二人の人影が歩みを進めている。
……"人影"と呼ぶのは正確ではない。二人の姿は美しき少年と少女のそれだが、その肉体は冷たい鋼鉄と柔らかな樹脂にて、彼らの主に似せて象られたアンドロイドなのだ。
少女はヨルハ二号B型、少年はヨルハ九号S型という名を与えられている。
「仕方ないとはいえ、アネモネさんも人遣いが荒くなってきた気がしますねえ、2B?」
「ナインズ、文句を言わない。私達でなければ手に負えないことかもしれない。」
「はーい。それにしても、未確認物体なんて曖昧な情報ですね。僕たちも近付いて大丈夫なんでしょうか……?」
「行けばわかるよ。多分。」
「……2B、何だか前にも増して大雑把に……。」
「なに?」
「あぁ、いえ!何でもないです……目標は水没都市でしたね。」
二人はかつて、人類の最精鋭たるアンドロイド部隊「ヨルハ」の隊員として製造され、エイリアンより地球を奪還すべく、エイリアンの尖兵たる"機械生命体"との戦いを続けていた。
だが、戦争の最中遥か昔の人類の滅亡、ヨルハ部隊の壊滅と機械生命体ネットワークの崩壊を経て、地上に残留するアンドロイドレジスタンスへ合流していた。
現在はレジスタンスの首領"アネモネ"からの依頼を受けつつ生活している。ネットワークを失い無秩序化した機械生命体は未だ多く、平和とは言い難い世界ではあるが、ヨルハの生存者を含むアンドロイドたちは"自分たちの為に"生きるべく精力的に活動を続けていた。

3:ヒゲナマズ:2021/03/16(火) 01:23 ID:PMY

そうこうしている内に、2Bと9Sの二人は目標の水没都市へたどり着いた。朽ちながらも未だ屹立する数棟の高層ビルの間を抜ければ、視界いっぱいに海が広がる。遠くにはぽつりぽつりとまばらに立つ高層ビルと、過去の戦いで破壊された超巨大機械生命体の残骸が寂しげに立ち尽くしている。
「……どうやらあれみたいですね。前回の偵察では機械生命体の数が多すぎて近寄れなかったらしいですが……。今も沢山いますね。」
地殻変動によって海岸線そのものとなった道路の片隅になにか大きなものがあるのを指差す9S。目標物の周囲には、等身の高い機械生命体が十数体歩き回っている。
「問題ない。殲滅すれば。」
「あっ、2B!やっぱり手が早いなあ……!」
『推奨:追従と援護。』
言うが早いか駆け出した2Bを追って、9Sも慌ててついていく。それは傍らに浮遊する随行支援ユニット"ポッド153"の提案とほぼ同時だった。

4:ヒゲナマズ:2021/03/16(火) 01:45 ID:cAE

戦闘用の設計と調整、プログラミングを施されている2Bの戦闘は、一方的な狩りに近かった。愛刀"白の約定"を用いた奇襲による一突き、破壊。背後から迫る敵からの攻撃は正面の敵残骸を踏み台にして跳躍し回避しつつ、勢い余って残骸を突き刺し動けなくなった敵へ踏みつけ……否、落下しながら槍の如く突き出された拳足による頭部の刺突、2機目を破壊。そのまま4機の敵に囲まれ、やや下方から突き上げられる槍が2Bに迫る。
「ふっ!」
敵に突き刺さった足と"白の約定"を引き抜きながら再び垂直に跳躍。"白の約定"をダーツの如く投擲し、頭部を貫通、3機目。自らを狙いながらも外れ、交差している4本の槍の穂先へ着地、落下速度と自らの100kgを超える体重に任せ、そのまま地面へ槍の穂先を地面に縫い付ける。破壊した1機の槍を奪いつつ、バック宙で僅かに敵との距離を取る。負けじと持ち上げようとしていた3機の敵はいきなり負荷を失った槍を誤って跳ね上げ、無防備な懐を晒す。
「……そこっ!」
2Bが槍を横に薙ぐと、3機の機械生命体の上半身と下半身が一息に泣き別れとなった。これで6機!
……否、背後から迫ってきたもう1機を、振り抜いた勢いで背後に向けた槍を、振り向きもせずに脇腹を通して後ろへ突き立てた。7機。

