ラスト10秒。―いつか君に恋をして―

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧
8:まこ:2015/09/01(火) 20:47 ID:ZRo

「蓮!?聞いてるのっ!!」
黙り込んだあたしを見て、さらに声を荒げる母親。
ふと、視線を母さんの後ろに移すと、玄関のすぐ近くにあるリビングのドアから顔をのぞかせている花音の姿が目に入った。
その表情は、凄くニヤついていた。
何で……どうして、いつも花音ばっかり……。
花音は良くて、どうしてあたしはだめなの……?
脳裏に、小さいころの記憶がよみがえる。
花音にばっかり可愛い服や靴、ぬいぐるみを買っていた母親。
そんな幸せそうな光景を見て、すぐに顔をそむけたあたし。
平気そうな顔をしていたけれど、本当は、あたし―……。
「……そんなに、そんなにあたしが嫌い?」
自然と、あたしの口から言葉が漏れていた。
でも、もうダメ。
止められなかった。
「ねぇ、あたし、何かした?母さんに、花音に」
母さんは、何も言わなかった。
花音はというと、少し目を見開いて、あたしを凝視していた。
「あたしは、別に嫌われてもいいよ。だけど、何もしてないのに、差別されるのは、許さない」
「あんたっ……親になんて口利いてんのっ!!」
振り上げられた母親の右手が、あたしの頬を張った。
パンッという乾いた音が響く。
あたしは左ほおを押さえながら、まっすぐに母さんを見つめる。
「何で……何で我慢するのはいつもあたしなの……?」
「蓮、仕方ないじゃん。あんたはかわいくなんだからさ」
花音が言う。
「あたしは、妹ばかりかわいがる母親も、それに甘えている妹もっ、みんな、みんな大嫌い!!」


全部 <前100 次100> キーワード
名前 メモ