神様、こんな僕でも英雄になれますか?

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3:ゆう◆/U:2015/09/17(木) 01:17 ID:5Dk

第一章 一節 <精霊の樹>



 
森の中にいると、まるで、自分が大いなる世界の渦の中に溶け混んでいるかのような、錯覚に陥る。
僕は、透き通った空気を吸い込み、吐きだした。

今日はどうしてここにいるんだっけ・・・?
もうじき、日が暮れる。そろそろ帰らないとな・・・と、思ったが、僕はそこから動くことができなかった。

僕にはもう帰りを待つ家族はいない。
父さんも、母さんも、妹のルリアも、死んでしまった。
精霊の樹のおじいちゃんによると、精霊の力を持ってしても死者を甦らせることはできないそうだ。
これからどうしていこうか? 
もう僕の味方になってくれる人はいない。

「ねぇ、おじいちゃん」
僕は、『精霊の樹』の精霊であるユグドに語りかけた。
「何じゃ? トーヤ」
「僕は・・・これからどうやって生きて行けば良いのでしょうか。身内は僕を残して皆死んだ。僕一人でこれからどうして行けば・・・?」
ユグドは暫く黙っていたが、やがてこう言った。
「トーヤ、お前は自分が何のために生まれたのか、分かるかね?」
僕は、その問いに答えかねた。
「どういう意味ですか・・・?」
「トーヤ・・・お前ならその答えを見つけ出せるじゃろう。・・・・・・ワシはもう眠い。そろそろ休ませて貰うぞ」
僕は慌ててユグドの名を呼んだ。
彼は一度眠ると次にいつ起きてくれるかわからない。下手をすると一週間、いや、それ以上目を覚まさないこともざらだった。

僕が何のために生まれたのか?
それは、もしかしたら僕の血筋に答えがあるのかもしれない。
母は、ある力を持つことで疎まれ、この国へ逃れてきたと、生前に僕たちに言って聞かせていた。
今は亡き母の、明るい笑顔の底に隠された陰を思いだしながら、僕は帰路を急いだ。


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