田んぼ道を3キロほど進むと、此処だけ何故か賑やかな住宅街に入る。
そこでいつも見つけるのが、私の好きな人。
心の中で、なにかが動くのがわかる。
無意識に背中を見つめてしまう。
見つめると、何を感じたのか君が振り返った。
そして、いつものように屈託無く笑った
「中田、おはよう」
私もつられてニッコリ笑って返す。
「日向、おはよう」
今日早いね、宿題でも忘れたの…?
いや、違う。偶然早起きしただけで…
そんな空想のやり取りが脳裏を過ぎったけど、声に出せなかった。
私達の朝のやり取りは、何か特別な事がないかぎりこの一言だけ。
勇気を出して、速度出しすぎの自転車のブレーキをかけられない。
私はやっぱり臆病だよなあ、嫌になっちゃうくらい。
その言葉を、胸に押し込んだ。