「三年前の降臨の日の直後、まさか聖隷を使って業魔退治を行なったのがアルトリウスだけじゃとはベルベットも思ってなかろ?」
「そんなことどーでもいいわ」
「こらー!儂の話をちゃんときかんか〜い」
目を引く巨大な魔女帽子を被った女性が、黒髪の業魔に向かって机を叩く。
何気ない会話だった。どこにでもいる普通の魔女と、どこにでもいる普通の業魔の間で行われた、それはそれは他愛もない会話。
「マギルゥ、それ、ちょっと僕気になる!」
「そういえば、確かに疑問ですね。聖寮以外の勢力があってもおかしくはありません」
「お前、対魔士なのにそこら辺知らないのか」
「し、仕方がないではありませんか!その辺りの情報は全く聞かないものですから...」
和風の剣士と赤髪の少女が突っつき合う。少女は顎に手を当て、むすっとした表情とともに体を若干左に傾けた。
「そういえば、聖寮が出来る少し前に、とある風の聖隷を神として崇めることで業魔からの防衛、退治を行う"よだかの星"という団体を聞いたことがあるな。あの団体は成長が早く、当時なかなかの勢力を保有していたと聞くが」
上背のある目付きの悪い聖隷の言葉に、マギルゥと呼ばれた女性が睫毛を伏せ、悪意のこもった笑みを浮かべた。
「アレは潰されたんじゃよ。他の同じような団体と共にな。聖寮に。」
>>310がね