ほんの少しだけ、昔話をしましょう。
ある所に、男の子が1人居ました。
その子には、何も才能がありませんでした。
縄跳び、ドッヂボール、一輪車。
何をやってもうまくいかないその子は、いつも皆に馬鹿にされていました。
悔しくて悔しくて、何か自分にも、いえ、自分だけに出来る何かを探しました。
そんなある日、学校で買っていた鶏が何者かにに殺されました。
その死体を見つけたのが、何をやってもうまくいかない、その子だったのです。
臓物が飛び散り、地面に溜まっていた血はまるで、雨の日の水溜りの様でした。
その血は黒くも見えるほどに濃い色で、そこらじゅうを染めています。
その光景を見て、泣き叫ぶ物もいれば、吐く者もいました。
「一体誰が」「赤い」と、大の大人が動揺する中、その子は特に何もしてません。
ただただ、その光景を見ていたのです。
そしてその子は、生まれて初めて美しいというものを知りました。