こんな私だって、甘〜い恋してみたい!

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4:叶月:2015/06/08(月) 21:44 ID:nbk

「……お前、どこ行ってたんだよ?
もう7:50だぞ。女一人で出歩く時間
じゃねーだろ。」
「えーっとね、塾の帰り……なんだけど、
お母さんが、迎えに来れなくなっちゃって、
それで歩いて帰ってたら、さっきみたいに
なっちゃって、燦翔君が来てくれて、
それで、助かった〜的な?」
私は笑顔を作る。心配されたくない、
心配してほしくないから。だから、
泣くこともしない。
「……無理して笑うなよ。お前の笑顔、
せっかく可愛いのに、ゆがんで見える。」
「へ……?む、無理なんかしてないよ。
私は今笑いたくて笑ったんだから。燦翔
君は、心配性なんだね。」
笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔
笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔
笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔笑顔。
これだけは、これだけは、、、忘れちゃいけない。
そういったのは、お父さんだった。
お父さんから教わったことで覚えているのは
〈笑顔を忘れるな。〉という言葉だけだった。
顔も、もう思い出せないくらいになっていた。
お父さん……かぁ。懐かしいなぁ。
「……俺、そんな心配性じゃねーよ。
家庭の事情とか、そう言うのに顔突っ込む
つもりはねーけどよ、無理して笑うのだけ
早めといたほうが良いと思う。」
優しい声。最初は、近寄りがたくて、
なんか、近づくなオーラっていうのかな?
そんなのがあった気がする。でも、
本当は、ヤンキーなんかよりも強くて、
優しくて、心配性だったんだ。でもっ。
「……燦翔君にはわからないよ。お父さんは
4歳の時に家を出て行って、お母さんは
もともと体が弱いし、もう結構年取ってきたし、
いつ死んでもおかしくないんだよ⁉︎……
そんなの耐えられるわけないじゃん。
だから、せめて、せめてっ!学校や、
友達の前では、笑ってられるようにした。
でもね、そういったのはお父さんなの。
今でもお父さんの言いつけ守ってるの。
それが私のお父さんだから。ごめんね、
こんな話するつもりなかったんだけど」
思わず口をつぐむ。だって、こんな話を
したって、どうにもならないでしょ?
そう、余計に心配させるだけ。その心配に
私は甘えたりしない。正しくは、甘えられ
ない。だって、甘え方を知らないから。
ほら、だから嫌なんだ。友達作るのは。
「いいんだ。こんな話しても。それで、
詩月の重荷が少しでも軽くなるなら。
詩月に悲しい思いしてほしくないんだ。
普通に笑っていてほしいんだ。お前に
一番似合う表情は、笑顔…だからな。
詩月の親父さんもよくわかってんじゃん。」
う、そ。こんな、こんな話したら、絶対
面倒くさがられると思ってた。少しだけ。
この優しさに甘えてもいいかな。
「……燦翔君、ありがと。こんなこと
言ってくれたの、燦翔君が初めてだよ。
ありがと、ありがと、ありがと。」
自然と瞳から暖かいものが流れる。
頬をつたって、大粒の涙が下に落ちる。
ぽたぽたと……。こんなに暖かい気持ち、
初めてだよ、燦翔君。


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