小さい頃から愛情表現は苦手だった。
自分と同じ双子の妹は父にも母にも可愛がれ。
終いには一歳年上の兄にも可愛がられていた。
双子の妹、琥珀は成績優秀。運動神経抜群。
なんでもできる彼女は一年、また一年と歳が積み重なっていくと共に賞状が増えていった。
それに比べて俺、…当初、珀斗は何もできない子だった。
母から何度も「なんであなたを産んだのかしら」と言われた。
母は妹の優愛や琥珀、兄の伊縁には優しかった。
なぜか俺だけは愛してくれることはなかった。
正直、母が死んだ時の俺は喜びと悲しみが混ざっていた。
喜びの方が強かったけれど。
でも、葬式では泣いてしまった。
そんな時にも琥珀は大丈夫だよと背中を叩いてくれた。
その一つの行動に少しイラつきを覚えた。
また数年経った。
父の暴行が激しく、家にいるのがつらくなった俺と伊縁はこっそりと抜け出してきた。
そして今、離れたところの中学校にいる。
「すごい!小山くんって本当に頭良いんだねっ…!」
「かっこいいし、運動神経もいいし…小山くんっていいよね」
周りからそんな声が何度も飛んできた。
あの家から抜け出してきた後、俺は必死に勉強をした。
琥珀を抜かすだけがために。
中学二年の春、一人の女が俺に話しかけてきた。
「小山くん、私ね。小山くんが好き」
そんなことを言ってくる彼女の名前は…ああ、なんだっけ。
10年も前になると忘れちゃうね。
彼女はスタイルが良く、明るい性格からみんなの人気者だった。
そんな彼女の告白だ、無理ですなんて言わずに俺は一言だけいった。
「よろしくね、」
彼女と付き合い始めて3ヶ月程した時だ。
彼女が俺の家に来て、抱いてと俺にねだった。
ビッチなのかと思ったが、言われた通りに抱いてやると違った。
そんな彼女が月夜に照らされる中、ぽつりと呟いた。
「あのね、私。持病があるの。」
ぽつり、ぽつりと話す彼女の言葉を俺は聞き逃さなかった。
「あと1ヶ月。もつかもたないか。」
彼女の言う通り、1ヶ月がたってしまった。
今、目の前にいる彼女には白い布が被されている。
白い布をとると、白く冷たい、もう開かない彼女の顔があった。
「死んじゃったんだ」
人の死を見ることはあまりなかった。
それに彼女のことは好きではなかったはずだった。
でも
なぜか心にチクリと何かが刺さって。
「…な、にこれ。ばかじゃないの。」
チクリと何かが刺さる胸を強く握った俺はその場から離れた。
それからだろうか。
俺は他人に感情を表さなくなった。
それ以来、俺の周りからはどんどん人が離れていく。
そして中学卒業。
それと同時に琥珀は俺の家に住むようになった。
過去を捨てたい俺と彼女は勝手に名前を変えたのだ。
レオ、リオ。母が昔つけようとしてた名前。
俺たちは新しい名前でいつも通り生活していた。
「…レオ、寝てばっかりいると太る」
リオはいつもうるさかった。
家庭的なことは得意な彼女だが、すぐ人を注意する。そこが彼女の欠点である。
「うるさい」
そんな会話が続く毎日だった。
一応俺は学校に行っている。気が向いたらだけれど。
リオは学校に行かなかった。
聞いたところ、前の学校にいた時に酷くいじめられたらしい。
そりゃあ腕に傷をつけるだろう、そんなことを思っていた。
また、日が経った。
俺は受験シーズンといわれる時期になると夜な夜な女を連れ込んだ。
俺に惚れて抱いて欲しいというクソビッチ共。
「あたし処女だから…優しくしてっ、愛してる」
そんな言葉をかけてくる女がとても気持ち悪かった。
俺が優しく抱いてやると最後には「好きです」などと。
抵抗もしない女には興味がない。
女を抱きあきた時にはもう16歳だった。
おれは受験を受けなかった。
もちろんリオも。
「レオ、今日も女を連れてくるのか」
16歳になり、口調が少し変わったリオは俺をじっと目で捕らえた。
「もう抱くような女はいないよ」
「夜な夜な遊ぶな。うるさくて寝れん」
リオは一言だけ告げると、料理をし始めた。
そんな彼女を少しからかいたいと思った。
「ねえ、リオ。男1人には抱かれたことないんでしょ?」
彼女の背後に周り、彼女を軽く抱きしめた。
* * *
昨日の夜中、リオを抱いた。
彼女は泣きながら抵抗していた。
『やめろ』
『こんなのもう嫌だ』。
そんな言葉を言ってきたのは彼女が初めてだった。
それだけに興奮した俺は彼女にたくさん痕をつけ、彼女の唇を奪った。
驚きを隠せなくなったのか彼女は最後に俺を蹴り、自室にこもった。
さすがにやりすぎたかもしれない。そんな気持ちが脳裏をよぎる。
「…まあ、あんなことされて。俺に無理やり抱かれたしなあ」
リオは俺が知らない間に結構つらいことがあったらしい。
小学生のころ、仲が良かった双子と違う中学に入学し、いじめの標的にされた。
その中学校はもちろん受験校。リオは勉強に追いつかず、テストも点数が下がる一方で。
父親はそれに気づき、リオへの虐待が前よりも