【輝針城】
正邪
「はぁ……はぁ……くッそ……!!
何とか此処まで逃げて来れたが……ここまでか………」
まだ輝針城が鬼の住まう異界に封じられている頃、打出の小槌の噂を聞いて様々な苦難や死闘の果てに何とかこの城にまで辿り着く事が出来たものの、排他的な鬼によって正邪の左腕には大きな切り傷が出来ており、右目が潰れ、血だらけになり、息も絶え絶えの状態になっている。
最初の目的としては、打出の小槌(小人族以外は使えない)を盗む事を企んではいたものの、これだけの傷を負わされた状態では例え小人であろうとまともに戦えば力の弱い正邪では簡単に倒されてしまう。
それがわかっているのもあり、城内の廊下の壁に背中を預け、息を整えながら、スカートの端を千切って紐状の布にすると、それを左腕の切り傷の上で固く結んで止血しようとする。