>>569
「浅い……っ!? いや、『通し』にくいか!」
鉄山靠の手応えが薄いことに驚き、これでは有効打にならないと直感で理解する。
蜻蛉は懲りずに頭上から突っ込む。
相手の特性は大方わかった。圧倒的なスピードを生み出す為、体重などが犠牲になっているのだ。
「そんなら……よっ!」
頭上に手をかざし、捕獲用の大型網を形成。無論金属製だ。そしてそれを、壁などを伝う形で蜻蛉を広く包囲し、捕らえようと動かす。
高速飛行に特化しているのなら、多少無理矢理にでも捕獲してしまえばいい。あの蜻蛉には踏ん張りを利かせる重量も、一瞬で四肢を噛み千切るパワーもない。
「へへっ、じきに俺らの援軍が来るぜ。袋のネズミになるのは、お前さん達さ……そらっ!」
空いている片腕を使い、虫の男の顔面へ指弾でパチンコ玉を飛ばす。
虫の男が何やら大きな仕込みをするつもりなのは何となく察せる。そしてそれを簡単に許す隆次ではない。
《ゴッ》
中川の予想通り、速度に特化した分、パワーに劣っており、ジタバタと羽根や脚を動き回して脱出しようともがくものの、大型網に捕らわれ、追撃や反撃はおろか、自由に移動することさえ出来なくなっている。
蟲鴉の顔に向けて放たれたパチンコ玉だが、蟲鴉が吐き出す際に嗚咽により体が動いていた事もあり、蟲鴉の口内にある蟲に当たると、パチンコ玉が砕け散るが、その激突の衝撃によって蟲鴉が床へ倒れる。
《「破壊戦甲蟲」》
蟲鴉
「ぐ……もう……友達を呼び出せない……が………これで充分…………」
倒れた蟲鴉の口内からは幅だけで10m、長さに至ってはそのあまりのサイズに広間に収まらず、壁を破壊し、発電室に繋がる扉の傍の壁を破壊して頭部が現れると言ったように、どれだけ小さく見積もっても60mを優に超える圧倒的な巨大な蜈蚣が生み出されてしまう。
更に、先ほどの激突したパチンコ玉を砕いた事から、その外骨格も鋼鉄と同等か、それ以上もあると言うように、尋常ではない戦闘力を持っていることがわかる……
もし、こんなものが地上に出てしまえば、狼谷の攻撃部隊に甚大な被害が出てしまうだろう……
幸いにもこの蜈蚣を生み出した事で蟲鴉は全ての体力を使いきり、意識を失っている。