サン・ピエトロ
「隙だらけですよ?」
《ザンッ》
舞綴が正義の定理やピエトロに人里の破壊行為を擦り付ける事を考えたその次の瞬間、舞綴の正面の視線の死角に潜り込んでおり、思考が戦闘以外に向かい生まれたほんの一瞬の隙を最大に利用し、双剣の如く変異した交差させた両腕を広げるようにして振るい、舞綴に向けて建物をまるで豆腐のように簡単に切り裂いた白い斬擊を解き放ち、その斬擊によって舞綴の背後にあった民家もまた、バラバラに切り裂かれ、破壊される……
当然、そんな攻撃を受ければ、民家よりも遥かに質量の劣る人体などは容易く切り裂かれる、それを、思考のほんの一瞬の隙を使って接近し攻撃した事から、ピエトロのパワーだけでなく、スピードも飛躍的に上昇している事がわかる。
【ですね、主様が来ましたら一度聞いてみます。
上のは出来るかどうかのテストです。】
「上げる加速度(ギア)があるのは自分だけと慢心する。だから見る目がないと言う」
舞綴はほぼ瞬間移動と見まごう動きで大きくかがみ込み、真横に一閃された剣撃を紙一重
で躱してみせる。そして顔の前に両手を構えるピーカブーの構えから左の足で地面を蹴って肉薄する。
今よりもさらに近く、くっつかんばかりの超至近距離――――。
「そっくり同じ言葉を返すぞ。懐ががら空きだ、莫迦め―――まず一カ所(ひとつ)!」
かがめた体を伸び上げると同時、ピエトロの、剣を振り切って開ききった体の顎にめがけて背後に
振り絞った勢いを付けたフックを叩きつけた。ピエトロの頭部が、砲弾の着弾にも似た衝撃音とともに
空を仰ぐように上向きになる形でかち上げられる。
―――ガゼルパンチ。外の世界のとあるヘビー級ボクサーが生み出したとされる、必殺の奥義の一。
「武器はデカければそれだけ強いとでも思ったか。そんな振りの大きな得物で拳士(インファイター)の
懐に自ら潜り込むなど、サンドバックになってくださいと言っているようなモノだ、素人(・・)め、
もうこの間合い(レンジ)から逃げられると思うなよ―――!」
一方亜留羽はといえば……。
「いつつ、あ、あぶな……!!」
転んでいた。たまたま足下に転がっていた角材に足を取られる形(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)で、
真横に振るわれた剣を鼻先ギリギリをかすめて避けるように地面に頽れたのだ。
「づっ、怪我の功名、ってわけじゃないんでしょうね……!――――でも、礼なんて言いませんからね
(・・・・・・・・・・・・)。忌々しい――!」
此処には居ない、しかし間違いなく自分を見下ろして嘲笑しているであろう忌々しきかの存在(・・・・・)に
対して、亜留羽は手が白くなるほどに本を握りしめ、血反吐を吐かんばかりの形相で吐き捨てる。
【許可でましたねヽ(゚∀゚)ノヒャハー】