>>65
あ、狼は聖書さんだ。
初日犠牲者の死体を発見していつも通りの流れで推理を進行する中、ふとしてしゅしゅは人狼が聖書ではないかと確信にも似た感覚を抱いた。
まだ投票まで時間があるが、さあどうしようかとチラチラと聖書の方を見ていたら、ずっと黙って顎に手を当てて考え込んでいた聖書が不意にこちらを見た。
「!」
「!」
瞬間、二人の視線がぶつかり合う。
覗き見がバレてしまった、としゅしゅは狼狽したが、それと同じくらいに聖書もまた、驚きと混乱を露わにしている。
探り合うように、または先に目を逸らした方が負けとでも言うかのように、どちらも視線を離さないまま投票時間はやってきた。
結果、その日吊り上げられたのは聖書ではなかった。
ぐったりと自室で項垂れながらしゅしゅはため息をつく。あの場で発言していれば何か変わったのかもしれない。無駄な犠牲を増やしてしまったものだ、と悔いる気持ちは少なからずあった。明日こそなんとか聖書さんを吊るよう誘導しよう、と考えて、ようやく寝床についた。
しゅしゅ殿が先程からチラチラと見てくる。
刺すような、というよりくすぐったい視線に、聖書は少し恥ずかしくなっていた。なぜ見られているのかを知っている。しゅしゅが自分を好いているからだ。これは何時ぞやに悪魔から貰った情報だった。以来、聖書はしゅしゅの視線を鋭敏に感じられるようになった(自意識過剰な部分もあるが本人はわかっていない)。
真面目に推理に集中してください!
なんて心の中で思って見るものの、心底からは無視できないほどの嬉しさが湧き上がってきていた。自分からアプローチはできない。とても奥手な上仕方がわからない。だからこうして、しゅしゅから一線を超えてやって来るのを待っている。
にしても今日はやけに見て来る。しゅしゅ殿はどんな顔で俺を見ているのだろう、と羽毛のようにくすぐって来る視線に我慢できなくてついに目線をやった。
ばたりと目が合う。
「!」
「!」
しゅしゅが驚いたように目を見開いている。しかし、目は逸らさない。
二人っきりの世界にいるかのような錯覚がどろりと頭を甘やかに包み込んでくるような気がした。
ふわふわとした頭のままで気が付けば夜。早々にベッドで横になって天井を見つめながら、聖書はある決心をする。
ーーこのゲームが終わったら、例えしゅしゅ殿が来なくとも自分から境界線を跨いで行こう。
さて、明日あたりでは占い師であることを告げようか。
まさか自分が過度に潜伏しようとした行動が裏目に出て疑われたとは夢にも思わず、聖書の夜は更けていく。
すれ違いに草生えた
本当にありがとうございます><><><こういうすれ違い勘違い大好物です
>>75
オチに草