5:ヒゲナマズ:2021/03/16(火) 02:22 ID:.7c

『敵機械生命体、残り5機』
2Bの随行支援ユニット"ポッド042"の声が告げる。
残りの敵は9Sに殺到し、大斧や短剣を振り回して攻め立てているのに気づけば、2Bも直ちに援護に向かう。
「よっ……と、はっ……!くっ、いい加減に……!」
流麗に7機をスクラップにした2Bに比べ9Sは回避に徹していた。元より直接戦闘は主眼に置かれていないのだ。それでも横薙ぎに振るわれた敵の大斧をバック宙回避しながら、遠隔操作により浮遊させた愛刀"黒の誓約"をブーメランのように回転させながら袈裟懸けに斬り捨てる。1機。
「わっ……!苦手なんだよ、なっ……!」
直後に背後を許し、紙一重で槍の一撃をしゃがんでかわす。正面で敵残骸に刺さった"黒の誓約"を遠隔で引き戻し、そのまま自身の頭上の敵へ突き刺す。2機目。
側転して敵残骸の中から脱出した直後、新たな敵が頭上から短剣を振り下ろしてくる。万事休すか、否。
「ハッキング!」
9Sが敵に向けてかざした手に幾何学的な紋章がホログラフとして浮かび、彼から敵へ無数の光の帯が殺到していく。これこそS型……スキャナーモデルの真骨頂、直接戦闘能力と引き換えに与えられた"ハッキング"であった。敵は思考回路への直接攻撃によりその場で金縛りとなったまま、為す術なくそのセキュリティを食い破られていく。
「よし、爆破!」
ハッキングを受けた機械生命体は、激しいスパークと赤熱で全身を彩りながら半ダースのスクラップを残し爆散した。3機目。
「あとは……ッ!?しまっ……」
とはいえ、ハッキング完了までには9Sも身動きは取れないのだ。再び背後を許した9Sに、新たな機械生命体が大斧を振り下ろす。もはやこれまで……否。
「……っ、2B……!」
9Sを庇うように割り込んだ2Bは、体を大きく屈めて鍔迫り合いに挑んでいた。そして力一杯の押し合い……に、注力させた一瞬の隙に刃を滑らせ、敵の大斧をあらぬ方向へと振り下ろさせる。間髪入れずに立ち上がりながらの左膝への関節蹴り。逆に曲げられた関節からオイルを漏らしながら機械生命体は左側に擱座、2Bは軸足を入れ替え反対の足で真っ直ぐに機械生命体の顎辺りを蹴り上げる。腹と胸にぴったりと脚がくっついた理想的I字バランスの蹴り上げは、機械生命体の首を引っこ抜きながら仰け反らせ打ち倒した。2B、8機目の獲物。
一瞬の静止の後、2BはI字バランスを解いて残心した。
……8機目との戦いが決着するか否かのタイミング、最後の敵が空中へ跳躍し槍を真っ直ぐに構えて2Bへ落下してくる。動かない2B。隙だらけか……否。
「ふー……状況、終了です。」
最後の機械生命体は、空中で爆散した。

6:ヒゲナマズ 本番はこれ:2021/03/16(火) 02:39 ID:RwI

「いやー、お陰で助かりました。流石2B!」
「……ナインズも、ありがとう。」
破壊された残骸が一瞬の雨となって降り注ぐ中、何事もなかったかのように談笑……笑ってるのは9Sだけ……しながら、早速目標へと歩み寄る。
「で、これが目標ですか。こんなの、見たことないですよ……形も似ているし、未知の機械生命体でしょうか……?」
「……でも、似ているだけで同じとは思えない。」
それは4m弱の、モスグリーンを主体としたややずんぐりとした人型をしていた。その手足は機械生命体のそれよりもずっと逞しく、また5指を備えたマニピュレータらしき部位は人間に近いものだった。もっとも特徴的なのはゴーグルのような装甲が取り付けられた、椀を伏せたような首のない丸い頭部。ゴーグル部には顕微鏡のリボルバーを思わせる、恐らく光学機器と見られる不揃いなレンズが3つ並んでいる。そしてそれはゴーグル部に備わるスリットをレールとしてある程度左右に指向できるように見て取れた。そして傍らには、この人型に合わせて巨大に作られたとしか思えない銃火器らしいものがいくつも転がっている。


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