切支丹物語

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16:のん:2015/04/29(水) 19:09 ID:NSs

 しっかりと物事を考えるようになるまでは、全てが真っ暗なのが当たり前だと思っていた。村人達の間で、玲が盲目だと判明したのは玲が三歳の時だった。村人達が自分を厄介者扱いしている事を、玲はよく分かっていた。
 一家の姉妹は玲より四歳年上と、二歳年上。姉の名をお五、妹の名をお紅と言った。二人は小さい頃から玲と遊んできたが、気を使っているのがとても分かった。
 
「姉さん!お紅はもっと色々な遊びがしたいの!何でわたし達はお山に行ってはいけないの?」
妹のお紅が言った。姉のお五は答えた。
「玲がいるからよ。わたし、母さんと父さんから言われたの。玲ができない事はするんじゃないよって。」
「つまんない。玲が家の子になんなければ良かったのに」
「だめ!そういう事を言うと、村の人達に怒られるよ!」
 玲は、二人がこんな風に話しているのを聞いた。
 村の子も、玲とはあまり遊んでくれなかった。それどころか、玲を影で笑っていた。
「お前、目が見えないんだろ?大人達が、野ノ神様の祟りだって言ってた」
 この村では、野ノ神という不気味な神を信仰している。だから、玲の目が見えないのを、野ノ神様の祟りだと村人達は言っていた。
「違う!こ、この目は、デウス様がわたしに課した試練!これを乗り越えれば…」
「またその話か!もういいよ!今俺達が何しようとしてるか分かるか?!」
玲は黙って首を振った。 すると、何か固い物が幾つか体に当たった。
「い、痛いよ、痛い…」
玲は泣きそうになって言った。
「でうす様が、お前に課した試練だよ!みんな、お山に行こう!」
そう言って子供達は去って行った。どうやら石を投げられたようだ。
「暗いよ…。何も見えないよぉ…」
玲は一人で泣いた。ずっと、泣いていた。


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