「本当に……行くの…?」
「行く。何があっても行く」
…だって、ここで行かなかったらお父さんと同類じゃないか。
「女の子だし…断る事だって可能よ?」
「そんな差別いらない」
何が女の子だからだ。お父さんなんて男のくせに断って…恥をかいて。
「まさか、お父さんを気にしてるの?……でも、稀世嶺は女の子。お父さんは男だからああやって見られてるだけで……」
「性別関係無い。何、女は甘やかされて、男は働かされて。女は何もしないで、男はいろいろやって。女は何を気取ってんだよ…意味わかんない」
「稀世嶺………」
「大丈夫、私強いから。じゃあ、行くからね」
稀世嶺はリュックを背負い、「行ってきます」と一言掛けて出て言った。
「…………絶対帰って来なさいよ」
稀世嶺の母はそう呟いた。