ぼうっとした頭の中で、なぜわたしは17歳の男の手を握って買い物をしなきゃいけないんだろうって改めて思っている。まぁ、理由は簡単でこの男、ありとあらゆる『音痴』を制覇しているのだ。味覚、方向………上げたらきりがない。しかもこの男それだけでない、いきなりものや人に当たる。それを防ぐために荷物を持たせて手を繋いでいるわけなのだけど。疲れているのか周りの景色も何となく歪んでいる気がする。ため息とともに彼が持っているかごに、買い出しの紙に書いてあるソースを入れる。
「 ……なァ…コレ…ケチャップなンだけど…おめェ……頭大丈夫かよ?…… 」
馬鹿に注意される末路。そう言えば昨日三時くらいまで起きてたんだっけ。ふらふらとするのもそのせいかと思いながら、これじゃなんかやばい気がする……。そう思って残りの材料は諦めて店を出る。視界が揺らぐ中屋敷へと足を進める。なんか寒いし、情緒不安定の一歩手前まで来てる。夜更かしってこんなに、やばかったっけ。そんな事を考えつつ、先ほどから思っていた言葉を彼に告げる。
「 ………trust me… 」
気付くか、気づかないか、半々だ。どこかで気付いてほしい思いかもしれないし、気付いてほしいかもしれない。でも、なんていつもより回らない思考でぼんやりと考える。だめだ、歩くのも結構辛い。ふらふら、くるくる回る視界の中で、周りの景色を見る。屋敷までまだ結構ある。
「 …お前一人で何言ってんだ、とうとうイカれちまったかァ? 」
怪訝な顔をしながら言う彼に思わず、いらつく。馬鹿なのは知ってたけど、そんな言い方はないじゃん……。そんな思いからか、思いの外『レイ』にしてはとげとげしい言葉を紡ぐ。
「 …………なんでもない、まぁ、通じるわけないの知ってたし 」
「 あァ!?バカにしてンじゃねェよ! 」
明らかにいらいらしている彼にたたかれそうになるのをふさぎながら、頬を膨らませながらこちらも告げる。ただ単純にいつもなら許せる暴言や暴行も今は頭に響くだけでいらいらを増やす原因にしかならない。
「 ……もう君なんかしらない……これからは買い出し一人で行くから、もうい…い………… 」
思わず口から出た言葉にハッとしつつ、屋敷のドアを開けて、見知った紅茶派の人の顔が視界に映ったところで、わたしの意識が途切れた。
※体調不良でうちの子がとてつもなく苛ついてます。すごく情緒不安定です。
※単純に英語を使いたかった、それだけ。
るーたん、レイシン……書いたよ( ぼそっ )