いつもの路線、いつもの道、いつもの犬の吠える声…。そして私立桜庭中学の門を通る。そんないつも通りの登校は、靴箱で破られる。
桜色の封筒に、<佑月さんへ>と少し角ばった、綺麗な字で書いてあった。封筒を開けると、桜の香り(と、いっても桜の香りは高くない)が香る。
封筒と同じ色の便箋が出てきて、勝手に開いてしまうのではというばかりの主張の強さだった。文面には月並みな褒め言葉と、「好きです」の四文字。差出人は「貴方を想う者」
「はっ…?」
あまり可愛らしくない声が漏れる。わけがわからない。こいつは好きなんじゃないのか、じゃあ、なんで?