「───それいじょう、は、みのがせない」
2人の少年少女とヴィランの衝突が起こるその場所に、ふと、一つ、水面に落ちるひとつの雫のように響き渡る声が降る
「『─例えば、途切れた空が見えたなら、震える僕の声が聞こえるのなら─』」
どこからともなく聞こえる歌
美しく響くそれは、不思議と、この状況を鎮めるように、妙に落ち着くような感覚に陥る
「『─バラバラに砕けるほど舞い上がれ、引き裂かれた僕らの果てなき翼─』」
ふわりと、2人の少年少女の周りにゆるくかぜが巻き起こる、それは暖かく2人をつつみこみ、次の瞬間には、今までおっていた怪我や、うしなった体力がじわじわと回復してゆく……!
号令と共に動き出したヴィラン達の一斉攻撃、相応の負傷を覚悟して冴月は身構える、もしかしたらジョーを守り切れないかも知れない、そんな不安が頭をよぎった刹那。
>>25
「───それいじょう、は、みのがせない」と、その不安を掻き消すように凛と響く声、響き渡るそれは歌へと変わる。
「暖かい……それに身体が軽い?」
屋内なのに暖かな日射しを浴びているような感覚、なんだろうこれ? わからないけどこれなら!
冴月はヴィランの攻撃を紙一重で回避。
>>28
ヒールの音を響かせ現れたのは、どこかで見覚えのあるような容姿の少女。
「あなた、何者なの?」
そんな言葉が漏れるのも無理はない。
その少女は異形のヴィラン達に恐れる様子も見せず薄緑の長髪を揺らし、まっすぐ自分の元へ歩み寄る。