生徒たちは、『星とたんぽぽ』の音読を冷めた目で見守る。
先生の授業を、先生本人以上に真剣に受けている者は、
本間を除くと、1年の中旬までしか学校に来なかった石田だけだった。
先生は、生徒達の真剣さの欠如に気付いていたが、親達のクレームを浴びせられると思うと、妙に生徒たちを刺激することなど出来なかった。
「はい、今の詩を聞いた感想、誰かに発表してもらうぞ」
「先生、俺!」
岡は、いち早く反応した。本間にいい所を見せたい一心で。
「そうだな、岡。挽回のチャンスだ。」
だが・・・岡は、こういうシチュエーションは本当は苦手だった。どうせなら、深いコトを発言したいのに、頭は真っ白。
『・・・考えろ、俺。気合だ!本間ちゃんに感動してもらうんだっ!!』
そして・・・
「ほ、星とたんぽぽのチョイスが!っ金子みすずらしいと思いました!」
・・・・・・くすくす・・・・・・うふふ・・・・・・。
クラスからは、笑い声が聞こえる。しかし、岡だけはマジだった。
「・・・」
本間は、下を向いて震えていた。あまりにシュールな回答に、ほとんどの人が抱腹しそうな勢いだ。本間も例外ではない。
先生は、苦笑していた。
「あのなあ・・・岡。もっと、こう、あんだろ?別の言い方がよ。一応授業なんだから」
「え・・・あ、さーせん」
『俺、どっかミスった・・・?』岡は、立候補したことには後悔もせず、どこを反省すべきかだけを必死に悩んでいた。