ぼくは逆さまに堕ちて行く 堕ちて行くように昇って行く
天と地の分かたれた蒼穹の中へ···
虚の翼を羽ばたかせ
「此処」ではない、"何処か"へと、"何処"にもない『彼方』へと···
『神曲 code:0』
リンゴォーン、、リンゴォーン、、、
響き渡る鐘の音とともに虹色に開かれた門の奥、壮麗荘厳な大いなる玉座が据えられていた。
その玉座の周りには額に『偉大な神』と印章のある二十四人の長老の座が据えられ、
天使たちとともに神を讃える祝詞や詩を絶え間なく謳っていた。
「神の御名は代々とこしえに。アーメン、アーメン。」
···しかし、『神』と呼ばれる方のお姿は、その玉座にはなかった。
天使が近づいて来て、わたしに言った。
「あなたは、神が"玉座におられる"から、神は在ると信じるのですか?」
天使は「付いて来なさい」と言ったので、わたしは彼に従った。
···付いて行くと、
そこは壁も床も白く染まった「お城」のようなところで、
その天井は、見晴かすほどに天高く、そこから光が降り注いでいた。
天使たちは、衣をまとっている者もいない者も、素肌が透けて見えないように光を纏い、
煌めきを残しながら飛び交っていた。
···そこで、隣りで一緒に歩みを進めていた天使が立ち止まった。
「あなたは、"沈黙する神"をどう思いますか?」
···わたしは、さきほど見たあの玉座を思い浮かべた。
天使は続けた。
「そうすると、「神はいない」と感じるのだろうか?それとも、「ただの傍観者」であると
しか思えないのだろうか?」
そう訊ねた天使の顔には、少し悲しみの色が見て取れた。
「正直をいえば、我々「天使」といえど、本物の神のお姿をその目で見ることを許された者は
少ない···。しかし、我々は神という存在を常に「感じる」ことができる。
···それは、どうしてだと思いますか?」
わたしは正直に「分からない」と答えた。
「···我々が、『神の名』を口にするとき、またその『御名』を讚美するとき、言い知れぬ
喜びに包まれるのです。···何とも言えない高揚感とともに幸せそのものでもある。
そういうとき、御父である神は、片時も離れず···いや、むしろ「我々の中に現存なさる方」
であることを知る。"神を見つけた"ときほど幸せなときはないのです。」
そう話した天使の顔は、さきほどと売って変わって少し頬が赤く紅潮しているようだった。
天使の純粋さに、また輝きが添えられたかのように···
天使はさらに続けた。
「御父である神は、我々の全てを知っていてくださる。我々がどこから来て、どこへ向かうの
かも···我々が『神』という御方を知らないだけなのです。」
天使は、その彼方にある天井を見上げた···