これが、私・上川リイカが先程見聞したことのすべてである。
少年……羽白陸人は、女子に大変な人気がある。
元から顔は良い方ではあったが、少し大人しめであまり目立つ方では無かったという。
しかし、成績優秀、運動神経抜群という二つの要素を知られてから、女子から王子様的存在として見られるようになった。
……まあ、私もその中の1人な訳だが。
私は、羽白の顔や世間体が良いから好きになった訳ではない。というか、自分のことだけれどそうであると信じたい。
羽白と私の関係は、お母さんの友達のさらに友達の子供。まあ遠い知り合いとでも言っておこうか。
羽白には、三人の兄と二人の弟がいる。六人兄弟だ。全員男でオマケに背も高いから前に並んで立たれたら威圧感が半端ない。
と、まあそんなことは置いといて、ここで、問題点が二つ。
一つ目。
私と羽白は、一言も会話を交えたことがないということだ。
軽くとはいえ結構長めの付き合いなのに、一言も、だ。一言も。
それなのに何故、私が羽白を好きになったのか____それは、私にもまだよく分からない。
ただ、少し口強いけど優しいところとか、真面目なところとか、見ていて安心する、はにかむような笑顔とか……
「……って、私は変態かよ。」
ちょっとヤンデレと思われるのは避けたいがため、妄想は強制終了だ。
ここで問題点二つ目。
結構、いや、めちゃくちゃ大事なところだ。
私が……私の顔が、「たいして可愛くもない」ということ。
これは謙虚でもなんでもない。事実なのだ。
____特別にブスでもないが、可愛くもない。
なんというか、異常なまでに普通、普通すぎる顔なのだ。
(付け加えると、身長,体重も平均。それから成績はど真ん中)
女の子は顔じゃないとか言うけどさ。嘘おっしゃい。ぶっ飛ばすよ。
だったらなんで、世の中は美少女から順に恋が実っていくのかな。
なんで、美少女でない者は辛い思いをするのかな。
………正直、こんな私が羽白に釣り合うとは微塵も思えない。
奴は完璧、私は凡人。
こんな二人が、一緒になれるなんて誰も思いはしないだろう。