天狗娘の何かがちょっとずつ変わるかもしれない世界。【単発?】

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2:羊羮◆R.:2015/02/27(金) 15:45 ID:hRQ

[第一和。 私、天狗です。]

木の大枝に股がって、うつ伏せに寝転がって眼下を眺める。
こうしていると風が通り抜けるのと、木の葉の擦れる音が聞こえるのです。
眼下の道では、山彦・呼子姉妹の小さな喧嘩が起きています。
私から見ればどーでも良い、しかし彼女達にとっては重要な問題が。
止めないのですかって?
遠目の見物は楽しいですよ、

「ああ、馬鹿やってますねぇ」

そんな風に思えてきて。
ん?
他人の不幸は蜜の味、というのとは、また違うのですが……
単純に面白いだけなんですけどねえ、まあ、その解釈でも合格点をあげますよ。
性格悪いなあ、って?
まさかあ、我々程人間らしい妖怪も居ないでしょう。
おや、あの姉妹、行ってしまいましたか……
もうちょっと、いがみ合ってるのを見てるのが楽しいんですけどねえ。

「おお、北山のオヤジさんのお嬢ちゃん!」

おや、高い高度を飛ぶあの方は……祟徳上皇ではないですか!
元人間ではありますが、死後天狗となった名高い天狗なのです。
元人間風情の天狗と考えると、眩しい位置から見下ろされるのは酌でございます。
私も枝を蹴ってそちらに参りますか、やや低い位置までにしておきますが。

「おやおや、これは上皇様。 珍しいですねえ? あなたが此処にいらっしゃるなんて」

にこにこ、にこにこ。
心の中でどう思っていようと、見かけ上身分上媚びへつらうのは大事です。

「なぁに、旧友の娘の顔を見れたら、とね。
 相変わらずの漆黒の翼だね、体に似合わない大きさだけど」
「それは光栄でございます。 えへへ……早く体の方も、翼に追い付けば良いのですが」

まあー、確かに父に劣らぬ大きさではありますよ。
私の自慢の翼です。
ちょっと大きくなりすぎた感ありますが、大きなことは良いことです。
父の鼻は男らしく、大きく太く長いですし。

「いやーでも、身長としては小柄でも出るとこは出てるだろう?
 黒く艶のある短髪も、琥珀の光を閉じ込めたような目も、両親譲りなのだろうな、うん」

こんにゃろう……って、いけないいけない。
スマイルスマイルですよ、天狗の子。

「あははは、知ってます? 人間さんのこんな言葉
 ……セクシャルハラスメント、縮めてセクハラ」

私が笑顔でそう言うと、御相手様は「まいったな」と言うように肩をすくめて、
「生憎、英語はからきしでね。 今は妖怪に興味が有るもんだから」

自分と異なるものに興味を示す良い例ですねえ。

「あっ、そうだ。 白狼天狗……いや、木の葉天狗だっけ?
 とりあえず、君を探してたよ、彼」
「ああ、あいつですかぁ」

あいつには「様」だの「さん」だのはつけません。
だって私よりは下だもの。

「じゃあ、そろそろ行ってあげますかねぇ」
「あんまり苛めるなよ?」
「いやあ、からかうと面白いもので
 では、これにて失礼させていただきます
 あなた様のお旅が良いものでありますよう」

決まり文句と一礼さえちゃんとしてれば、面倒にはなりません。
これ当然ですね。
さてあいつのとこに行きますか、と、私は翼を羽ばたかせる。

「ああ、じゃあまたな、梵ちゃん!」
「……だから、」

でも、父からの名を、そんな呼び方は許せません。

「梵、天、丸、です!」

吐き捨てるように加速していく。

私は烏天狗、あいつよりも上で上皇様よりずっと下の身。

とある武将の幼名を持つ娘。


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