>>201
氷華
「ありがとう。
貴方へのお見舞いの物」
最初に彼女と会った時の事も鮮明に覚えている……路地裏で半グレの集団に絡まれているところを助けた時の事も……記憶力がいいと自分を褒めてくれる夕渚に感謝すると、彼女が学校の友人から貰ったお見舞い品を
氷華は微笑んではいるものの、悪を倒せば倒すほどに、他者を信じたり思いやる事が出来ない程の不信と憎悪を募らせ、その心からは人間性が削られてしまい、その影響で最初に夕渚と会った頃に比べて明らかにその顔は人間らしい温もりが失われてしまっているのだが、氷華自身はその事に気付いていない……
氷華
「本当なら貴方にはもっといい病院を紹介して、沢山のお見舞い品をあげたいところなのだけれど……私の立場的にそれが出来ない……だから代わりにこれをあげる。」
《パキンッ》
氷華は右手の掌に氷の鶴を生成して見せる。
千羽鶴をイメージしたもので、今にも動き出しそうな程に精巧な造形をしており、硝子細工のように綺麗な物となっている……
本来なら多額の支援金や、よりより医療装置の整った病院に移動させてあげたいのだが、そんな事をすれば直ぐにその提供者として自分の存在が明らかになってしまい、間違いなく報復として夕渚にまで危険が及んでしまう事から出来ずにいるため、これが氷華が出来る唯一のお見舞い品となっている……
もっとも、氷華の形成した氷は術者である氷華が去ってから少しの時間が立つだけで直ぐに気化して跡形も無くなってしまうのだが………