1 そんなにキミが好きなのかい
「いらっしゃいませ」
チリンチリン
ドアに付いた、インコのベルが鳴る。
俺、この一言……苦手だ。
独特なイントネーションじゃん?
あの、こう、どんどん下がっていく感じじゃなくて、途中でくいって曲がる、あの音。
先輩たちはメチャウマだけど、まだ初めて一ヶ月なんだ。
『バイトなんてクソくれえ♪バイトなんて絶対やらねえ♪』
……というなんともおかしな着信音を使っていた俺だが、一ヶ月前、つまり10月、俺の人生を変える出来事が起こったんだ……
10月。
紅葉で赤く染まった葉っぱが、その子の頭についた。
「あのう」
俺が声をかけると、その子は綺麗な黒髪をひるがえし、振り向いた。
「はい?」
ズッキューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
俺は、しばし固まった。
ドッキンドッキン
鼓動が高鳴る。
だ、だだだだだってさぁ。
超美人なんだもん。
次の瞬間、興奮しすぎて頭がおかしくなったのか、俺はとてつもなくやばいことを言ってしまった。
「付き合ってください……」
(は?)
頭のなかで突っ込む、冷静な脳内裕也1。
(馬鹿なの?初対面で?しかも会ったの10秒くらいまえだろ?)
確かにその通りだったが、俺には自信があった。
だって……
幼稚園、小学校、中学校と同じだった、
ずっと好きだった、
幼なじみ、
だったから。