>>23
……それは吹雪だった、回転する白狼の放つ雪にも似た白き体毛は無数の白針となって、あらゆる命を終わらせる死の吹雪を作り出す。
周囲の草が円形に薙払われる様を虚虚実実は白狼の真上から俯瞰していた、跳躍ではない、彼女は一歩も動いていない、事実二人の虚虚実実は今現在も草を踏みしめ地に立っていた。
つまり、この戦場に虚虚実実は都合三体、彼女達には僅かな差異も見受けられず、全くの同一と言って差し支えない。
そして更なる異常は、放たれた白針の内、虚虚実実を傷つけたものは一つとしてないということだ、白針はまるで煙に針を突き刺したかのように虚虚実実の体をすり抜け草原の彼方へと飛び去った。
白狼の直上、虚虚実実は落下していた、その手にはナイフを握りしめ、明確な殺意と共にこの戦いを終わらせんと銀刃を降り下ろし。