いつも思っている。
私は誰≠ニ・・・。
小さな頃から、人格を作り続けて、今では自分が誰なのかさえ、わからない。だけど唯一の光である、翔の顔は、どの人格の時でも、必ず目の前に居てくれる。
手を差し伸べて、優しい笑顔を浮かべている。
そして、強く抱きしめて、大丈夫だよって言ってくれる唯一の人。
「おはよう、翔君。」
今、翔に声を掛けたのは、同じクラスの柳川さん。目がクリッとしていて、髪は胡桃色のふわふわだ。家の学校でも人気がある女子。
その時、私の中の人格が、表に出た。それは裕だった。ヤキモチでも焼いたのだろう。裕は翔の元へ行った。
「翔、おはよう。」
精一杯の笑顔を見せたかと思うと、翔の腕を掴み、用具室の近くまで走った。
「どうしたんだよ、裕。」
「私がヤキモチ焼きなの知ってるよね?翔は・・・。」
裕は、溢れてくる言葉をそのまま口に出す。私は、その流れを唯唯見守っていた。
「俺が好きなのは、真綾だけだから。」
するっと口に出した言葉は私の中の人格が反発するような言葉だった。私の胸に届いていたとしても、今のままでは絶対に無理だろう。