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私は今、精神科に行こうか迷っている。
なぜなら――……
「僕は天使という名の死神さ」
奇妙な幻覚が見えるからだ。
「うわぁっ、遂に鬱病が悪化してとうとう幻覚まで……精神科行こ」
私は頭を抱えながら、白いコウモリの幻覚を見た。
「幻覚とは失敬な。私は天使、ワトソンと申します」
100hzくらいの超音波の様な高い声が脳内に響く。
「幻覚だけでなく幻聴もか……異常だ、精神科は徒歩10分だな?」
私はへなへなと床に座り込み、柔らかすぎる絨毯に手を付いた。
「大丈夫、君は正常だ。僕が見えるという事は、君はかなりの天才だね」
「正常って……!それに私は成績も別に優秀じゃないし……」
「学校の成績だけで優劣が決まるわけではないぞ。どうやら君は脳内にリミットが掛かっているようだ」
白いコウモリは訳の分からない事をぶつぶつ呟き、私は声も出なかった。
蓮の葉に水が滴る音が窓越しに聴こえる。
私、今、自称天使の死神の幻覚見てます、なう……