「あぁ、その忠告ありがたく受け取っておこう。」
そう言ってスツールから立ち上がり、出口に歩き出したあと
「おっと…これを聞くのを忘れていたな…」
くるりと振り返りまた此方へと歩みを進め、ゆっくりと屈み相手の耳元に唇を寄せると
「もし…知っていたら…」
形の良い唇からといきと共に囁かれる
「このあたりに…奴隷市場はないだろうか」
今度こそ蛇のように耳元まで口が裂け、牙の隙間から覗く真っ赤な舌は二又に裂けていた。……その時の彼の表情は長い前髪と手に隠されて誰の目にも映ることはなかった。
酒場の酔っぱらい
「…………!!
奴隷市場なら近くの内陸側の町に一つあるが……」
大金を目にして酔いが覚めたのもあって、今度は蛇のように避けた口に牙、二又の舌に気付いて怖気を感じるものの、相手の奴隷市場を探す問いかけに対して素直に応える
普段の彼(酔っ払い)であれば軽口や冗談の一つを合わせて言うのだが、それをするような素振りは無く