>>201喫茶店
僕が生まれた街には、一際目立った建物もなく、とても平凡な田舎だった。
外に出れば、人通りや車通りも少なく、幼い頃の僕には
とても遊びやすい環境だった。そんな僕には、その頃から通っている、
喫茶店があった。
喫茶店では、豆を挽く音と、マスターの好きなジャズが流れている。
そこが一番落ち着いたから、友達と喧嘩した時や、悲しい時に、
必ず行った場所だった。僕は今、18歳だ。
今でもよくこの喫茶店に通う。
まだブラックコーヒーは早いからと、紅茶とケーキをセットで頼む。
いつもと変わらないこの風景。でも人と言うものは変わるものだ。
老いる主人を見てそっと口を開く、
「そろそろ、弟子が欲しいのでは?」
そう言うと、マスターはにっこり笑う。
「そうこなくっちゃ」
そう言ってよぼよぼの指で指パッチンをした。
魔法のような時間だ。