『序章 見かけた少年』
桜は、4月に咲き、そして散る。
散った後、人間は見向きもしない。
そんな見向きもされない葉桜を僕は、一人きりで眺めていた。
ここは、学校の校庭。何の変哲も無い。
もしかしたら、一人きりでは無いのかもしれない。
この一人ぼっちの葉桜を見ているから
自分まで一人ぼっちな気持ちになっているのかもしれない。
花が散るまではあんなにキレイだなぁとちやほやされていたのに。
散ってしまえば、素通りされるだけだ。
更には虫だの何なの嫌われ者扱いされるハメだ。
人間とは、つまらない生き物だ。
そう言っている僕自身人間だ。
こんなことを考えいても仕方ないと思い、校門へ向かう。
もう5時だ。空は紫がかっている。
随分明るくなったものだ。
この前までは、この時間帯だったら真っ暗だったのに。
葉桜は、ザワザワと声を発している。
風が吹いているのだろう。
何故だか僕には、その風は微塵にも感じられない。
まぁ、そう珍しい事じゃない。
そんな事を考えていたら、校門の前まで来ていた。
葉桜は何時の間にか静かになっている。風が止んだのだろう。
葉桜の方を振り返る。
眺めていた葉桜から目を離して、僕は、校門を出た。