【金の鹿は知っている】
*過去*
私の母はとても優しい人だった。
何故過去形か?…もういないから。
とにかく、母が私に怒ることなどなかったのだ。
私が、父を殺したときも。
殺した理由の前に、父がどんな人間だったかを説明しなければいけない。
父は医者だった。最低な。
難しい手術は他人にやらせ、高い金を払える患者にのみ媚び、看護師と愛人関係を結ぶ。そんな人だった。
私が父を殺したのは…なんでかな、よく分からない。
けれど、夫の酷い生き様に母が苦しんでいるのは知っていた。
だからだと思う。父を殺せば母が救われるような気がしたんだと思う。
ただそれだけかな、うん。
母に喜んでほしかった。自分に愛をくれる母に。
『麗亜奈、良いことを教えてやろう。
誰かに何かを言われたらな、とりあえず「はい。」と言っておけ。』
『えぇ、なんでー?』
『素直に従っておけば面倒くさいことにならないからだ。この言葉は、決して誰も怒らせずにいられる。』
『んー…はい!』
私は決めたのだ。
自分の手で母を救うことを。
父との思い出を血で汚すことを。
『貴女はできる子…これからもがんばるのよ』
『はい。』
>>156-157
うわあぁぁぁ
重い...過去重い...
ホントに言葉の使い方が上手い...分けてぇ←