第1章『彼氏と友達』
「希子〜!!」
「隼人!!」
後ろから息を切らして走ってくるのは希子の幼馴染みであり彼氏でもある笹原隼人くん。
「おはよっ希子!」
「おはよんー!」
隼人とは中3から付き合い始めた。
今年の8月で1年。
「だんだん暑くなってきたなー」
「そだねー」
・・・隼人はかっこいい、俗に言うイケメンだ。
中学の時からモテる。
そんな彼に不安を持っていた・・・ってか今も持ってる。
「・・・希子?」
「あぁ!ごめん、考え事してたっ!んで、何?」
「もー、ちゃんと聞け・・・」
隼人の思考が停止した。
「・・・隼人?どうした・・・」
心配して、声を掛けた瞬間後ろから高い声が聞こえた。
「希子?」
「・・・遙」
希子の親友の遙だった。
この時、生まれて初めて誰かが恋に落ちる瞬間を見た。
・・・恋に落ちる時って『ドクンッ』って音するんだ・・・
「どーしたの?・・・彼氏?」
遙は隼人を指差して言った。
「そーだよ、隼人、この子希子の親友の・・・」
遙は希子の言葉を遮って言った。
「希子のクラスメートの遙です!隼人くん?だよね?よろしくね♪」
やけに高い声で言った。
「おう!よろしく、遙!!」
・・・はる、か
何で下の名前で呼んでんの?
・・・意味、分かんないよ?
「隼人くん、遙も一緒に行ってもいいかな?」
遙って自分のこと『遙』なんて言わなかったよね?『うち』って言ってた。
・・・何で?
「おう!希子、いいよな?」
引きつる笑顔で言った。
「・・・う、うん」
前を隼人、遙後ろを希子が歩いた。
「はははっ!」
楽しそうに笑う二人をただ見つめることしかできなかった。