「あっ、きよ姉だ!」
「よし、今度こそ決闘だぞ!」
「あー、はいはい。さようなら」
無邪気にはしゃぐ男の子二人の額に人差し指をツンッとつつく。
「なにすんだよー」
「うるさい。帰って来たら決闘してやる」
「絶対だぞ!」
「裏切んなよな!」
「…………うん、多分帰ってくるから」
「たぶん?」
「あ〜、もう。じゃあね、時間無いから行くわ」
紛らわすように言った。
「あっ、何か落ちたよ」
「え?」
振り向いて見てみる。
「ほら、これ……」
男の子が落ちた物を取ろうとした瞬間、
「あ、触んな!」
即座に男の子を止め、落ちた物を拾い上げた。
「これ、大事な物だから」
「真っ黒だね」
「そこには触れんな」
再び歩き出す。
(これ…きっとあいつらも知ってるもんな)
稀世嶺は、今度こそ落とさないようにとズボンのポケットに入れた。
「あれ、稀世嶺じゃん」
前から声が聞こえたので見上げてみると、そこには幼馴染みの正が立っていた。