>>576
「おいおいおいおい……」
First武闘派としてどころか、これまでの人生でも前代未聞の事態に戦慄する。
「怪獣映画じゃねえんだぞ、ちくしょう」
苦笑いで毒づきながら立ち止まり、両手にナイフを3、4本づつ形成。そしてばら蒔くように投げつける。
「よっ! ほっ!」
再び形成、投擲。それを何度も繰り返す。
(あいつはもう伸びてる……ってことは、とりあえずは打ち止めか)
唯一救いがあるとすれば、そこだろう。
少しだけ胸を撫で下ろしつつ、狼谷に通信を入れる。
「狼谷の旦那! 十二鴉の一人がとんでもねえ蜈蚣のデカブツを、能力で作りやがった! もしそっちに行ったら部隊が全滅しないように注意してくれ!」
狼谷
『あァ!?なんだ、今此方は手一杯で忙し……
……って、蜈蚣のデカブツだと!?』
アジトに乗り込んだものの、桜空の相手を素鴉の小隊が、紀と中川の二人に水鴉と蟲鴉と言うように、十二鴉を集中運用しているからか、空いた通常戦力が集結しており、銃弾が飛び交う戦場となっており、とても加勢に向かえるような状態ではない。
そんな中で中川の言葉の中にあった"蜈蚣のデカブツ"と聞くと、様子が一変し、無線機を介して幾つもの爆発音や銃声、敵味方の怒声や怒号に負けじと助言を言う。
狼谷
『こっちの事はいい!それよりもソイツは一匹で武装勢力を丸ごと殲滅する力を持つ化物で、蟲野郎の切り札だ!まともに戦うな!!』
《ドガガガガガガガガガガガガガガッ》
狼谷がまともに戦っても勝ち目が無いと言うのと同時に巨大な蜈蚣もまた動き始め、周囲の通路を突き破り、通路の先にある岩盤や岩石をも容易く砕きながら縦横無尽に動き回る……
巨大蜈蚣には敵味方の区別が無いのか、理性や知性と言うものを備えていないのか、破壊した通路や部屋の先にいた鴉や、中川が捕らえた蜻蛉を捕獲網ごとバラバラに破壊していく。