でもその優しさらしきものに惹かれる女子が多いのも事実らしい。
たまに呼び出しを食らってるのを見る。
全部断ってるみたいだけど。
ふと窓の外を見ると、
手をつないで歩いている男女の姿がある。
「……ねぇ、浦田?」
先ほど「字が汚い」宣言をされたので
一度全部消して白紙の自分の反省欄とシャーペンの先っぽに目線を移しつぶやくように声をかける。
浦田が反省を書いていた時の私のように
オレンジ色の校庭を見つめていた浦田が「ん?」と返事をした。
その顔は、多分他の男子より格好いい。
黒髪なのに厳しい印象にならないのは顔が華やかだからだろう。
切れ長の目。瞳は真っ黒で引き込まれそうな色。
高めの鼻は存在感を主張。
不思議そうに端を曲げた唇は薄く綺麗。
整いを隠せない顔を締めくくるのはこれまた綺麗な輪郭。
この顔にお熱になる女子の気持ちもわからなくもない。
「なに?明希」
名前を呼んだっきり黙り込んだ私の顔を覗き込む浦田。
整った顔が近くにある。
不覚にもそれにときめく。
もちろん、恋愛感情は抜きとして。
「んー…、あのさ、浦田。
恋ってどんな感じなんだろうね。
付き合うってどんな感じなんだろうね」
「はっ?」
ふと湧いて出た疑問を浦田にぶつけてみたけど
やっぱりわからないと思う。
だってコイツだって自称初恋がまだの人間だし。
聞く相手を間違ったと思い、この話を振ったことを謝ろうと口を開く。
「ごめん、浦田にもわからんよね。こんなこと聞いて、ごめ――」
「――わからないんなら、俺とちゃんと付き合ってみる?」