>>19
「ふむ…、その薬草なら心当たりがある。ついてくるといい」
彼から伝えられた特徴を記憶し、この森全体の構図を脳内に描く。直ぐにその薬草の在処を思い出すと、まあ案内した方が早いだろうと付いてくることを促し。屈んでいた体勢から立ち上がり、ひらりと身を翻し歩を進める。鬱蒼と茂る草木を掻き分け乍ら、後ろを振り返ることなく口を開いて。
「…お願い事なんだけどね。私と遊んでくれないかな?」
「こんな森じゃ本当に誰も来てくれなくてね。まあその方がゆっくりできるし、無為な闘いを避けたい身としては好都合なんだが…怠けていたらどうも動きが鈍くなってしまって。君なら私の攻撃で弾け飛ぶことはないだろう?だから是非ともお願いしたいんだ」
夜王様に見限られて屍鬼になるのは嫌だし、急な戦闘で体が動かないのも困る。久々の来客に開いた口は止まらないようで。暫く進むと、開けた場所に出る。そこには彼のお目当てである薬草があった。先導するように彼の斜め前を歩いていたため、止まれば彼を振り返り上品に掌で薬草がある場所を指す。つい癖で視線を下に向けたが、そこに彼の顔はない。そうか、彼は私より背が高いんだったな。迷い込んだ小児を出口まで案内することの方が多いようで、自分の癖にくつくつと笑い声を漏らすと視線を上げて。好きなだけ持っていくといい。そう言うかのように首を軽く傾げてみせた。