華の女子高生、だなんて世間は言うが
稀に私のような例外もいる。そこには華なんて何処にもない。
その華がないという理由だけで嫌がらせもされる。
「高柳さんってさー暗くない? 」
教室のドア一枚挟んで聞こえた女子の陰口大会。
話題に出されていたのは丁度私だったようだ。
ドアにかけたその右手を引っ込め、背を向けてしゃがみ
私は耳を澄ませた。
「分かる、男にモテようとクールぶってるとか?」
「それはないない。あんなのにモテ期とか無理でしょ」
甲高く品のない笑い声が聞こえる。
残り少ない昼休みも潰れるな、なんて思って
陰口大会が幕を閉じるのを待っていると“勿体ない人”が目の前にいた。
彼は私に目線を合わせてしゃがみこんでそっと私に聞く。
「何、虐められてるの? 」
透き通っていて優しい声色だったが核心をついた質問だった。
「分からないです」
私がそう答えると、彼はつまらなそうにへえと呟く。
「確かに君は暗いし、可愛げもないね」
「……さっきから何なんですか」
ピクリとも表情も声のトーンも変えずに私が問うと
「部員の勧誘ってことにしておく」
といい強引に私にチラシを持たせると彼は立ち上がり、
足早に私の元を去った。
くしゃくしゃになったチラシを広げると掲示板の時とは
少し違ったチラシだった。
字もずっと丁寧で一文だけこう付け加えられていた。
「『貴方の居場所を作ります』……ね」
鐘が昼休みが終わることを告げている。
ドアの向こうに聞こえる声は既に静まっていた。