この季節はとても好きだ。何でかって聞かれたら、夏が好きだからと答える。
本当の理由は誰にも話せない。話せるわけが無い。
「夏はね、毎朝会えるんだ」
「帰りもね、同じ時間になったら途中まで一緒に帰れるんだ」
そんなセリフを、ニッコリ笑って誰かに言ってみたいけど、そんなことは今は言えない。
だってこれは、絶対に話しちゃいけないし、誰かに知られたくないから…。
ヘルメットが重たい。どうしてこの学校は、自転車通学の時にヘルメットを着用しなきゃいけないんだろう
と、毎日のように考える。セットした髪の毛が崩れてしまうし、何よりも暑くてたまらない。
いつものように朝、自転車で学校に向かう。
この道は右側が二車線道路、左側は一面田んぼという一見ド田舎だ。毎日のささやかな楽しみと言ったら、
日々の稲の成長が見れること……だけ。