「その子」は、よくいじめられていました。
友達もいない、特技もない。ドッヂボールをやれば、その子が入ったチームが負けてしまう。
だからよく、1人で遊ぶ皆の姿を見ていました。
本格的ないじめではありませんでしたが、1人でその様子を見るのは、幼い少年に少なからず傷を与えていました。
その日も、川沿いにある広場でドッヂーボールや鬼ごっこをして遊ぶ子供たちを、『誘ってくれないかなぁ』という期待をこめて、土手に座り込み眺めていました。
ボーッとして、「今日も1人かぁ」なんて呟いた時に、背中の方から声が掛けられました。
「そこの男!」
バッと顔をあげて、期待に胸を高鳴らせて後ろを振り返ると。
赤い、ヒーローのお面を付けた、女の子が立っていました。