有馬の仕事は加藤の側につき、加藤に言われたことを淡々とこなしていくという簡単なものだった。
何故新人の有馬がそんな役をしているのには理由があった。
ただ加藤自らが有馬に向かって命じたのだ。
普通長年務めた者がなるようだが加藤は違った。
加藤自身有馬を気に入ったようだった。
加藤は有馬に対して色々なことをさせた。
靴磨きや掃除と身の回りのこと、話し相手やただ傍にいることなどくだらないものまで申しつけた。
これらに対して有馬は顔色一つ変えずにすべて完璧にこなした。
ただ話し相手になることは少々苦手にしているのか話題に困っていた。
この世界では各地区同士で争いが起きていた。
それはA地区も例外では無かった。
時々戦地の人数調整のためにこの建物内からや一般庶民から何十人と戦地に駆り出される。
そして駆り出された人間は二度と戻っては来ない。
それが普通だ。
戦地に行く人間はこの地区の長、加藤が決めているのではなくランダムに決められているためこの地区にいる長以外の全員がおびえながら過ごしている。
しかし長だけは唯一選ばれない。
そんな掟があるため加藤は長く居られるために有馬を近くに置いている。