西の国の海に面している街にはこんな言い伝えがある
“森を抜けた海の見える場所、街の最西端には行ってはいけない”と。
子供に対する危ないところへ行くなという戒めのためのものかと思いきや事実だったりする
危険な集団のアジトになっている、幽霊が出る、と様々な噂が流れいつしか誰も近寄らなくなった
言い伝えに登場する場所には大きな建物があった
外観だけを言えば一件の広大な屋敷の様だがその色は扉から壁に至るまで全てが白。
窓越しに見えるいつも閉まっているカーテンも門の色まで真っ白い建物
門にかかった白い表札には家主の名前は無く、その建物唯一の黒色で『アビリタ研究施設』
アビリタとは街に伝わるもう一つの伝承だ
生まれながらに不思議な力を持つ者、超能力を持つ者をアビリタと呼ぶ
本当に存在するのかどうかさえ疑わしく都市伝説と化していた
ところで、研究施設と聞いて人体実験などを思い浮かべただろうか
その建物はそう言った場所では無いらしい
昔一人の学者がアビリタが実在するのかを確かめようとした
探すうちに能力を持った子供が集まりいつしか施設になったという
人体実験や薬の投与など想像されるようなおぞましい施設ではない
ただ一週間に一回ほど、施設に住むアビリタ達が能力を自分で制御できるかをテストする
名ばかりの研究員はその結果を元に能力の原理を調べるだけ
中は個人の部屋と研究部屋、ダイニング、リビング、キッチン、風呂場、後は長い廊下
普通の家と変わった点は少ない
外観を見るだけでは分からない空間だろう
さて、この話を貴方は信じるか?